【Interview】おもてなしの精神は快適性と技術に再現
改めて2台のLCを試した後、開発責任者のLexus International 製品企画チーフエンジニアの武藤康史氏に話をうかがった。まず訊いたのは、新たに設定されたLCコンバーチブルの狙いについてだ。
「大命題としたのは、LCらしいというだけでなく、レクサスらしいコンバーチブルとすることです。使い勝手や所作には、日本のメーカーらしいおもてなしの精神などに配慮しました。トップの開閉スイッチはパームレストの蓋が開くようになっていて、その内側に隠してあります。そしてオープンにする時には書の筆運びのようにスッと素早く動き出してスーッと滑らかに開き、そして最後シュッと閉まる緩急をつけているんです」
レクサスはこうした開閉部分に襖を開け閉めする時の動きを採り入れている。約15秒の開閉時間の中で、動き出しや動作の切り替えに0.2秒程度のタメを設けて、優雅な動作を実現しているのだ。
おもてなしという言葉は、耐候性、耐久性にも当てはまる。テストは徹底的に行われたという。
「日本は寒暖も激しいですから、ここで通じるクルマは世界中どこでも楽しんでいただけると思います。日本人らしい心配性で、ルーフの耐久試験も雪が10cm積もった状態でも、開くかどうかまで見ましたよ。普段はそんなことはしないけれど、うっかり開けようとした時に致命的に壊れたりしないように」
四季を意識する。実はこの時点で、すでに日本らしさはにじみ出ているのかもしれない。コンバーチブルの追加で、クーペの役割はどうなるのだろうか。その位置づけに変化はあるのか。
「役割分担は考えました。クーペとは、やはり元々走るためのクルマです。LCは当初から“より鋭く、より優雅に”と掲げて開発されてきましたが、その中でも“より鋭く”の部分、要するに操作に対して正確に動くというところを突き詰めています。ゆったりと走ってV型8気筒ユニットの咆哮を楽しめるコンバーチブルに対して、クーペも同じ場所に留まらず進化させることで、LCファミリーとして幅が広がったと思います」
クーペにはLC500に加えて、マルチステージハイブリッドシステムを搭載するLC500hという選択肢もある。こちらの位置づけも再考したと武藤氏は言う。
「ハイブリッドはクーペにしかない。その良さをどれだけ感じてもらえるのかも新しいチャレンジでした。実は解析がどんどん進んできて、今まで遠慮していたバッテリーの持ち出しが、どうやらもっとイケるといったことが見えてきたんです。実はLSでは、それをエンジン回転を下げるのに使っているのですが、LCではトルクを出すために使っています。電動化ユニットは自由度があるので、そういう部分でよりLCらしさを感じてもらえるよう考えました」
クーペのLC500とLC500hに、コンバーチブルのLC500。LCには今、3つの異なる個性が揃うこととなった。
「我々はラグジュアリーライフスタイルブランドとして、生活の中のどういうシーンで乗っていただきたいかを想定し、それを技術にどう反映していくのかを常に考えています。コンバーチブルはやはり自然を感じてほしい。対するクーペは都会的。ハイブリッドならその静粛性も街に合っていますよね。そういう風にキャラクターが分かれて、訴求しやすくなったと思っています。いずれを選ばれたとしても、このクルマに乗っている時は仕事を忘れて、ひとりの自分に帰るために乗っていただけるといいですね」