
ハイライフを訴求した白いクラウン!
今、ニューモデルが発表されて大いに話題になっているトヨタ・クラウン。1955年にデビューした初代、1962年登場の2代目と、当初のクラウンはどちらかと言えば運転手に運転させるクルマ(ショーファー・ドリブン)であった。それはもちろん、当時の日本におけるモータリゼーションの発展具合を示したものであろう。この傾向に一石を投じたのが、1967年に発売された3代目・S50型系であった。
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3代目クラウンを語るときに必ず引き合いに出されるのが、当時の宣伝における「白いクラウン」というキャッチコピーだ。これは単にボディカラーのイメージ転換を図ったというだけでなく、「黒=運転手付きの高級車」ではない、という意味が込められたものである。また、広告では「ハイライフ」という単語も印象的に使用されていた。この路線はやがて、1980年代におけるハイソカーとしてのクラウンでさらに花開くことになる。この3代目が、その基礎となるものを作ったと言ってよいだろう。
S50型は、ルックス的には先代のオーソドックスなボディラインを引き継ぐもので、わずかにポップアップしたウェストラインなどに、さらなる豊かさの表現が込められていた。グリルより若干上に飛び出したヘッドライトが特徴の顔つきは、フォード・タウナスなどの影響であろうか。フレームは先代のX字型からペリメーター式に変更、このあたりは同時代のアメリカ車に倣ったものだが、ペリメーターフレームは以後長くクラウンの伝統として継承されることとなる。搭載されるエンジンは2Lのみ、直4 OHVの5R型と直6 OHCのM型。もちろん後者が上級モデル用だ。
この3代目クラウンに2ドア・ハードトップが加わったのは、モデルチェンジ翌年の1968年のこと。キャビンは小さく、リアピラーからリアデッキにかけては美しい曲線を描き、ヘッドライトは角型2灯となる。これらの特徴からは当時のオペル・レコルトCのクーペに似た雰囲気が感じられるが、アメリカ車の雰囲気を盛り込みつつボディサイズは小さいクルマということで、商品企画の参考とされたのかもしれない。当時の日本の自動車業界では、実際に「オペルを参考にすべし」という意見があった。
それはともかく、国産高級車としては初めての2ドア車、パーソナルカーということで、このハードトップの登場が、オーナードライバー向けのクラウンという方向性を、一層強固なものとしたのである。この1年後にはマイナーチェンジを実施して後期型へと移行したので、前期型の2ドア車は今では希少な存在のようだ。この後期型では、4ドア・セダンの上級グレードから三角窓が廃止されている。そしてその2年後、モデルチェンジで登場したのが”クジラ”ことS60/70型系であった。
最低限のモディファイでキットの素性の良さを輝かせる
このS50型系クラウン、プラモ化はあるのかと探ってみると、きちんとしたスケールモデルとしては往年のオオタキ1/20、2ドア・ハードトップSLが唯一のもののようだ。今まで模型誌でその内容がきちんと紹介されたことはあまり無かったようだが、ここでご覧頂いているのは、そのオオタキ製キットを組み立てたものである(正確には組み立て済み品のリビルド)。細部には作者・坂中氏らしい修正が施されているが、それも最低限度のものにとどめている。
ボディは幅が実寸より7mmほど広いが、実車のラインをなかなか上手く捉えたものと言えるだろう。また、サイドウィンドウの形状があまり自然ではないようだが、これについては修正を加えた。ボンネット、ドア、そしてトランクが開閉可能となっているが、トランク内の再現はなく、ここはモーター走行システム用の電池ボックスとなっている。インテリアやエンジンへの追加工作も控えめなものとしているので、伝説の(?)キットの全容をしっかりご確認頂きたい。
- かなり幅広だが雰囲気はよいボディ。
- クラウンならではの飾り鉄ホイールが良好なモールドでパーツ化されている。
- フェンダーミラーは欠品のため自作したもの。
- 「SL」のエンブレムをなぜかモールドし忘れているフロントグリルは、基本はそのままに、面持ちに大きく影響する灯火類を作り直している。
