
再評価高まる水冷FRポルシェ
ポルシェの主力車種と言えば長らく911であるが、その代替を念頭に送り出されたモデルがあった。1977年に発表された928がそれである。これはやはり、空冷エンジンをリアに搭載したRR車という、スポーツカーとしてはある意味プリミティブな911が、今後も進化をし続けられるだろうかという懸念が生んだものと言えるだろう。928は、水冷エンジンをフロントに搭載したFRという、とてもオーソドックスな成り立ちであった。
【画像44枚】ポルシェのFRスポーツ、928のフォトギャラリーを見る
水冷・FRという点では、928に先立ちポルシェ924が1975年にデビューしている。924はそれまでの914に代わるエントリーモデルとして登場したモデルであるが、928の商品企画は924で作られた流れに連なるものといえるだろう。ボディ形状は924同様に丸みを帯びたハッチバッククーペだが、928ではさらに丸みの強い卵型を成していた。ボディ後半の形状にAMCペーサーにも通じるものがあるのは、北米市場を意識していたためだろうか。ヘッドライトはポップアップ式で、上下どちらの状態でもインパクトの強い表情であった。
搭載されるエンジンは4.5LのV型8気筒OHCで、最高出力は240ps。前述の通りこのエンジンをフロントに置くFRレイアウトを採るが、トランスミッションをデフ側に置くトランスアクスル方式であるのが特徴で、バッテリーも後方に置き重量配分の最適化を図っている。サスペンションはフロントがダブルウィッシュボーン、リアがセミトレーリングアームとなるが、このリアサスはバイザッハ・アクスルという独特なもの。これはトー・コントロールによる4WS的な機構で、コーナリング時の安定性向上を目的としたものだ。
1980年には、エンジンを4.7L(300ps)に拡大した928Sを追加。ボディ前後にスポイラーを装着しているのが特徴で、ホイールのデザインも変更されている。1987年の928S4では5Lエンジン(320ps)を搭載、フロントエプロンの形状をより丸みの強いものに変更。さらに928GTや928GTSなどへと進化を遂げつつ、928は1995年に販売を終了している。
ヘッドライトはポップアップしなきゃ!
さすがにスポーツカーの雄、ポルシェのフラッグシップモデルらしく、928はプラモデルの世界でも人気が高い。わが国でもグンゼ(現GSIクレオス)やフジミなどから1/24スケールでキット化されており、その他1/43から1/16まで様々なメーカーのものがあるが、ここでご覧頂いているのは、タミヤがかつてリリースしていた1/20スケールのものである。タミヤのこのスケールは「グランプリコレクション」と銘打ち、F1を筆頭に主にレーシングカーをラインナップしており、ポルシェ928はシリーズ唯一の市販車と言える。
当初は素の928として発売されたタミヤ製キットは、追って928Sへとリニューアルされており、以後は928Sとしてのみ再販が行われている。ここでご覧いただいている作品は2011年に再販された928Sを完成させたものだが、細部に若干手を加えてみた。タミヤ製キットは1/20スケールとしてはドアの開閉などギミックが皆無なのが少々さみしいのだが、作例ではヘッドライトを上下動可能とし、シートバックも前後に動かせるようにしている。また、ホイールの内側にはブレーキを追加。その他のディテールアップについても工程の写真を参考にして頂ければ幸いだ。
- リアスポイラーはキットでは一体だが実車は3分割なので、3つに切り分ける。
- 中央部分は実車同様リアゲートに接着しパテで一体化。左右は塗装後に付ける。
- 再販品らしくボンネット等にバリがある。金属平板に取り付けたペーパーで削る。
- ファイアウォールのパーツがまっ平らで平坦な出来なので、エバーグリーン0.4mm厚+2mm径丸棒でリブなどをそれらしく再現。カタログ写真を参考にした。
- 矢印で書き込んだ部分に分割線があるべきなのだが、そのモールドがないので、
- 0.2mmBMCタガネで彫り込んで追加。うす手の会員カードなどが定規代わりに使える。
- リアゲート、および左右ドアのキーホールは、1mm径のドリルで塗装前に開孔しておく。ボディを仕上げてから洋白線を埋め込んで仕上げている。
- ヘッドライトは上下選択の固定式だが可動式に改めてみた。左右のライトを連結するバーの部品B9(機能はしない)を1.5mm径洋白線に交換。
- 上げた状態でのライト基部A9とライト本体A8を接着し、A9のフロント側をすり合わせ、洋白線をゼリー状瞬接着で固定し連結。
- そしてプラ材(1.5mm厚)で支部を作り(右写真の斜線の部分)、これで押えるようにボディへ取り付け。
- ヘッドライトウォッシャーのモールドはクリアコート後の研ぎ出しの妨げとなり、モールドそのものもリアルでないので、まずマジックで囲んでおいてからカット。
- 0.6mmドリルで開孔しておく。これも後で洋白線を埋め込む。
- 側面窓を取り付けず、開けた状態に改めてみた。窓パーツの厚み+αでボディとドアトリムの間が相当開いてしまうので、ドアトリムをシャシー側に取り付けるよう変更。シャシーに1mm厚エバーグリーンでガイドを接着(斜線部)。
- トリムの上端には1mm角材を2本重ね貼り。下端とサイドシルのステップには1×2.5mmを貼る。
- ダッシュ両端にも1mm厚プラ材を貼る。ついでにグローブボックス取っ手、シフトレバー手前のスイッチ、中央のカセットテープラック兼アームレストなどもプラ材を重ねて作った。
- シートのリクライニング機構を自作。エバーグリーン1mm厚で支具を作り、1.5mm径の洋白線と組み合わせる。
- シート座面側、支具を挟み込むように削って取り付け。これにより、窓から指を入れてシートバックを動かすことが可能となった。
- 実車のルームミラーはフロント窓への接着式。キットは天井への取り付けなので、ボディ側のガイドを切除した。
- モーターライズの名残の穴をエバーグリーンでふさぐ。
- 下地塗装にフィニッシャーズカラー・ファンデーションクリームを使用。
- 本塗装にはガイアカラー#122スターブライトゴールド+#121スターブライトシ ルバーを1:1で混ぜたものを使用。
- 細部の塗分けには、凹凸を明確にさせるため、メタルックをマスキングテープ代わりに使用。
- 同じく。