ホイール

【BBS】ニュル24 時間を制したトップガンたちに訊く「闘うマシンが選んだ闘うホイールの真価」

世界一過酷なコースで繰り広げられる24時間のサバイバルレース。そのニュルブルクリンク24時間耐久レース常勝チームのマシン、ポルシェ911GT3Rが採用するBBSアルミ鍛造ホイールについて、レースを闘うトップガンたちを集め、その真価を語ってもらった。

最高峰が求められるポルシェが選ぶBBS

世界一過酷なレーシングコース「ニュルブルクリンク」。地元ドイツをはじめ世界中のモータースポーツファンにとって聖地であるこの全長約25kmの「緑の地獄」で催される「ニュルブルクリンク24時間レース(以下ニュル24時間)」の第49回大会が、この6月初旬に開催された。その第1回大会が行われた1970年、奇しくも同じ年に「ハインリッヒ・バウムガルトナー」と「クラウス・ブラント」の若き職人ふたりが、ドイツ黒い森地方の小さな町で立ち上げた工房が、いまや鍛造ホイールのトップブランドにまで成長を遂げた「BBS」の起源なのだ。

クロススポークが特徴的なBBSアルミ鍛造1ピースホイールは、2018年発表のFIA-GT3マシン、新型ポルシェ911GT3Rから正式採用されている。

半世紀以上に渡ってモータースポーツと自動車開発に貢献してきたニュル北コースと同様に、マシンを足元から支えてきたBBSホイールの真価について、ポルシェ911GT3Rで幾度となくニュルの王座を獲得してきた名門、「マンタイ・レーシング」の主要メンバーに話を聞いてみた。

Manthey-Racing GmbH CEO Nicolas Raeder「ニコラス・レーダー」

現マンタイ・レーシングの代表取締役であるニコラス・レーダー監督によれば、BBSホイールはポルシェに欠かせないという。
「ニュル24時間への参戦経験で培ったノウハウを先代から継承したマンタイは、ビジネスとしてポルシェのチューニングやコンプリートカー製作を手掛けています。そこでもBBS製ホイールは量販車用、モータースポーツ用共に顧客からの評価が高く、ニュル24時間のDNAを存分に注ぎ込んでBBSと共同開発したポルシェ911GT2、GT3用オリジナル鍛造ホイールは、多くの顧客に愛されています。F1パイロットのニコ・ヒュルケンベルクもそのひとりで、マンタイのパフォーマンスキットを装着した彼の愛車911GT2の足元には、もちろんBBSホイールを採用しています」

濃霧の影響による長時間の中断を終えた最終スプリントで、昨年王者ROWEのBMW M6 GT3を抑えたマンタイ・レーシングは、創立25周年目のレースで優勝記録を更新した。

そしてニコラスCEOは、日本の高い鍛造技術とドイツのクラフトマンシップとの融合に強い信頼を寄せているという。「日本とドイツが世界に誇れるのが職人魂=クラフトマンシップです。その集大成といえるBBSの鍛造ホイールが、マンタイとポルシェのモータースポーツ活動を支えているといっていいでしょう」
命の危険も伴うニュル24時間レースへの〝リスペクト〞を哲学にした世界有数のレーシングチーム代表が放つ言葉だけに、その重みを感じざるを得ない。

1999年のル・マン24時間GTクラスを制したマンタイ・レーシング。ニュル24時間では2006年から4期連続、2011年と2018年に優勝している。

「この世界一の難関コースを走る上でBBSホイールに求められるのは、見た目のカッコよさと耐久性。この両立はシンプルだけどイージーじゃないでしょう」
そう語るのは、この49回大会を同チームで制したポルシェモータースポーツのエースドライバーであるケヴィン・エストレ選手だ。

Porsche Motorsport Driver Kevin Estre「ケヴィン・エストレ」

「マシンのパフォーマンスを引き出すためにホイールは限界まで軽量化されているけれど、ジャンピングスポットの着地など、マシンが強い衝撃を受けた際にホイールに掛かる負荷は相当なもの。だからこそ、しっかりした耐久性と安全性が重要なのです」
しかも、王者が〝カッコよさ〞と表現したBBSホイールの高いデザイン性は、スペシャリストが工学的に計算し尽くした強度・剛性によって導き出されている。
最後に、このニュル24時間とニュル耐久シリーズ(NLS)にマンタイから参戦しているラルス・ケルン選手は、バイザッハ(ポルシェAG)の開発エンジニアとして、ポルシェ全モデルを評価テストする若きトップガンである。

Porsche Motorsport Driver Lars Kern「ラルス・ケルン」

「911GT2やGT3のような市販車最高峰レベルのモデルでは、特にバランスやグリップは限りなくレーシングカーに近い設計になります。しかし、こうした高性能モデルをドライブするオーナーの大半は、ケビン・エストレ選手のようなスキルを持ち合わせていないでしょう。ましてやポルシェを所有しても、誰もがサーキットで限界まで走り込むわけではないから、いかなるシーンでも安心・安全に高度なドライビングが楽しめるクルマ作りが求められます。それには装着するタイヤやホイールも重要視されるので、開発テストではタイヤとホイールのコンビネーションを変更しながら、耐久性や強度をチェックしています」

ニュルの複雑な路面ではタイヤとホイールのどちらかの性能が少しでも劣っていたらトップパフォーマンスは引き出せない。また、1分1秒を争うピット作業をより早く行うためにも、ホイールの軽量化は重要課題だ。

911カレラやケイマン、パナメーラといった市販モデルからレーシングカーに至るまで、ありとあらゆるポルシェを駆り、年間90日前後をニュル北コースのインダストリープールで走り込むという。
そのテストの一環として、アルミニウムやマグネシウムなど、さまざまな種類のBBSホイールとタイヤを組み合わせることで、微妙なバランスの違いを感じ取り、開発チームへとフィードバックする。そんな彼は、もちろんエンジニアとテストドライバーの両視点で、細部にまで全神経を研ぎ澄まして精査するスペシャリストだ。
「最高峰のテクニカルソリューションを求めるのがポルシェならば、それに全力で対処できるのがBBSのホイールということです。BBSが有する高い技術が進化し続ける限り、ポルシェが求めるのは常にBBSでしょう」
トップガンが断言するのだから、それ以上の言葉はいらないだろう。

取材協力:BBSジャパン https://bbs-japan.co.jp/

フォト=Juergen Tap ル・ボラン2021年8月号より転載

この記事を書いた人

池ノ内 ミドリ

武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。

池ノ内 ミドリ

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