全米ベストセラーピックアップのBEV版に乗る
アメリカ市場における2021年のBEV販売台数は43万台で、これは市場全体の4%程度。ただし、2022年の1〜4月は13万3000台と、前年同期の2倍に迫る勢いをみせている。問題はその内訳で、およそ70%がテスラと輸入車が占め、自国車は伸び悩んでいるのが現状だ。そんな中で起爆剤として期待されているのがフォードF150ライトニング。いうまでもなく、全米ベストセラーピックアップのBEV版である。
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今回試乗したのは、6機種あるうち上から2番目のグレードとなるプラチナムで、オプションはフル装備。価格はなんと9万3609ドル、現時点での為替レートでは1300万円! となる。
長さが5.9m、幅と高さがそれぞれ2mのスリーサイズは標準のF150と同一だが、搭載する電池によって車重は3.1トン超。エクステリアは大きく違わず、フロントのダミーグリル周囲にコの字型のLEDライトが取り囲む程度だ。インテリアはドライバーの正面に10インチのモニター、そしてダッシュボードの中央にはテスラ風の15.5インチの縦型タッチスクリーンがレイアウトされる。
パワートレインは2種類が用意され、スタンダードはシステム出力458ps、ロングレンジは同589psの電気モーターを前後アクスルに搭載。前者は386km、後者は515kmの航続距離が確保される。なお、テスト車のロングレンジには131kWhのパウチ式リウムイオン電池を搭載。充電は150kWの急速充電で15〜80%までを41分で完了、自宅のウォールボックス(10kW)では同レベルまで約8時間が必要だった。
走りは間違いなくパワフルで、スタート時に4輪がスリップすることなく同時に路面を蹴り出す感覚はダイナミックで頼もしい。ハイウェイではヘビー級にも関わらずグングンと加速し、法定速度の75マイル(約120km/h)まではハーフスロットルで瞬時に達する。ただし、空力的な改善をしていないボディ各所からの風切り音は盛大で、せっかくの静粛なモータードライブは望むべくもない。
ひと言でいえば、F150ライトニングはICEモデルをやや強引にBEV化したモデルで、操作系などはほぼそのままに、鋭い加速や低重心による安定した走りや快適な乗り心地がウリ。もっともそれが従来ユーザーには分かりやすく、それこそフォードの狙いなのかも知れないが、はたして……。
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