下がり尻の後ろ姿がひときわ印象的
この記事の公開日は2023年6月1日。今から31年前の今日――すなわち1992年6月1日に発売された名車をご存じであろうか? 日産の高級パーソナル・セダン、レパードJ.フェリーである。
【画像17枚】バランスド・アーチが特徴的な姿や上質なインテリアなどを見る!
レパードJ.フェリーはレパードの三代目モデルとして登場した。4ドア・セダンであることが驚きをもって迎えられたが、二代目レパード(1986年)こそ2ドア・クーペ専用であったものの、初代レパード(1980年)には4ドア・ハードトップが設定されていただけに、4ドアのスペシャリティカーというのも意外な存在であったわけではない。もっとも、三代目レパードをデビューさせる予定はなかったものの、事情により急遽、北米仕様専用車種のはずであったインフィニティJ30をレパードとして仕立てたものだとも言われている。「J.フェリー」という名は、フランス語で休日を意味する「Jour ferie」という言葉をシグネチャー感覚でアレンジしたもの、と説明されていた。
その特徴は何と言っても、丸みを帯びた全体のフォルム、下降するリアエンドだが、これについて日産は、「エレガントなスタイル」「バランスとハーモナイズを表現したエレガントでシンプルなエクステリアデザイン」と表現。特に、「フードからトランクリッドにかけての緩やかなアーチラインと、キャビン部のルーフとドアカットのラインを調和させた『バランスド・アーチ・デザイン』」が最大のキーワードだ。このスタイリングは、カリフォルニアのNDI(日産デザイン・インターナショナル)が担当したものである。
インテリアは、「『やわらかさ、あたたかさ』をテーマに高級車にふさわしい、質感の高いインテリア」「解放感と包まれ感がバランスした室内空間」と表現。ウォールナットの本木目や、イタリアのポルトローナ・フラウ製の本革内装を採用する(オプション)などといった点に、そうしたテーマが集約されているようだ。
走行性能については「しなやかで気持ちの良い走り」を実現すべく、V6 3LツインカムのVG30DE(200ps)と、V8 4.1LのVH41DE(270ps)を搭載。後者は、北米仕様J30には設定されないものである。ミッションは全車、フルレンジ電子制御4速ATで、MTの設定はなし。サスペンションはフロントがストラット、リアがマルチリンクで、最高モデル(4.1Lエンジン搭載)のタイプXにはSUPER HICASが組み合わされていた。これらの特徴から分かるように、J.フェリーはプラットフォームをY32型系セドリック/グロリアおよびシーマと共用している(型式はJY32となる)。
高い安全性もセールスポイントで、大容量4輪ベンチレーテッドディスク・ブレーキやABSを採用したほか、この頃はまだ珍しかったフロントシート左右両席エアバッグを標準装備(タイプF除く)するなどの配慮がされていた。グレード構成は4.1Lエンジン搭載の最高モデルであるタイプXを筆頭に、3LエンジンのタイプL、エアバッグやマルチリモートエントリーシステムなどを省いたタイプFの3種で構成。当時の希望小売価格はタイプXが469万円、タイプLが386万円、タイプFが358万円であった。
ジャガー風、それとも往年のアメリカ車イメージ?
レパードJ.フェリーは前述の通り「エレガンス」や「上品」をテーマとしたもので、それに沿って乗り味もチューニングされており、それだけでなくインテリアにおける各スイッチの操作感などにもひと工夫されていたという。その気品あふれる仕上がりには一部から絶賛の声もあったのだが、やはり特異なスタイリングが災いしたのかセールスは芳しくなかった。それでも次の四代目レパードが登場するまで、5年に及ぶモデルライフを全うしている。独自のテイストにはファンも多く、絶版車となってからは秘かに人気が再燃して専門店がオープンするほどであったが、現在ではかなりの希少車となっているようだ。
このクルマが何をイメージしたものか、日本ではその後ろ姿や乗り味からジャガー、具体的にはマークⅡを引き合いに出して語られることが多かったようだ。生まれ故郷のアメリカにおいては、その優美なスタイルは1940~1950年代初め、つまりテールフィンが広まるより前の時代のアメリカ車を思わせるものとして人気が高かったそうである。当時のパッカードやハドソンといったクルマの姿を知れば、なるほどと思うものがあるだろう。