メルセデス・ベンツ初のEV専用プラットフォームを採用した次世代のラグジャリー電気自動車「EQS」がいよいよ国内に上陸。700kmという航続距離をはじめ、優れた空力性能、外部給電器として利用可能といったトピックは数知れず。果たしてその走りはいかに!?
【写真10枚】EVになっても乗り味は紛うことなきメルセデスそのもの、EQSの詳細を写真で見る
いい意味で想定外のメルセデスのフラッグシップEV
“ワンボウ・デザイン”。フロントからルーフ、そしてリアエンドまでが1本のラインで弓のようにしなやかな曲線を描くことからそう呼ばれる。正直に言えば画像を見ている限りでは空力は良さそうだけれど、少しのっぺりしていて退屈だなと感じていた。実際のところCd値は0.20と量産車としては類を見ない空力性能の高さで、それが一充電あたり700kmという長い航続距離に貢献している。そして、初めて対面した実車はしっかりと抑揚がきいていて意外とカッコよくて驚いた。またメルセデス初のBEV専用のプラットフォーム(EVA2)を採用するだけあって、前後のオーバーハングを切り詰めたキャブフォワードなスタイリングで、従来のメルセデスとは違う新しさも感じられる。
同時に発表されたEQEとの違いに少しだけ触れると、プラットフォームは共通のもの。ボディサイズは、全長+270mm、全幅+20mm、全高+25mm、ホイールベース+90mmと、EQSがひとまわり大きいことがわかる。そして両者の最大の違いは、EQEは独立したトランクスペースをもつ3ボックスタイプなのに対して、EQSはリアにハッチゲートを備えている点だ。EQSは3210mmという長いホイールベースを活かし、よりスタイリッシュなスタイルと、ゆとりのある後席の居住空間を両立させている。
インテリアで目をひくのが、「MBUXハイパースクリーン」。ダッシュボード全体が1枚の強化ガラスで覆われたワイドスクリーンだ。インフォテインメントやADASの操作系はステアリングに、スタート&ストップボタン、指紋認証、ハザード、走行モード切り替えなどの物理スイッチは肘置きの手前に集約されている。基本的な操作方法はSクラスやCクラスと同じなので、慣れてしまえばとても使いやすい。
試乗車のEQS450+は、フロア下に容量107.8kWhの新世代バッテリーを配置し、モーターと補機類を組み合わせた電動パワートレイン「eATS」をリアに搭載する後輪駆動モデル。車検証を確認したところ前後重量配分は47:53とフロントまわりが少し軽くなっている。モーターは0回転から568Nmを発揮するものでチューニングが重要だが、走り出してみると、アクセルペダルへの入力に対して過敏に反応することなく、少しタメをもたせたようなメルセデスの内燃エンジンモデルと似たふるまいをみせる。ステアリング操作に対するノーズの動きはもちろん正確だけれどもとても軽快。リアアクスルステアリングを標準装備しているから取り回しもいい。そしてエアサスペンションによってしなやかに路面をトレースしていく。
回生のレベルはパドルシフトを使って任意に調整することも可能だが、基本的にはオートにしておくのがいい。前走車との距離をセンシングするなどして自動で調整してくれる。EQSの静粛性は、既存のBEVの中でも高く特筆すべきものだが、ユニークなのは起動音や人工的なエンジン音や回生音を選べること。おそらくサウンドクリエーターによってデザインされた音だと思うが、イメージの異なる3種類が用意されていた。スポーツモードで走行する際には楽しい演出だ。
その名からSクラスを代替するBEVを想像していたがいい意味で裏切られた。2ボックスのスタイリングや軽快な乗り味、サウンドエクペリエンスといったギミックなど、EQSはもっと若々しいカジュアルな雰囲気をまとっている。メルセデスEQとしては初となるV2H(Vehicle to Home)機能が搭載されたのも朗報だ。それでいて、乗り味は紛うことなきメルセデスなのだから、さすがというほかない。
【Specification】メルセデス・ベンツ EQS 450+
■全長×全幅×全高=5225×1925×1520mm
■ホイールベース=3210mm
■トレッド=1645/1660mm
■車両重量=2530kg
■モーター種類=永久磁石シンクロナスモーター(PSM)
■最高出力=333ps(245kW)
■最大トルク=568Nm(57.9kg-m)
■バッテリー容量=107.8kWh
■最大航続距離(WLTC)=700km
■トランスミッション=1速
■サスペンション(F:R)=4リンク/エア:5リンク/エア
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F&R)=265/40R21
■車両本体価格(税込)=15,780,000円