- リアのサイドマーカーやアンテナもプラ材で自作。
- 三角窓のフレームはプラ板で作り直した。
- 後輪の前にあるエンブレムはキットのモールド。
- 伸びやかなサイドビュー。
- 往年の1/20スケール・モデルらしくフル開閉だ。
- トランク内は電池ボックスになっている。
- エンジンは組み立て済みのパーツをバラさずに再塗装した。
- ディテールアップはイグニッションコイルとプラグコードを追加したのみだ。
- エンジンルームもタイヤハウスの穴を塞いだだけで、ラジエターホースはキットのもの。
- ボディに合わせて幅広くアレンジされているので、メーターが離れて配置されているダッシュボード。
- 形は大げさに誇張されているが、当時のトヨタ車らしい雰囲気のシート。
- クラウンらしく余裕のあるリアシート。
- ATでキット化されているが、ペダルは3本モールドされている(実車のサイドブレーキは足踏み式ではなくステッキ式)。
- ステアリングホイールは径を大きく作り直した。
- 後席の内張もきちんとパーツ化されている。
- 雰囲気充分なドア内張り。
- シャシー裏面にはペリメーターフレームらしきモールドも入るが、再現というほどのものではない。
- 実車のテールランプはもうすこし逆台形だ。
- 存在は知られているものの内容についてはあまり語られないキット。
- 作者が入手したのは組み立て済みのもの(ジャンク扱い)。
- レザートップを模してルーフが黒く塗られている。
- ドアの上半分など、ボディの一部が黒く塗られているのは、警備会社仕様にでもしたかったのだろうか。
- ダッシュボードが幅広く、ステアリングホイールが小径。
- ボディ自体が幅広。
- テールが寄り目になっていて初代カマロのような雰囲気もあるリアビュー。
- 慎重に解体。当時モノの接着剤は意外と剥がしやすい場合がある。
- タッパー内でMr.カラーうすめ液を適量浸したティッシュで包み、塗装を剥がす。
- ルーフの黒塗装は400番ペーパーで削った。
- メッキ部品もインパネ以外剥離。ヘッドライト周りが尖りすぎているので、マーキングしてヤスリで整形する。
- 欠品していたスモールライト・ウインカーをプラ材で積層スクラッチ、透明レジンで複製した。
- ヘッドライトも同様に原型を起こす。透明プラ板にカッターで目を刻んで裏に貼った。
- ライト内側の反射鏡はくり貫き、積層したプラ板で自作。リューターで削り、中心に洋白線でバルブ表現。
- オーバーライダーも欠品していたので自作した。
- フェンダーミラーも自作。本体中央の二本線を表現するため、ミラー本体を上下に分割して作っている。
- 二本線は0.2mm透明プラ板、その間に0.3mmプラ板を挟んだ。
- 鏡面の枠部分を1.5mmエバーグリーンのプラ帯で表現。写真のようにくり貫いてからミラーを接着、
- 切り取り、形を整えて出来上がり。
- 形に違和感のあるリアクウォーター・ウィンドウ周りの修正。自然な形に削り拡げるが、削り過ぎないよう注意する。
- 元のモールの厚み分を、なだらかに降りるラインとなるように削った。緩やかなプレスはリューターで慎重に削り込んで表現。
- ドアのモールも一旦削り取り、
- 改めてプラ材で貼り直す。三角窓はプラ板で新造した。
- フロントエプロンのシャシー引っ掛け部は、必要なスペースを残して埋める。
- タイヤハウスの穴もプラ板で埋める。
- フィニッシャーズのアイボリーホワイトで塗装。
- 黒塗装の室内パーツは、写真での見映えを考慮して、グレー寄りのMr.カラーC137タイヤブラックを吹くことにしている。
- メッキ部分は黒塗装し、スパッツスティクスで。
- エンジンはしっかり接着してあったので無理にバラさず筆で塗り分けた。
- リフレクターとウィンカーのオレンジの色味は意識的に変えてある。ガイアカラーのクリアーイエローの重ね塗りで、旧車のアンバー色が表現可能。
- ハンドル径が小さいので、ハンダでひとまわり大きく造り、元のスポークとゼリー状瞬着で組み合わせた。
- 「白いクラウン」がなぜ人気を博したか、模型からもよく分かる気がする。