1994年デビューの初代以来、アウディの技術的ショーケースとしての役割を担ってきたフラッグシップのA8。今回のフェイスリフトモデルでは最新のデザイン言語をはじめ、先進のテクノロジーとインテリジェントな機能の採用による、全面的なアップデートが施されていた。
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未来へとつなぐセットアッパー
アウディの電動化戦略「Vorsprung2030」によると、2026年以降に投入する新型車はすべて電気自動車に、2033年を最終期限に内燃エンジンの生産を段階的に終了するという。もしかすると、これが最後の内燃エンジンを搭載したA8になるのか、そんな思いを巡らせながら新型モデルと対峙した。
この第4世代のA8の国内導入が始まったのは2018年のこと。量産車初のレベル3の自動運転機能を搭載することで話題になったが、法整備の課題もあり残念ながら日本仕様には設定されていなかった。あれから4年、今回のフェイスリフトでもその点には触れられていない。本当の意味でのレベル3の実現は、クルマ単体の話ではなく、周囲のモビリティや交通環境など社会との協調制御が不可欠なため、いちメーカーの努力でなんとかなるというものでもないだろう。
いずれにせよ、このA8にはアダプティブドライブアシスタントやアウディプレセンス360といった限りなくレベル3に近いレベル2機能が搭載されており、高速道路の渋滞時にはとても重宝した。
エンジンは、3L V6または4L V8にツインスクロールターボを組み合わせたものだが、さらに48V電源システムとマイルドハイブリッド(MHEV)を搭載。このMHEVシステムはベルト駆動式オルタネータースターター(BAS)を用いており、減速時には最大12kWの回生エネルギーをリチウムイオンバッテリーに送り込み発進時などのサポートに用いる。トランスミッションはともに8速ティプトロニックだ。試乗車は最高出力460ps、最大トルク660Nmを発揮する後者だった。
そっとアクセルに力を込めると驚くほど滑らかに走りだす。走行モードをエフィシェンシーにして、すっとアクセルペダルから足をはなすとエンジンを完全停止してコースティングしてくれる。ものは試しにダイナミックモードを選んでみる。V8が獰猛な音を奏でるといったような演出はない。そこはA8らしくジェントルなふるまいをみせる。高速コーナーでは適度に引き締められた電子制御サスペンションによってしなやかにロールする。ボディパネルやフレーム部分にはアルミニウムを、キャビンには熱間成型スチールとカーボンのパネルを採用するハイブリッドボディは実に剛性感高く、首都高速の目地段差による大きめの入力をトントンと小気味良く収束させる。高速を下りて、一般道を走りながらこの運転感覚は何かに似ていると感じていた。