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「VWゴルフV TSIトレンドライン」122psTSI+7速DSG搭載。TSIシリーズの本命モデル!!【VW GOLF FAN Vol.16】

※この記事は2008年6月に発売された「VW GOLF FAN Vol.16」から転載されたものです。

前号で海外試乗リポートをお届けしたばかりのゴルフの末弟、1.4LシングルチャージャーTSI+7速DSGを搭載する「ゴルフTSIトレドライン」がこの6月に早くも日本上陸を果たす。今回、その日本仕様に試乗する機会を得たので、早速、ロードインプレッションをお届けしたい。

従来のVにはなかった身のこなしの軽さ

本誌読者の皆さんなら、このゴルフTSIトレンドラインがどういう内容を持ったクルマであるかは、多分なにをいまさらだろうが、かいつまんで説明しておこう。

GTIやGTTSIにはない“軽さ”が魅力

1.4Lの直列4気筒エンジンを搭載するのはGT TSIやコンフォートラインと同じだが、その過給をスーパーチャジャーとターボチャージャーの2段構えとせず、小径のターボチャージャーのみとして、最高出力122ps/5000rpm、最大トルク20.4-m/1500~4000rpmという性能を持たせている。組み合わせるミッションが、乾式クラッチの7速DSGであるのもトピック。1.6LのFSIを搭載していたEに代わる、ゴルフの新しいベーシックモデルだ。

従来のEに代わるエントリーグレードとなるだけに、インパネ回りはシンプル。Eからの変更点は、マルチファンクション・インジケーターが新たに備わったことなど。写真のナビゲーションは純正アクセサリーの設定。

早速、運転席に乗り込んでみよう。目前のダッシュボードの風景は、他のグレードとあまり変わるところはない。ただ、ステアリングホイールはT字スポーク底部にアルミ製クリップがないシンプルなもので、それがベーシックモデルであることをうかがわせる。ポジションをセットし、キーを捻る。TSIユニットはもちろん、なんのためらいもなく目を覚まし、静かなアイドリングを開始する。

シートは従来と同じく、ファブリック地のスタンダードシート。このシートも含め、装備、内装の類はほぼ従来のEに準ずる内容となる。

最初の驚きは、Dレンジをセレクトし、ごく普通にアクセルペダルを踏み込んだ、次の瞬間だった。クラッチはきわめてスムーズに繋がれて、なんらギクシャクすることなく滑らかに発進する。そこに、従来のゴルフVにはなかった身のこなしの軽さを感じたのだ。「エッ」と思った。これに始まって、このクルマのテストドライブは、まさに驚きの連続だった。

エアコンはセミオートタイプ(温度自動調整/風量自動調整)が標準装備。ちなみに、ひとつ上のグレードとなるTSIコンフォートラインはフルオートタイプだ。

少食でエココンシャスなクルマであることは、アイドリング近辺でのエンジンの振る舞いでもわかる。アイドリング回転数は、わずか650rpm! ブレーキペダルを離すと、800rpm前後に上昇、半クラッチ状態となって弱めのクリープが生み出される。ここにもギクシャク感はない。制御が実にきめ細かいのである。

タイヤサイズは195/65R15。ホイールも6Jのスチール+フルカバーと、Eのそれを踏襲。タイヤ銘柄は低転がりタイプのコンチエコ・コンタクト3を採用する。

スムーズな発進の後、DSGはたちまち2速、3速と、次々とシフトアップを繰り返していく。平坦路でユックリとアクセルペダルを踏んでいくと、50km/h台で6速、58km/hになるかならないかのところで、もう7速に入ってしまう。タコメーターの針はせいぜい2500rpm止まり。その針がストンと、200~300rpm落ちることで、シフトアップされたことが分かる。ショックはまったくといっていいほど体感させない。そのギアチェンジの巧みさ、滑らかさはスピード域が上がっても変化の兆しを見せないから、本当に見事というほかない。

エクステリアはほぼ従来のEと変わるところはない。一番の識別ポイントとなるのはこのリアのTSIエンブレム。そのTSIエンブレムは「I」のみがレッドとなる、TSIコンフォートラインと同じタイプ。

ちなみに、かなりオーバードライブ化されている7速は、100km/h走行時のエンジン回転数を約2100rpmというあたりに留めるから、燃費に大きく貢献することは間違いない。

ヘッドライトはハロゲンタイプが標準装備となる。オートライト機能は付かないが、TSIコンフォートラインと同じく、ハイトコントロール機能も備わる。

意外なまでのスポーティな走り

エンジンも、予想を上回る仕上がりだった。小径ターボのシングルチャージであることが、様々なメリットをもたらしていると実感できるのだ。

足回りは、従来のEの味付けをほぼ踏襲しており、シリーズのなかで最もソフトな味付けとなる。ただ、エンジン、ミッションの軽量化が影響しているのか、従来のゴルフVにはない鼻先の軽さが感じられる。コーナリングでのノーズの入り方も素速い。

