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アルファの歴史に姿を名を残す数々の名車たちの面影が随所に!「アルファロメオ トナーレ」の魅力をイタ車マイスターの嶋田智之が語る

何はともあれ早くステアリングを握ってみたい!

皆さん、お久しぶりでございます。LE VOLANT本誌で”月刊イタフラ”を担当させていただいてた、自動車ライターの嶋田です。モロモロあって誌面での連載の方は終了しておりますが、まだしぶとく生き残っていて、このLE VOLANT CARSMEET WEBでも何がぶちかますことはできないか、と虎視眈々と狙っている最中です。まだ何かを思いついたわけでもないのですが……。

にも関わらずヒョコッと登場したのには、ワケがあるのです。2019年のコンセプトカーお披露目から3年、やっとアルファロメオ・トナーレが正式発表となったのですよー。姉にあたるステルヴィオは素晴らしい“スポーツ”SUVだけど、ちょっとサイズが大きい……と迷い続けてた人や熱いアルファのファンたちはだいぶ長く待ちぼうけを食らわされてきたわけですが、いや、待った甲斐はあるでしょ。トナーレ、早くステアリングを握ってみたい!と思わされるだけのモノをキッチリと持ってます。

まずはサイズ。全長4.53m、全幅1.84m、全高1.6m。ステルヴィオの全長4.69m、全幅1.9m、全高1.68mと較べると、ひとまわりコンパクトです。トヨタのハリアーよりも20cmぐらい短くて9cmほど低いくらい、と思っていただいていいでしょう。Cセグメントに属するサイズです。

そして、やっぱりカッコいい。3年前のジュネーヴショーの頃に出回ったコンセプト・モデル、ほぼそのままです。もちろんこれはアルファロメオのチェントロ・スティーレの作品。SUVとしての要素を満たす必要があるからステルヴィオに似てるという印象はあるにはあるけれど、造形としては全く別物です。例えばヘッドランプからテールランプまで続くサイドのショルダー部あたりの絶妙なカーブが初代ジュリア・クーペを連想させ、3つ目のヘッドランプがES30のSZとRZの記憶を蘇らせるように、アルファの歴史に姿を名を残す数々の名車たちの面影が見てとれます。

8Cコンペティツィオーネ、スパイダー・デュエット、スプリント・スペチアーレ、プロテオ・コンセプト、ブレラ、939スパイダー、159……と、パッと思い浮かんだだけでも結構な数。トナーレはアルファのアイコンともいうべきスクデット(盾)がバンパーの一部みたいじゃなくて久しぶりに独立したデザインになってるんですけど、その下側左右のインテークと合わせて構成されるトリロボ(三葉飾り)だとかテレフォンダイヤル型のホイールあたりも、モチーフとしては様々なアルファロメオに使われています。

デザイナーたちは自分たちの歴史をキッチリとリスペクトしてるんだな、ということが解ります。なのに、どのディテールを見ても過去の模倣じゃなく、しっかりと解釈しなおされてるし、全体を見ると全く新しいアルファロメオのSUV以外の何物でもありません。インテリアがこれまで以上にめちゃめちゃドライバーオリエンテッドでありながらプレミアム感のようなものを嫌味なく盛り込んでいるようなところもそうなのですが、デザイナー陣の腕前の水準の高さとセンスのよさをだいぶ強く意識させられます。

キャッチーなところなのでスタイリングからお話をスタートしましたが、トナーレの最大のキモは、アルファロメオ初の電動化モデルであるということでしょう。基本的にはハイブリッドとプラグイン・ハイブリッドの2本立て、とされています。

ハイブリッド・モデル。こちらは前輪駆動です。搭載するエンジンは、旧FCA時代に新世代のファイア・エンジンとして開発された“ファイアフライ”系をベースにした、直列4気筒直噴1.5L可変ジオメトリー・ターボです。もちろんハイブリッド用に新規開発されたもので、12.5という比較的高圧縮型。遅閉じのミラーサイクルを採用しています。ハイパワー版は160hp、エントリー版は130hp/240Nm。7速DCTで、そこへ独自に開発したという20hpと55Nmを発揮する“P2”モーター、48Vベルト駆動式スターター・ジェネレーターが組み合わせられたシステムです。

ハイブリッド・システムはいかなるときも常に介入していて、加速時にはモーターがパワーとトルクを膨らませ、減速時には回生ブレーキでエネルギーを回収。それだけなら一般のマイルド・ハイブリッドと同じですが、機構的には似ているものの、このシステムはエンジンを停止させてモーターのみで走行できるという特徴を持っています。街中での低速走行中や駐車場にクルマを出し入れするとき、クルージングしてるときなどには、距離は限られるでしょうけど完全なEV状態で走ることができる、というわけですね。マイルド・ハイブリッドとストロング・ハイブリッドのいいとこ取り、といえるかも知れません。発売がスタートするときには130hpと320Nmの1.6Lディーゼルと6速DCTを組み合わせたハイブリッド・モデルもラインナップされる予定だというから、燃費に関してはそちらが有利でしょうね。

