キャンピングカーブームのいま
早いもので、「コンちゃん」こと「ハイエースキャンパーアルトピア―ノ」がウチに来てから、もう1年の月日が過ぎた。当初の予定では、関東からカーフェリーに乗って北海道に行ったり、四国巡りをしたりと、様々な遠出を計画していたのだが…。
コロナ禍が長引き、第四波、第五波、第六派と緊急事態宣言や、蔓延防止等重点措置が度々発令される中、関係する各方面に対する配慮もあり、コンちゃんと一緒の長旅を控えてきた。第六波に突入する前、東北ツアーを実施したが、ここでは豪雪で知られる山形から新潟に抜けるルート選択であったため、2021年11月からウチに来たスバル「フォレスター」のシンシロちゃんにバトンタッチして出かけた。
そんな、コンちゃんとの1年間だったが、アルトピア―ノオーナーが楽しみにしている宿泊施設「アルトピア―ノ蓼科」に行ったり、筆者が町の交通施策などで関わっている福井県永平寺町やその周辺へ関東から2度往復もした。さらには、キャンプグッズなどを試したり試乗車の撮影をするために筆者が個人的に仕立てた、千葉県内の「キョンちゃんスタジオ」でコンちゃんとぬかるんだ道で悪戦苦闘するなど、いろいろな思い出がある。
そうした中で、コンちゃんが最も活躍したのが、リモートワーク用のオフィスとしてだ。自動車メーカーなどの新車発表に伴う記者会見や、国や地方自治体が行う会議などで、
コンちゃん車内をWEBスタジオとして参加した。
また、NHK総合テレビ、民放テレビ、民放ラジオ、WEB専用放送など各種番組への対応で、BEV(電気自動車)、小型モビリティ、コネクテッドなどを利用した交通施策、電動くるまいす、電動キックボードなどを題材としたゲスト解説やインタビューの際にも、移動先のコンちゃん車内から出演する機会が度々あった。
リモートワーク用のオフィスとしては、車載バッテリーが組み込まれており、出力方法もコンセントやUSBポートが複数あるため、各種の電気機器のバッテリー残量を気にせず、オンラインでの取材対応や、執筆活動に専念できた。
コロナ禍となり、一気にブームとなったキャンピングカーだが、キャンプに出かけるというレジャー目的は当然ながら、コンちゃんのように内装の改良を量産車に近いかたちに抑えた、いわゆる「ライトキャンパー」については、筆者のようなリモートワーク用として注目が集まっている。
トヨタのほかにも、2月に本連載でご紹介した「キャラバン」を活用した「マイル―ムコンセプト」に加えて、日産は新たに「NV200」を使った大手オフィス家具メーカーとコラボしたリモートオフィスカー「ムーウ」を発表。こちらは2022年中に日産正規新車販売店で発売するという。
ハイエースに乗るということ
こうして「コンちゃんと一緒」の生活をする上で、改めて感じているのが「ハイエース」の基本的な扱い方の認識だ。ハイエースは、基本は商用車であるため、一般ユーザーにとっては町中ではよく見かけるが、実際に運転したことがある人が意外と少ないのではないだろうか。
この1年の間、様々なキャンピングカー展示販売会に顔を出したが、キャンピングカー初購入の人の多くが、ハイエース初体験ユーザーであり、展示車の運転席に座ってみて「けっこう、高いところに座っているんだな」とか「けっこう、クルマのうしろ(最後部)が遠く見えるな」といった感想を漏らしている人が少なくない。
こうした感覚は、ハイエースをミニバンと同列化して見ている人が多いということだ。筆者も若い頃から様々なシチュエーションでハイエースを自ら運転してきたが、これだけ長期間に渡りハイエースを使用するのは、コンちゃんが初めてだ。そうした中で感じる、ハイエースの扱い方の基本がいくつかある。一番気にしているのは、ブレーキを踏むタイミングだ。
仕事柄、日常的に様々なクルマを乗るが、コンちゃんに乗り換えた直後は、ブレーキを踏むタイミングを”半呼吸”早めるようにしている。また、交差点に青信号で近づいている時には、交差する道路側の歩行者用信号の状態を見ながら、こちらの信号が黄色に変わるタイミングを早めに察知することを心がけて、早めにブレーキを踏むようにしている。
ハイエースはあくまでも商用車であるので、ボディ寸法ではハイエースより大きなアルファードなどの大型ミニバンに比べて、ブレーキに対して丁寧な配慮が必要だ。
次に気にしているのが、後退する時の、クルマ止めからの距離だ。リアタイヤから車体最後部までの長さをリアオーバーハングと呼ぶが、ハイエースは大型ミニバンに比べてリアオーバーハングが大きい。そのため、いつものクルマのつもりでクルマ止めでタイヤが止まるまで後退すれば良い、と思っていると、隣のスペースに駐車しているクルマや、壁やフェンスに接触する危険性がある。多くの駐車場が、ハイエースなどリアオーバーハングが大きいクルマへ配慮した設計をしているのだが、道の駅などで、クルマ止めから後ろの壁までの距離がかなり近い場所に、これまで何度が遭遇している。
ハイエースやキャラバンなどの商用車で、リアハッチをぶつけた痕跡があるクルマを見かけることがたまにあるが、ハイエースでの後退時は細心の注意をお願いしたい。
また、夏場での冷房についてもひと言。コンちゃんにはハイエース純正の後部用冷暖房機器を装備しているが、夏場の運転では前後エアコンを同時にかけることが必須だ。夏場になって最初の頃は、前席エアコンだけで走行していたが、さすがに車内が暑過ぎることに気が付いた。車内後部が温室となってしまうのだ。
そのほか、キャンパーとして使うのであれば、はやりタイヤは商用車向けのLT(ライトトラック)タイヤより、複数のメーカーから発売されているハイエースを乗用として使うためのタイヤへの交換がお勧めだ。
コンちゃんは、これまでご紹介しているようにYOKOHAMAの PARADA PA03でインチアップしている。こうしたタイヤとホイール交換によって、ハイエースの基本的なサス構造に起因するクルマ全体が跳ねる症状を完全に消すことは無理でも、乗り心地とハンドリングは圧倒的に改善する。タイヤをノーマルから交換して7000kmを越えたがタイヤのパフォーマンスは装着初期から大きく変わっていない印象だ。
さて、「コンちゃんと一緒」は、コンちゃんの新車1年点検を経て2シーズン目に突入した。これからもコロナ禍の状況を十分に考慮しながら、様々なことにチャレンジしていきたいと思う。そのために、新たなる相棒として、電動キックボードが加わった。
コンちゃんの架装を手掛けた、トヨタモビリティ神奈川などを展開するKTグループ傘下のジェームス相模原店で、FUGU(定価5万4780円)を購入。コンちゃんに載せて、山間部などに連れ出している。
なお、電動キックボードについては、2022年4月後半に道路交通法が改正され、新たに設定された「特定小型原動機付き自転車」と認められる車両については、16歳以上であれば免許不要、ヘルメット着用な任意、自賠責保険の加入義務あり、走行条件によって歩道走行可能といった内容になる。2024年5月には施行するとしているが、現時点では電動キックボードは、通常の原動付き自転車と同じ扱いだ。
新しい仲間が増えたコンちゃん。さて、次回はどこに出没しようか?
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。