まず、評価したいのは、アクセル操作に対するレスポンスのよさ。小径ターボそのものの過給の立ち上がりの速さ、それに加えて吸気系の取り回しの短さが、この好ましい結果を引き出していると思われる。ツインチャージャーのTSIには、アクセルペダルと靴の間に薄いスポンジが挟まっているような感覚があるが、これにはなく、まるでNAのようなリニアさ。空冷式インタークーラーを使わず、インテークマニホールド一体型の水冷式を採用しているのも、エンジンのツキといったものを意識したためだろう。

エンジンは1.4L直4DOHC16VのシングルチャージャーTSIで、122ps/5000rpm&20.4kg-m/1500~4000rpmを発揮。ツインチャージャーTSIとの違いは、小径タービン単独によるチャージングのほか、インテークマニフォールド一体型水冷インタークーラーの採用、インテークポートの形状変更によるタンブルフラップの廃止など多岐に渡る。

その回り方も、緻密さを感じさせるものだ。元来、この1.4Lユニットには小排気量ならでは吹け上がりのよさというものがあるが、新たにインジェクターを6ポートとして燃料の噴射形状を変更したことや、インテークポートの形状も変更したことが効果を現しているのだろう、密度が濃いような、洗練された回り方をする。

ミッションは7速DSG。セレクターレバーは従来の6速DSGのものと同じ形状となる。また、1速のギア比は6速DSGより約2割ローギヤード化。それにより6、7速をオーバードライブ化できるため、7速100km/h時のエンジン回転数は約2050rpmに留まる。

驚いたことに、このエンジンと7速DSGを組み合わせたTSIトレンドラインの走りは、むしろパワーに優るツインチャージャーよりも軽快、かつ活発であるように感じられる。エンジンとミッションの相互制御を司るECUは非常によくセッティングされているといえて、どんなシチュエーションにおいても、ドライバーが望んでいるであろう走行状態を実現している。たとえば、7速で60~70km/h巡航していたとしても、アクセルペダルを一気に踏み込めば、DSGはたちまち3速までギアを落とし、エンジンはトルクフルとまで思わせる力強さで加速を展開するのだ。
といっても、もちろん、限界はある。各ギアで6500rpmのレッドゾーンまできれいに吹け上がっていくものの、上のギアでは伸びが鈍る。低回転域を重視したターボセッティングが、このエンジンの大前提になっていることを忘れてはならない。

6速DSGと7速DSGの最大の違いはクラッチ。6速DSGが湿式なのに対し、7速DSGは乾式クラッチを採用。それにより、オイルサーキットが不要になり、オイル量も低減。システムそのものも簡素になり、結果として23kg(6速DSG比)の軽量化を実現している。また、アウトプットシャフトを3軸(6速DSGは2軸)とすることで、全長もコンパクト化される。

とはいえ、このクルマ、ワインディングでは、意外なまでにスポーティな走りを味わわせてくれる。それは、GTIやGT TSIの運転感覚とはまた違うもので、ヒラリヒラリといった軽快感に溢れるものだ。エンジンでツインチャージャーのTSIに対して14kgの軽量化、ミッションで湿式クラッチの6速DSGに対して23kgもの軽量化を果たしているこのクルマ、フロント荷重が少なくなって前後重量配分が改善されたためだろう、ステアリング操作に対して驚くほど素直にノーズの向きを変える。タイヤが195/65R15というサイズ、しかも6Jリムのスチールホイールであるにもかかわらず、ファン・トゥ・ドライブなのだ! コシャクにも。

ギアポジションを示す数字が、欧州仕様ではインジケーターの下部に1〜7まで横に並ぶのに対して、日本仕様は従来同様、右端に縦に数字が並ぶ。しかも、通常は1〜6速までが表示され、ある程度の速度に達する(ギアも2速以上)と2〜7速までが表示される仕組みとなる。

ゴルフTSIトレンドラインは、なんというか“素のゴルフ”のよさといったものを強く感じさせる。IやII、少なくともIIIまではあったゴルフのゴルフたる所以を見い出せるようにも思える。その経済性を含め、これはもしかしたら、「Golf is Back!」ではないだろうか。

“素のゴルフ”の良さを感じさせるトレンドライン

【Specification】フォルクスワーゲン・ゴルフTSIトレンドライン
■全長×全幅×全高=4204×1759×1513mm
■ホイールベース=2578mm
■トレッド=前1540/1518
■車両重量=1226kg
■最小回転半径=5.45m
■エンジン型式/種類=-/直4DOHC16Vターボ
■内径×行程=76.5×75.6
■総排気量=1390cc
■最高出力=122ps(90kW)/5000rpm
■最大トルク=200Nm(20.4kg-m)/1500-4000rpm
■燃料タンク容量=55L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DSG
■変速比=(1)16.71(2)10.09(3)6.79(4)4.98(5)3.8(6)3.07(7)2.57(R)17.41
■サスペンション形式=前ストラット/コイル、4リンク/コイル
■ブレーキ=前Vディスク/後ディスク
■タイヤ(ホイール)=195/65R15(6J)
※数値は欧州仕様のもの
※変速比はオーバーオールレシオ

リポート:小倉正樹/フォト:郡大二郎

VW GOLF FAN Vol.16から転載
LE VOLANT web編集部

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