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【VWゴルフIV弾丸テスト】周囲の雑音に惑わされずに落ち着いて乗れる【VW GOLF FAN Vol.2】

素直な旋回能力を発揮

2日目はもう一度八甲田山に登ってみる。昨夕は4時過ぎるとあたりは真っ暗だったが、夜来の雨も上がって高原の朝は冬でも気持ちいい。線画状態のブナ原生林でとりあえず季節感を撮り、そのまま黒石に下りて弘前にでる。
濡れた落ち葉の上でも、後輪荷重の大きいゴルフワゴンは、めったに滑ったりしない。ターボエンジンは冷気で一段とパワー感を強め、登り坂でもトップギアのままグイグイ登っていく。

ダッシュボードの景色もGTIと変わらない。GTというぐらいだから、ナビゲーションは標準にして欲しかったところ。5速のティプトロニックは完成の域に達しているもので、その作動に不満はない。

ちょっと太めと思われる245/45R17タイヤは、乗り心地的にややバネ下を重く感じる場面もあるが、ウエットグリップもまずまず良好で、地元ナンバーの4WDスポーティカーにもそれほど引けをとらない。ドライグリップはタイヤの貢献をより大きく感じる。このゴルフは登場初期にはサスペンション・ジオメトリーを取り違えて、ロール感が爪先立ったものとなり内輪の空転も早かったが、途中でロールセンターと重心高の関係が見直された結果、いまでは問題なく素直な旋回能力を発揮する。そんなこともあったナと思い出してみれば、このIV型ほどいろいろ変更されたモデルはないのではなかろうか。

室内装備は、GTIとほぼ同じレベル。シートもサイドの盛り上がりが強いスポーツシートとなる。足の速さやその荷室の容積、使い勝手のよさも考えれば、まさに理想的なリゾートエクスプレスだ。

このゴルフワゴンはいまや欠点らしき欠点を持たないが、唯一といってもいい不満点は、最近のVW車に共通するブレーキとアクセルを同時に踏むとエンジンが休止してしまう点だ。左足ブレーキの利点をここで説くスペースはないが、まさにコーナー手前で右足はアクセルペダルに乗せたまま、チョンと軽く左足でブレーキを踏むと、エンジンはアクセルペダルに反応しなくなってしまうのだ。これは右足のみのヒール・アンド・トーでも同じことで、ABを同時に踏むことを完全に拒否している。なぜこんな意地悪なことをするのか理解に苦しむ。加速して逃げられないから危険な状況に追い込むだけだと思われる。

お馴染みの1.8リッター・ターボ。デビュー当時は小さな問題がいくつかあったが、それも全部が解決されて、現在は実に気持ちのよいエンジンとなっている。

弘前城はケヤキの葉が落ちて、まさに秋景色、そして紅葉の真っ赤な背景で撮ることもできた。鰺が沢を経て千畳敷でお昼。雨は結局降ったり止んだりで、この時は風も強くよこなぐりの雨。先に昼食をすませる。そこから五能線と並走しながら海岸線を走り、ちょっと寒風山をロケハンしてから2日目は秋田泊。この日の移動は300km弱。
明日に備えて男鹿で給油。471.9km走って9.7km/Lは、高速道をほとんど含まず、山間部や一般道主体の燃費としてはまずまず良好と思われる。
翌朝は晴天。窓から見える空は青い。しかし寒風山の上空には真っ黒な雲が覆っている。ともかく登って山頂で雲の晴れるまで待つ。待った甲斐あってそのうち男鹿半島の先端、入道崎あたりの海岸線が見えてくる。しかし山形方向の鳥海山は見えない。能代方向に見えるはずの白神山地も雲の中に入ったままだ。結局晴れ間待ちの撮影で寒風山には2時間半ほどいたが、温度計での外気は3度〜5度はあったものの、海から吹き抜ける風はつめたくマイナスかと思えたほどだった。

ラゲッジスペースは、上段の通常の状態で460Lで、リアシートをダブルフォールディング式に倒せば、1470Lの大容量を得ることができる。荷室フロアもほぼフラットになり、使い勝手はよい。

山をおりて昼食後、秋田北から秋田自動車道にのる。東北道は山間部を走るルートであり、横風安定性は特に注目すべき特性だが、くだんのロールセンターの改善はここでも効果を発揮、直進中にステアリングに感じる横Gはほとんど皆無だった。また太めのタイヤもこうした微小域の入力に対して、外乱のない頼もしさを発揮してくれる。そして空力重心が後ろにあるワゴンボディももちろん安定性に寄与している。
淡々と帰路をたどり500kmを目処に安積Pで給油する。ここまでの燃費は11.0km/Lと今回の最高値をマーク。やはりそれほど目覚ましい燃費は記録しえなかった。秋田北から浦和までの料金は1万2100円。往路の小坂までの料金とほとんど同じだ。
そして都内の一般道を少し走って横浜までの293kmは10.7km/Lと、テスト開始初期にくらべると確実に上昇傾向にあったから、慣らしが進行すればもう少し向上すると思われる。今回の旅、合計1966.3kmの総平均燃費は10.3km/となった。

225/45R17サイズはややオーバークオリテイで、乗り心地にも悪影響を及ぼすのではないかと心配したが、ワゴンGTは予想外にコイツをちゃんと履きこなしていた。

落ち着いて乗れるクルマ

ゴルフワゴンを総括すると、特別に感激したり、瞠目に値する項目はないけれども、少なくとも不満な点はないし、全体としての好感度は高い。長く付き合うことになる実用ワゴンは、もう変更されることもなさそうな評価の定まった、こうした熟成されたモデル末期の型こそ狙い目であり、次はどう変わるかといった周囲の雑音に惑わされずに、落ちついて乗れるのではないだろうか。

近い将来に登場ののワゴンはもちろん魅力的だろうが、長くつきあうことを前提とする実用ワゴンの選択ということで考えるなら、こののワゴンは狙い目。ゴルフを見て、「のほうがよかったな」なんて思う人には、の新車を手に入れるチャンスはもう残り少なくなっているとお伝えしてきたい。

【specifications】
VOLKSWAGEN GOLF WAGON GT
■全長×全幅×全高=4400×1735×1480mm
■ホイールベース=2515mm
■トレッド(前/後)=1515/1495mm
■車両重量=1410kg
■最小回転半径=5.1m
■乗車定員=5名
■エンジン型式/種類=AUM/直4DOHC20V+ターボ
■内径×行程=81.0×86.4mm
■総排気量=1780cc
■圧縮比=9.5
■最高出力=150ps(110kW)/5700rpm
■最大トルク=21.4kg-m(210Nm)/1750-4600rpm
■燃料タンク容量=55L
■10・15モード燃費=10.4km/L
■ミッション形式=5速AT
■変速比=(1)3.801(2)2.131(3)1.364(4)0.935(5)0.685(R)2.970(F)4.445
■サスペンション形式=前ストラット&コイル、後トレーリングアーム&コイル
■ブレーキ=前Vディスク/後ディスク
■タイヤ(ホイール)=225/45R17(7J)
■東京標準現金価格=3,192,000円

 

リポート:笹目二朗/フォト:水野孔男

 

VW GOLF FAN Vol.2から転載
CARSMEET web編集部

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