特集

中古車で味わうゴルフ・カブリオレ【VW GOLF FAN Vol.10】

幌の開閉機構も電動採用の現代レベル

改めてクルマを止めて細部をチェックしてみるが、ユーズドカー特有の経年変化は否めないものの、古臭さを感じさせるような傷みは
見つからない。ブルーとブラックの本革コンビシートは新車時ほどの張りはないが、適度の緩みがかえっていい雰囲気。力を抜いて乗
るにはこの〝こなれ感〞がいいし、ブルーとブラックのコントラストは健在なので、非日常感を演出して欲しいときも不満はないはずだ。

ハッチバックに比べると容積は限られるが、270Lのトランクルームはボストンバックを2~3個はほうりこめる広さを持つ。右上にあるレバーを引けば後席シートバックが倒れてトランクスルーとなり、長尺物を積むこともできる。

4シーター・オープンの場合、幌自体のボリュームが大きくなるので、どうしても開閉の動作が遅くなるが、試乗車は幌を閉めるときも開けるときも動きに鈍さはなく、何度かやってみたが常に20秒程度で完了。Aピラーからのリリース(開けるとき)と固定(閉じるとき)は幌前端のロックレバーを手動で操作することになるが、結合部にズレもなく調整はほぼ万全。左右のロックを止める時間を足しても開閉に要する時間は1分程度で、これなら開閉動作を面倒に感じることはない。

幌とAピラーを連結しているフックをレバー操作で解除して幌を持ち上げ、あとはダッシュボード中央にある開閉スイッチを操作するだけ。一度エンジンを切らなければ開閉用モーターが作動しないので、走行中はもちろん信号待ちでの開閉も難しい。

ただし、幌の作動はエンジンを止めた状態でないとできないようになっており、必ずクルマを止めて一度エンジンを切る必要がある。最新のオープンカーのように、信号待ちや渋滞時に開閉を済ませることはできないわけだ。より安全を重視した設計といえるが、一方でエンジンを止めた状態で電動モーターを動かすことになるのでバッテリーへの負担は少なくない。ユーズドカーの場合は電装関係が弱っていることもあるので、カブリオは特にバッテリーの管理やメンテナンスが欠かせないことも知っておきたい。
また、幌の開閉は電動モーターと油圧を併用したシステムなので、不具合が出た場合はアッセンブリーでの交換が必要になる。もちろんエマージェンシー用の手動開閉機構も備えてはいるが、幌の開閉システムにトラブルが生じるとかなりの出費を覚悟しなければならない。機械的な信頼性では一歩先をいくVW車だが、幌の開閉システムの不具合がないかどうか、購入前にしっかりチェックしておく必要がありそうだ。

ゴルフ・カブリオのトレードマークともいえるセンターロールバーはボディの剛性確保、転倒時の安全確保、シートベルトアンカーの支点、幌を閉じたときの支柱と、たくさんの役割を兼ねている。リアシートに乗り降りするときの手がかりにもなる。

幌を開けた状態でしばらく走り続けるときは、見栄えだけでなくホコリの侵入を防ぐためにぜひ幌カバーをかぶせたいが、これも慣れれば数分でピッタリ取り付けできる。ただ、カバーをガイドに沿って押し込んでいく作業が必要となるので、手の小さい女性はちょっと手間に感じるかもしれない。周囲がホコリなどで汚れていることもあるので、薄手の軍手などを使ったほうがいいだろう。

試乗車の幌カバーは新品のようにしなやかで汚れもなく、収納した幌を見栄えよく覆ってくれた。脱着は簡単で時間もかからないが、ボディ側のガイドに沿ってカバーの端を押し込んでいく作業が必要となるので、薄い軍手などを使ったほうがよさそうだ。

さて、幌の開閉は予想以上にスムーズだった試乗車だが、内装も程度のいい状態が保たれている。樹脂類の傷みも少なくスイッチ類の作動も問題なし。リアシートのバックレストが倒れてトランクスペースを拡大できる隠しワザも持っており、ワイヤーコントロールによるその作動もスムーズ。ボディがしっかり補強されているせいもあるのだろうが、歪みによる開閉部のズレなどが皆無というのは立派だ。そのトランクルームはカタログデータによると270Lと広くはないが実用サイズ。ガスダンパーで支えられたリッドの開閉もスムーズだ。もちろん、単独でロックできるのでオープン時の収納庫としての機能も果たす。

Aピラーとの連結部を外して幌前端をハネ上げ、スイッチで完全に開くまで15~20秒程度。閉じるときはやや作動が遅く感じるが要する時間はほぼ同じ。幌カバーを外し、幌を閉じて手動でロックを終えるまで3~4分あれば十分。慣れればもっと早くできるかも!?

IIIのカブリオがデビューしたときは厚めの樹脂製フェンダーアーチモールをまとい、全幅が1710mmとわずかに小型車サイズを超えて3ナンバー登録となっていたが、IVのカブリオレとして登場したときにフェンダーアーチモールがなくなり、5ナンバーサイズ(全幅1695mm)へ回帰。ゴルフが全車3ナンバーとなったのとは対照的だったが、これもIVフェイス・デザインとのバランスを考えてのこと!?
なお、特別限定車のカラーコンセプトはジャズブルー、ムラノレッド、ブラックの3色が設定され、ともにバンパーやモール、ミラーはボディ同色でまとめられているが、フロントバンパー下端、サイドシル下部は黒い樹脂製となっている。これは路面の段差や縁石に擦ったときでもダメージが大きくならないようにという配慮でもあり、試乗車も下をのぞきこむと擦った形跡が。ただ、樹脂パーツ単体での交換も可能なので、それほどコストをかけずに元に戻すことができるはずだ。

ドアのインナーハンドル、ダッシュボードの一部に内装の剥げなどが見られたが、これはユーズドカーでは致し方ないところ。気になるほどの傷みではない。フロントスカート下部にもわずかに擦った跡があったが、ゴルフはこの部分が低いために擦りやすいので注意したい。

IVフェイスのモデルなら認定中古車も選択肢に

最後にカブリオ各モデルの中古車相場にも触れておきたい。のカブリオはほとんど市場には出回っておらず値もつけられない状況だが、同じボディの後期型(IIルック)のカブリオならまだ探すことができる。価格は50万円程度から200万円以上までまちまちだが、安いものはレストアの素材に、高いクルマは滅多にないプレミアム車と見たほうがいい。

前後サイドウインドーをぴったり閉めておけば、それなりの風切り音はするもののキャビンへの風の巻き込みはほとんどない。寒い時期でもシートヒーターと足元暖房をしっかり効かせれば、快適なオープンエア・モータリングが楽しめる。

IIIのカブリオとなるとタマ数も増えて、安いものは40万円台、上限でも85万円程度と手に入れやすい。やや年数が経っているのでメンテ費用がそれなりに必要になってくるが、程度のいいクルマを探すことも可能だ。そして一番タマ数の多いIVのカブリオレは100万円を切るあたりから、かなり程度がいいクルマで200万円といったところ。IVならここで取り上げた試乗車のように保証付きの認定中古車も選択肢に入ってくるので、オープンカーを買うのは初めてという人にもオススメだ。

VW GOLF FAN Vol.10から転載
LE VOLANT web編集部

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