積極的に走らせると予想以上に楽しい
こうしたシャシーに対するパワートレインのマッチングも絶妙だ。このセグメントは3気筒が主流だが、ルーテシアの1.3Lターボは4気筒を採用しており、まずその回転フィールが静かでスムーズ。小排気量ターボが苦手とする低速時の過給圧上昇も巧みに緩和され、変速時は湿式クラッチを使う7速EDCのミート感が、ギア比の小気味良さだけでなく上質感をももたらしてくれる。
だからルーテシアは、積極的に走らせると予想以上に楽しく、そしてちょっと驚くほど速い。リニアながらもクイック過ぎないハンドリングは、アクセルオフやブレーキングでフロント荷重を与えて行くほどに正確性を増し、グーッと力強く車体を曲げて行く。スポーツモードで跳ね上がったブースト、そのキック力はルノー・スポールモデルかと思うほど力強く、いつの間にか運転にのめり込む自分がいる。新型はACCが標準装備されたことも含めて、オンとオフのギャップがハッキリしているのもいい。
対してプジョー208は、はっきりと個性派だ。使いやすさよりも、カッコ良さ。実用性よりも、走りと個性! そう言い切れるなら断然、こちらを選ぶべき。そのラインナップに生活密着型のシトロエンを持つPSAグループだけに、プジョー(とDS)の割り切りは本物である。まずそのデザインが、内外装共にエッジが効いていてキレッキレ。牙を剥く子ライオンのルックスには、これだけでも惚れて買う価値がある。
1.2L直列3気筒エンジンも、実用エンジンである以上に愛らしい。街中では最大205Nmの実用トルクが小さなボディを快適に走らせるが、このエンジンには、思わず回したくなる楽しさがある。恥ずかしげもなく3気筒ターボのメカニカルサウンドをブーン! と響かせ(スポーツモードの疑似サウンドは余計だが)、最大でも105psしかないパワーを絞り出しながら走っていると、とても幸せな気持ちになれる。そして「どうしてMTがないんだ!」と思わず口走ってしまう。
208にネガティブがあるとすれば、それはiコクピットの独特なステアリングポジションだろう。これさえ慣れることができれば、208は素晴らしく趣味性の高いハッチバックである。
今回の3台を比べてみると、ポロの室内パッケージは本当に素晴らしい。やや直立気味に座るシートと相まって、前席の室内空間はすっきり広々としている。ホイールベースなどは後追いのルーテシアより15mmも短いのに、後席は頭上とひざ周りに十分なクリアランスがあり、シートの座り心地も一番いい。
ただ肝心な走りは、ちょっとばかり残念な印象だった。まず何よりダンパーの減衰力が高く、乗り心地が硬い。さらに電動パワステの制御が軽々しく、ゲームのような操作で手応えが得にくい。
3台中最も排気量が大きくパワフルな直列4気筒ターボは回せば気持ち良いのだが、低速時における7速DSGの制御と足まわりの硬さがリンクすると、ややギクシャク感も目立つ。同じポロでもGTIは可変ダンパーがしっとりとした乗り心地を実現し、DSG(6速の湿式だが)や電動パワステの制御も質感高くまとめているのだから、もう少しその乗り味に近づけて欲しい。飛ばすほどにフラットになる乗り心地と剛直なステアフィールを持つポロTSI Rラインだが、正直もう少し実用域の使い心地を考えるべきだろう。
とはいえこの完璧なまでのBセグパッケージングと、1.5TSIの力強さを味わったら、ポロを選ぶユーザーはやっぱり多いと思う。クルマ好きの目線で見れば、圧倒的に楽しいのはプジョー。
対してルーテシアは、その両方を良いところ取りした上で、新しいルノー・テイストを表現できている。総合評価としてはトータルバランスに優れる新型ルーテシアに、今回の一等賞をあげたい。