そして、プラグイン・ハイブリッド・モデルです。車名には“Q4”が入るのですが、アルファの場合、Q4は4輪駆動を意味します。つまり、こちらは全輪駆動。1.3L 4気筒のマルチエア・ターボで前輪を駆動し、モーターで後輪を駆動するかたちです。エンジンで180hp、モーターでは120hp、そしてシステム全体では275hp。姉にあたるステルヴィオのガソリン・エンジンが280hpですから、ほぼ匹敵するパワーを手に入れていることになります。静止状態から100km/hまで加速タイムを見てみると、ステルヴィオのの5.7秒には及びませんが、6.2秒と、瞬き1回半未満といえるくらいの差しかありません。加速時の爽快感は、ステルヴィオに匹敵すると見ていいでしょう。搭載するバッテリーは15.5kWhで、EVモードでの走行可能距離は市街地で最長80km、複合サイクルでは60km以上。満充電に要する時間は、7.4kWの急速充電器を使用した場合で約2時間半と発表されてます。

ハイブリッド、プラグイン・ハイブリッドともに、昨今のアルファロメオらしく、当然ながらDNAドライビングセレクターが備わっています。そしてこれが電動化に伴って改良されていることは、いうまでもないでしょう。ダイナミック・モードではエンジンとモーターのパワーやトルクを最大限に活かして、ナチュラル・モードはバランス型で、アドバンス・モードではエンジンの始動を極力抑えてEV走行を多用する燃費重視で、という方向です。

そのシステムを載せるプラットフォームは、実は旧PSAのEMP2をベースにしたものになると予想する人が多かったようですが、実際には旧FCA時代から開発を進めてきた横置きプラットフォームをベースにした新設計なのだそうです。そこに組み付けられるサスペンションは、前後ともマクファーソンストラット。基本的には全車に、ステルヴィオなどでも実績のあるKONIとの共同開発によるFSDダンパーが備わっているのですが、ドライブモードに合わせて特性を変化させるアダプティブ・ダンパーもオプション設定されています。

ジュリアやステルヴィオを考えれば、車両の前後重量配分にこだわったというコメントには納得しつつ安心感あり。ステルヴィオでは11.7という驚愕だったステアリング・ギア比は、トナーレでは13.6。それでもCセグメントのSUVとしてはかなりクイックな設定といえるでしょう。さらに写真と映像を通じての見た感じなのですが、ステアリングの径がステルヴィオよりも小さいように思えたので、その辺りでクイックなフィーリングを詰めているのかも知れませんね。ちなみに前輪駆動のハイブリッド・モデルにはLSDに似た働きをする電子制御式セルフロッキング・デフやトルクベクタリング機構が持たされていて、AWDモデルの電子制御とモーターの組み合わせが、そのマッチングのよさで常に4輪の適正なトラクションを作り出せるシステムであることは自明の理といえるでしょう。トナーレがステルヴィオに負けず劣らず、SUVなのにスポーツカー感覚で走れるパフォーマンスとフィーリングを持つSUVであることは簡単に想像がついちゃいますね。

トナーレにはもうひとつ無視できないトピックがあって、実はコネクティビティを相当重視したクルマになっているのです。アマゾン・アレクサのボイスサービスを内蔵していて、WiFi接続を通じて様々な情報をリアルタイムに引き出し、メーターナセルの中の12.3インチTFTスクリーンとダッシュボード中央の10.25インチのタッチスクリーン合わせて22.5インチのディスプレイに反映させることができるほか、グーグルのホームアシスタントと連携することで、自宅にいながら燃料の残りやタイヤの空気圧といったクルマの状態をチェックできたり、リモートでドアの開閉が行えたりするのです。ナビなどのアプリの更新も自動的に行われるし、セキュア・デリバー・サービスを利用してトナーレの車内に荷物を配達してもらうこともできるそうなのです。

そのうえ、自動車として世界初、NFT(非代替性トークン)テクノロジーが搭載されています。そのクルマが生産された段階から各種情報を修正不可能なかたちで記録していけるもので、ユーザーが同意すれば、ディーラーでのメンテナンス記録などを蓄積し、証明書を発行することもできるそうです。その記録があればクルマを売却するときの信頼性が高まって、残存価値も高くなることでしょう。次のアルファロメオに乗り換えるときなんて、きっとめちゃめちゃ有利に働くんじゃないでしょうか? 

いや、他にも主要コンポーネントの保証期間が5年に延長されるなどトピックはたくさんあるんですが、とてもじゃないけど書き切れないので、今回はここまで。

「アルファロメオは官能的なクルマで、乗る人の五感を刺激します。電動化されても、それは変わりません」

4CやジュリアGTA / GTAmなどハイパフォーマンス・モデルを手掛けてきたエンジニア、ドメニコ・バニャスコの言葉です。今はその言葉を信じて、本国ではおそらく6月から、日本では本国での発売開始から半年程度とアナウンスされている発売の日を待ちましょう。

早く乗ってみたいぞー! 乗ってみたいぞー! 乗ってみたいぞー!

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