MINI

「THE MINI JCW Crossover」で東京オリンピックのロードレース・コースを辿る『刺激とスポーツと、楽しさと。』

6輪生活者が選ぶクルマとは?

コロナ禍でよく売れたものがある。オートバイと自転車だ。その理由はわかる気がする。ひとつは“密”を避けたいという気持ちから、電車などの公共交通機関を使わずパーソナルに移動したと思う人が増えたこと。もうひとつはリモートワークなどで余暇が増え、「何かを始めよう」と考える人が増えたこと。もちろん料理や楽器演奏などインドアでできることを始めた人も多いが、いっぽうでコロナにより不自由な生活を強いられるからこそ、風を切って走る“自由”を欲する人もいたのではないかと思う。

パワフルなエンジンに4WDを組み合わせるだけあって、高速でも抜群の安定性を披露してくれる「MINI John Cooper Works Crossover」。長距離移動もすこぶる快適だ。

僕はこれまで、自動車、オートバイ、自転車、それぞれの専門誌の編集長をつとめていたことがあり、プライベートでも四輪、二輪に乗っている。だから6輪生活、ならぬ8輪生活(クルマ+オートバイ+自転車)の楽しさを実感しているのだけど、この汲々としたコロナ禍生活の副産物として車輪ミックス生活を楽しむ人が増えたなら、それはそれでよいことだなと思う。

僕の知る限りにおいてだが、オートバイや自転車好きな人には「好きなクルマ」の傾向というものがある。それはコンパクトで、適度なパワーがあり、身のこなしの軽いクルマで、ジャンルで分ければスポーツカーだったりコンパクトハッチバックだったりするのだが、つまりはシンプルで余計なものが削ぎ落とされた、オートバイ(や自転車)のようなクルマ、ということだ。さらに要約するなら「意のままに操れる、運転が楽しいクルマ」と言ってもいいかもしれない。

スポーツカー? SUV? ファミリーカー?

そんな、二輪好きが好みそうなクルマというのはいくつか挙げられるけれど、中でも最右翼と言えるのが「MINI」だろう。かつてのオリジナルMINIについて、そのシンプルさとそれゆえの運転の楽しさについて異論を唱える人はいないはずだ。そして現代のミニにおいても、その愛らしい外観以上に色濃く継承されているのは、意のままに操れる運転の楽しさである。よく「ゴーカートのような運転感覚」と言われる、それのことだ。

今回、MINI John Cooper Works Crossoverに乗る機会を得た。Crossoverはご存知、MINIの4ドア版であり、地上高を上げてSUV的なキャラクターを与えられたモデル。そして「JCW」とはJohn Cooper Works(ジョン・クーパー・ワークス)の頭文字である。伝説的なMINIのチューナー、ジョン・クーパーの名を冠した、現行MINIのラインナップにおけるパフォーマンスモデルとなるのがこのJCWだ。このMINI John Cooper Works Crossoverは全長4.3mあまりのコンパクトなボディに最高出力306ps、最大トルク450Nmというハイパワーエンジン(2L直列4気筒ターボ)を積み込んでいる。

大型の丸形センターディスプレイにトグル型の各操作スイッチ類など、MINIならではのアイコンがそのキャラクターを際立てているインテリア。これを毎日眺めているだけでもワクワクした気分にしてくれる。前席はサポート性の良い形状でスポーツドライビングにも対応。フロントフェンダーには「John Cooper Works」のエンブレムが備わる。リアのコンビネーションランプはユニオンジャックのデザインだ。

MINIだけど4ドアボディ、車高も高く、300ps超えのエンジンを積み、さらに4WD! と、いささかキャラが渋滞しているようにも思えるが、逆に言えばその非合理的と言えるほどのToo MuchさがこのMINI John Cooper Works Crossoverの魅力だろう。人も荷物もしっかり乗せることができ、走りはスポーティで刺激的、悪路も雪道も行ける走破性。ファミリーカーにも、スポーツカーにも、グランドツアラーにもなるマルチぶりは、多趣味で欲張りなアクティブ人間にはこの上ない相棒となるかもしれない。

東京オリンピックのコースを辿って……

MINI John Cooper Works Crossoverで行ってみたいところ? やってみたいこと? と考えた僕は、クルマにロードバイクを積んで、過日行われた東京オリンピックの自転車ロードレース競技のコースを辿ってみようと思いついた。東京都調布市の「武蔵森の森公園」をスタートし、神奈川県、山梨県、静岡県内を通って富士スピードウェイへゴールする約244km(女子は147km)のコース。その道程をミニで走りながらところどころでバイクを降ろし、“オリンピック気分”を味わってみようと思ったのだ。

今回の試乗ルートは東京オリンピックのロードレースのコースである武蔵の森公園をスタート。途中サイクリストの”聖地”と呼ばれる道志みちを経由し、山中湖から裾野方面へ向かい、三国峠を越えて再び山中湖へ、フィニッシュは富士スピードウェイというルートだ。

積み込んだ自転車はスペシャライズドのeロードバイク。見た目はロードバイクそのものだがフレームにバッテリーを内蔵し、電動モーターがアシストしてくれる。日本では「電動アシスト自転車」と言えばママチャリのイメージだが、欧米では「e-bike」と呼ばれ、スポーツを楽しむための自転車として人気がある。東京オリンピックのコースは獲得標高(コース走行で上る高さの合計)4,865mというハードさだからヘナチョコの僕ではとても走れるルートではないが、e-bikeの力を借りれば気分ぐらいは味わうことができるだろう。

