モデルカーズ

あの日本の名車にも影響を与えた美ボディ!「1953年型スチュードベーカー・スターライナー」のAMT製プラモ【モデルカーズ】

世界の自動車史に名を残す美しきハードトップ

アメリカの自動車業界にはかつて、所謂ビッグ3(GM、フォード、クライスラー)以外のメーカーが林立しており、それらをインディペンデント(独立系)と呼んだ。そのひとつであるスチュードベーカーは、1937年から著名な工業デザイナー、レイモンド・ローウィのスタジオと契約を結び、そのデザインにより垢抜けたイメージを維持してきた。第二次大戦後は1947年型でいち早く戦後型を登場させたが、どちらが前でどちらが後なのか、見る者を混乱させるようなキャビン形状で話題を呼んだ。

【画像21枚】麗しきスチュードベーカーの全貌はコチラ!

1950年型ではこのボディのフロントノーズに弾丸のような形状を与え再び注目を集めたが、完全なモデルチェンジで登場した1953年型では、低く、スリークなボディで再び見る者の度肝を抜いた。実際のところはすでにローウィ自身がデザインを行うことはなく、その配下のロバート・バーク、そしてローウィの元を離れこの時はスチュードベーカーにいたヴァージル・エクスナーが、そのデザイン作業の大部分を担ったという。エクスナーは1953年型デビュー時にはすでにクライスラーへ移っており、4年後に同社の”フォワード・ルック”で一世を風靡するが、そういえば1961年型ダッジ・ランサーには、このスチュードベーカーに似たディテールが見られる。

それはさておき、1953年型スチュードベーカーはハードトップ/クーペだけでなくセダンも基本的には同じ形(すこし縦方向に分厚い)で、ラインナップは6気筒のチャンピオンと8気筒のコマンダーに分かれる。ランドクルーザーという名称のモデルもあったが、これはセダン限定の高級モデルだ。直6エンジンは169.6-cid(2.8L)で出力85hp、V8エンジンは232-cid(3.8L)で120hpであった。

チャンピオンのシリーズは廉価版のカスタム/中級のデラックス/上級のリーガルで構成されており、コマンダーにはカスタムがなくデラックス/リーガルの2種。2ドア・ハードトップはチャンピオン/コマンダーともに上級モデルのリーガルのみに限定されたボディであったが、センターピラーのあるクーペはデラックスにも設定されていた。ハードトップ・ボディにはスターライナー・ハードトップという名称が与えられており、一方クーペはスターライト・クーペと呼ばれる。

その美しさは意外なところにも影響を及ぼして、マツダがコスモスポーツを開発した際には、シトロエンDS19とともにスチュードベーカーがデザインのインスピレーション元になったというエピソードもある。そんな美しいボディも年々装飾過剰となり、1955年型ではノーズ先端をクロームで覆うという暴挙に出たが、次の1956年型では大型グリルを、1957年型ではテールフィンを具えるに至った。ちなみにローウィは英国のルーツ・グループとも仕事をしており、1956年登場のヒルマン・ミンクスはこのスチュードベーカーによく似た形をしている。

ほんの少し手を加えて美しいデザインを際立たせる
1953年型スチュードベーカーは、同時代においてすでにクラシック(名作)との評価が確立していたようで、プラモデルの世界では1965年に、AMTから1/25スケール・キット化されている(No.2053)。再現されているのはV8搭載のコマンダー・リーガルで、当然「V8」エンブレムが付いている。その後1975年(T396)、1990年(6955)の再販があるが、作例は1990年のものを使用した。その後も折に触れ再販が続いており、最近では缶パッケージ入りのUSPSシリーズ版(1251)がリリースされている。

ボディは実車(スチュードベーカー・コマンダー・リーガル・スターライナー・ハードトップ。長い)のスリークなラインがよく再現されている。ただしフロントバンパーの位置がすこし高いのか、顔つきが実車と比べると微妙に異なるようでもある。フロントバンパー下のエプロンパネル開口部内の縦バーが省略されているので、作例はこれをプラ棒で追加。タイヤにはホワイトリボンがあらかじめ印刷されているが、あまり精度が良くないので一度シンナーで拭き取り、タミヤアクリルのホワイトでサイドウォールを塗り分けた。

ボディカラーは、あいにく実車カラーチップなどの資料が不足していたため、当時のカタログなどを集めた洋書を元にした。基本色ペイルグリーンはクレオスのC1ホワイトにC66デイトナグリーン、C5ブルー、C2ブラック(微量)で調合、ルーフのダークグリーンはC66デイトナグリーンをC2ブラックで濃くしたもの。この上にスーパークリアーⅡでオーバーコート、研ぎ出しして仕上げている。車高はキットのままだが、前後ホイールの軸受けの部分を若干削り、トレッドを少々狭めた。アバンティと同様にセンターアーム式のステアリング機構が再現されており、この作例でも焼き止めを行って組み立てている。

バスタブ状のインテリアは金型の抜けテーパーの角度が強く若干不自然ではあるが、オープンボディほど丸見えになるわけではないので、そのまま使用。よく観察すると内張りのパターンが実車と異なるように思われたので、モールドを一旦削り落とし、プラ板などで作り直した。レギュレーターアームやアームレストはジャンクパーツから加工して取り付け。インテリアはボディと同じペイルグリーンとC316ホワイトFS17875で塗り分け、C181スーパークリアー半光沢でツヤを落とした。ドアのロックノブはインセクトピンで追加している。

作例制作=周東光広/フォト=羽田 洋 modelcars vol.138より再構成のうえ転載

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