
小さくとも本格的なスーパーカー
オートザムAZ-1は1992年に登場したマツダの軽スポーツカーで、1989年の東京モーターショーに展示されたコンセプトカー、AZ550を量産化したものだ。AZ550にはA/B/Cの3タイプがあったが、Aタイプをベースにしている。鋼管鋼板混成スペースフレームにFRP製ボディパネルをボルトオンした軽量な車体のミドにスズキ製660cc3気筒DOHCターボエンジン(F6A)を横置きしており、国産車では唯一、ルーフのヒンジで真上に開く本式のガルウィング・ドアを持つ。
【画像38点】ドア開閉を可能にしたAZ-1の全貌とその制作工程はコチラ!
マツダスピードAZ-1は、オートザムAZ-1にマツダスピード製のエアロパーツを装着した特別仕様車で、ポップアップ状態で固定のヘッドライトに合わせたフロントフードとフロントバンパー、リアウィング、それに2本出しマフラーが標準車と異なっている。ボディカラーは標準車と同じソリッドのレッドとブルーの他に、ブラックとシルバーが専用色として設定される。コンプリートカーとして販売されたものは前後バンパーとサイドシルもボディ同色だが、標準車に後からマツダスピードの部品を取り付けた個体もあり、標準車と同じ2トーンカラーの現存車も散見される。
ガルウィングを手軽に開閉可能に!
バブル期の軽スポーツカーの中で唯一、現役当時にプラモ化されなかったAZ-1だが、2010年にようやくアオシマから1/24スケール・キット化された。バリエーション展開に長けたアオシマらしく、標準車以外にこのマツダスピード仕様やM2・1015もキット化されている。適度な精密さと作りやすさを高次元で両立させた好キットだが、実車最大の特徴ガルウィング・ドアは残念ながら開閉しない。ドアがグラスルーフに大きく回り込んだ構造ゆえ、プラ部品だけで強度を確保しつつスムーズに開閉させるのは困難、という設計陣の判断だろう。
この作例では、お手軽にガルウィングを開閉両状態に出来るよう考えてみた。キットはグリーンハウスの前半分が一体の透明パーツになっているので、スジ彫り用工具でドアラインを彫り込んで切断。ドアを切り取る際にAピラーの根元ごと切ってしまうと、後の養生が大変なので、ピラーの根元を残してドアだけを切り出している。開口部のフランジ形状は、プラ棒・プラ板・ポリパテの混成でスクラッチした。ドアヒンジは出来るだけ簡単な方式にするべく、ドアにプラ板で足をつけ、ルーフ側に穴を開けるだけにしている。それだけでは開状態で自立しないので、ガスダンパーが伸びた状態の部品を金属線とプラ板で自作し、ヒンジと3点で支えるようにしてみた。
- ウィンドウ(ルーフと左右ドアの上半分が一体)から、ドアを切り離す。スジ彫りを0.2mmのBMCタガネで彫り込んでいくだけで、簡単に切り離せる。
- この時点ではルーフとウィンドシールドは切り離さないつもりだったが、後で別体化した。
- ドアも同様の方法でボディから切り離す。
- ドア前端パネルラインをそのままスカットル方向に切り込むと、Aピラー根元が無くなるので、ドアの厚みの部分に横向きにレザーソーを入れ、パネルラインとぶつかる所まで切り込んだ。
- 切り離し完了。
- Aピラー根元の裏を光硬化パテで補強しておく。
- そのままだとウィンドシールドとAピラーの間に隙間が出来るので、ピラー前側に光硬化パテを盛って太らせた。
- ドア開口部の縁周りは、下端に2mmプラ角棒を接着。0.3mmプラ板とポリパテで、ドアの厚み分引っ込んだフランジを増設した。
- 裏から見たところ。
- 内側にプラ板を貼って、ドア開口部の形状を切り取る。
- インテリア側面からドアトリム相当部分を切り取り、残った側はフロアに接着。
- ボディとインテリアのドア開口部が一致するよう、双方を削り合わせる。
- 左ドア下にはポケット状の凹みがあるので、外側から削り取りプラ板を貼って穴を塞ぐ。
- ボディ・ガラス・シャシー・インテリアを仮組みしつつ、ドアガラスとドアパネルを接着する。
- ドアトリムの裏に2mmプラ棒を入れてドアから浮かせて接着し、周囲の隙間をポリパテで埋める。
- 天井部分に四角い穴を開けた。ここにドアヒンジが刺さるという仕組み。ルーフ(透明パーツ)を接着、小さな4つ孔はドアダンパーを立てるために開けたもの。
- ドア上部に1mmプラ板を貼って、簡単なヒンジとした。接着箇所がドアサッシに隠れるようにしておけば、完成後も白いプラは目立たない。
- ヒンジが天井の穴に刺さった状態。ドアを閉じた状態では、ヒンジがルーフの下に入り込む。
- Bピラーを0.5mmプラ板で増設。この状態だと3面一体のリアウィンドウは嵌められないので、Cピラーのあたりで3面を切り離した。ドアシル部の細かい造作もプラ棒で追加。