6輪車ライフのお供に連れだしたのは、スペシャライズドのeロードバイクである「CREO SL COMP CARBON/803,000円(税込)」。eバイクとしては驚異的に軽量な13.2kgという重量に、240Wのモーターを搭載することで急坂も楽に上ることが可能だ。内臓バッテリーは約130km、さらに写真のレンジエクステンダーを装着することでさらに約65kmもアシスト距離がアップ。さらに路面からの衝撃を吸収してくれる「Future Shock 2.0」が、スムーズで快適な走りを実現させるだとともに疲労を軽減させてくれる。

調布から相模湖までは中央道でワープ。高速を降り相模原から山中湖に抜ける国道413号線、いわゆる“道志みち”はオリンピック選手たちも走った山あいの峠道だ。途中にはオリンピックコースであったことを示すフラッグなども残されている。ここではMINI John Cooper Works Crossoverの走りをたっぷり楽しんだ。

MINI John Cooper Works Crossoverのパワフルかつスポーティな走りには河西氏も満足気。途中の圏央道相模湖IC近くのルートには、「TOKYO 2020」の横断幕が貼られていた。「道の駅どうし」はサイクリストとバイク乗りでにぎわうスポットだ。

片側一車線のタイトな峠道ゆえ306psをフルに発揮させる場面はないが、それでも右足に力を込めた瞬間、シートに身体が押し付けられるような強烈な加速を味わうことができる。さらに急峻な山道においてパワー以上にモノを言うのは450Nmの強力なトルクだ。8速ATはパドル操作してMT的な運転を楽しむこともできるが、そうするまでもなくATモードのままアクセルを踏めば、急勾配も気にせずぐいぐいと上っていく。

最高出力306ps、最大トルク450Nmを発生する2L直列4気筒ターボエンジンを搭載するMINI John Cooper Works Crossoverは、車重1670kgのボディを軽々と加速させる動力性能を誇る。気分に合わせて走行モードを選択できるドライビングモードは燃費重視の「GREEN」、バランスの取れた「MID」、そしてパワフルな走りが愉しめる「SPORT」の3つが用意。試乗車に装着されていた19インチのアロイホイールは、切削加工が施されたシルバーの5ツインスポークと、ピアノブラックの組み合わせでスポーティなデザインだ。

あり余るパワーとトルクがあると言っても、かつてのFFホットハッチのようなジャジャ馬的ところはまったく感じられない。4輪駆動によりがっちり路面を掴んだ車体は、ハンドル操作に応じて素直に向きを変え、いわゆるオン・ザ・レールな感覚でカーブを駆け抜けていく。この人車一体感は確かに、自転車やオートバイと通じるものがあるなと思う。

ミニ・クロスオーバーとeロードバイクに通じる楽しさ

道志みちを走破し山中湖に到着。ここからは三国峠を超えて富士スピードウェイへと至る、コースのクライマックスといえるルートだ。峠の途中の駐車場で自転車を降ろし、バイクを漕ぎ出す。三国峠は平均勾配10パーセント以上、区間によっては20パーセントを越えるという厳しい山道。オリンピアン達はここをぐいぐいヒルクライムした訳だけど、もちろん僕にはムリ……。しかしスペシャライズドのeロードバイクは、その急坂を面白いぐらいラクに上らせてくれる。もちろん“アシスト”なのでしっかり漕ぐのだけど、速度と脚力に応じて適切な負荷にしてくれるから、“スポーツしてる感”は味わいながら、いっぽうで富士山と山中湖が織りなす絶景を楽しむ余裕もあるのだ。

三国峠の急坂をeロードバイクで駆け上がる河西氏。電動アシストのおかげで軽々と登ることが出来る。

思えばMINI John Cooper Works Crossoverも、このeバイクと通じるところがある。ピュアなスポーツカーではないし、SUVとも言えない、とはいえ実直なファミリーカーでもない。存在自体がまさにさまざまなジャンルの”クロスオーバー”であり、いいとこ取りのクルマなのだ。

ゴール地点となる富士スピードウェイでのカット。MINI John Cooper Works Crossoverとeバロードイクのツーリングを存分に楽しめたご様子。

じつはeロードバイクは、登場した当初、従来のロードバイク乗りからは“邪道”扱いされていた。「人力で漕ぐのが自転車なのに、電動モーターの力を借りるなんて!」というやつだ。しかしスポーツ性と楽しさを両立したeバイクは今やひとつのジャンルとして定着し、そんな既成概念は過去のものとなった。

標準状態で450L、リアシートを倒すと1390Lものスペースが出現するMINI John Cooper Works Crossoverの荷室は、一般的なロードバイクであれば、フロントホイールを外すだけで収納が可能。またオプションのキャリア類(ベース・サポート:34.760円+レーシング・サイクルホルダー:20.790円/フロント・ホイール・ホルダー:13.420円※いずれも税込)を装着すればルーフにも積載することができる。

MINI John Cooper Works Crossoverも従来の“ミニ”のイメージを覆すような存在だ。そう考えるとMINI John Cooper Works Crossoverにeロードバイクを積んで出かけるというのは、なかなかよいカップリングだったなと思える。クロスオーバーな乗りもの同士の組み合わせは、なによりとても楽しかった。だから……。

「せっかく自転車積んでいったのに、あまり乗ってないよね?」という既成概念にとらわれたツッコミも、今回はなしということでお願いしたい……。

●Specification【The MINI John Cooper Works Crossover
・全長×全幅×全高:4315×1820×1595mm
・ホイールベース:2670mm
・車両重量:1670kg
・エンジン:2.0L直列4気筒DOHCターボ
・最高出力:306ps/5000rpm
・最大トルク:450Nm/1750-4500rpm
・トランスミッション:8速AT
・駆動方式:4WD
・車両価格:6,090,000円~(税込)
・公式サイト THE MINI JCWサイト

撮影協力=スペシャライズド https://www.specialized.com/jp/ja

フォト=佐藤正巳 M.Sato
河西啓介

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