特集

TSI+DSGのパワートレインが示す3代目ヴァリアントのシルエット【VW GOLF FAN Vol.13】

ヴァリアントこそが真のファミリーカー!?

ヴァリアントが数あるゴルフのラインナップのなかでも、ファミリーカーの資質が特に高いと思われる理由は、リアシートのコンフォート性が抜群であるからだ。

コンフォートラインが搭載するのは1.4L TSIユニット。ゴルフGT TSIに搭載されたものと共通のユニットで、直噴の直4DOHC16Vユニットにターボとスーパーチャージャーをプラス。1.4Lから170ps/6000rpm&24.5kg-m/1500~4750rpmを発揮する。

第一には、ルーフのラインをセダンのように後方に向かって急激に下げていく必要のないワゴンボディゆえに、リア空間の縦方向のサイズがユッタリとしたものになっていることが挙げられる。
オプションで用意される2ピース構造のパノラマスライディングルーフは、ルーフを下げる必要のないワゴンボディならでは特典といえる。こういってはなんだが、セダンの場合、ルーフが下がっているため、リアシートのヒップポイントも下げざるを得ず、そこに座った感覚はどちらかといえば穴蔵的。太いCピラーもあって、閉所感も少なくない。

スポーツラインに搭載されるのは、2L直噴ターボから200ps/5100~6000rpm&28.6kg-m/1800~5000rpmを発揮する2.0TSI。つまりは、ゴルフGTIに搭載されているユニットだ。このユニットも、VWでは「TSI」と呼称することになった。

第二には、これもワゴンゆえだが、ラゲッジスペースのフラットフロア化が結果的に、リアシートのヒップポイントをセダンに比較して約20mm押し上げている点が挙げられる。荷室を有効に、様々な形で使えるよう工夫するのは、ワゴン開発時の重要なテーマのひとつ。VWの開発陣は荷室のフラットフロア化を目指して、本来のトランクルームのフロアを二重構造としてかさ上げし、リアシートをダブルフォールディング式に倒したときにフロア全体がフラットになる構造とした。それが、リアシートのヒップポイントを上げる結果となっている。
このリアシートの約20㎜のヒップポイント上昇は、乗員のアイポイントの約20mm上昇を意味し、乗員にセダンでは得られない視界の良さや開放感を提供、さらにリア空間を快適なものとする。

足回りはコンフォートラインよりもスポーツラインの方がややハード。パワートレイン同様、コンフォートラインがゴルフGT TSI、スポーツラインがGTIという相対関係を思い浮かべるとわかりやすい。

トランクルームのフロアを二重構造でかさ上げする手法は、すでにゴルフ・プラスでも採用されている。ご存知のように、ゴルフ・プラスはボディ全高を高くし、前後シートをセダンに比較して前方にセット、アップライトに座らせることで豊かな空間を獲得したクルマ。ゴルフ原理主義者も評価する優れたパッケージングだ。
このため、セダンでは使い勝手が悪いと指摘されたラゲッジスペースも、大きく改善することができたわけだが、一方で、リアシートのヒップポイントがやや高くなりすぎたキライもある。リアシートを普通にセットすると、足の長いドイツ人にはちょうどいい高さなのだろうが、我々日本人の平均的な足の長さでは、フロアに足がペタッとつかない、つまりいざというときに踏ん張れなかったりして、長距離ではむしろ疲れてしまう可能性が少なくない。

1.4L TSIユニット、2.0TSIユニットともに組み合わせるミッションは6速DSG。ギア比などもすべて共通だ。ただし、スポーツラインではステアリング上にパドルシフトが備わる点が異なる。

いうまでもないが、全高がセダンとゴルフ・プラスの中間にあるヴァリアントのそのリアシートは、我々日本人にはピッタリというべきヒップポイント。リアシートに子供やご老人を乗せる機会が多いファミリーカーの場合、これは絶対に見逃せないポイントで、なにを隠そう、リポーターはこれをもって、ファミリーカーとしての資質が、ゴルフのラインナップの中でも抜群と見ているのだ。

新旧モデルを比較すると……?

先代ゴルフ・ワゴンとゴルフ・ヴァリアントのもっとも大きな違いはデザインの基本的なコンセプト。フロント・マスクはベースとなったゴルフ( IIIとIV)に準じるデザインが通例だったが、ヴァリアントではゴルフよりも、むしろジェッタに近いイメージを採用。さらにリアのDピラーを寝かせたデザインも歴代ゴルフ・ワゴンにはなかったものだ。

先代もGTI(IV)同様のエンジンを積んだモデル(GT)があったが、それはモデル末期に追加されたもの。上陸時点ですでにGTI(V)同様のパワートレインを持つモデルが存在するのも、ヴァリアントのキャラクターを物語る。

ヴァリアントのボディサイズは先代ゴルフ・ワゴン比で全長+165mm、全幅+50mm、全高+40mm、ホイールベース+60mm。全体に一回り大柄になったが、とりわけ全長の伸長が目立つ。その長くなった全長分はラゲッジスペースの拡大に充てられた、と考えるべきだろう。

VW GOLF FAN Vol.13から転載
LE VOLANT web編集部

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