企画の原点はスポーツカーではなかったNSX
今は存在しない模型メーカー、ロッソからかつて発売されていた1/12スケール・プラモデルのホンダNSXについて、すでに前編の記事でおおよそのところをお伝えした(下の「関連記事」参照のこと)。ここではさらにNSXが生まれた経緯について触れておこう。
1989年に発表された初代NSXであるが、その原点を探ると、1984年1月に開始された、ミッドシップ技術の基礎研究に行き着くとされている。初期のホンダSシリーズや軽トラックを別とすると、その後のホンダのクルマ創りはFF方式を基本にしていた訳だが、それ以外のレイアウトの可能性を探る研究であった。この時試作されたのは、初代シティをベースにアンダーフロア型のミッドシップとした車両だったという。これは商品企画には結びつかず開発中止となったのだが、そのレイアウトに相応しい企画として浮上したのが、新たなスポーツカーだったという訳である。
NSXとしての登場(発売)は翌年のことで、ロッソの1/12スケール・キットはさらにそののちに登場したものである。これについて、前編で途中まで掲載した、作者・坂中氏の解説の続きを以下お読みいただこう。
キットはビス止めとスナップの併用で、ガッチリ組み上がる
「NSXの実車が国内で発売されたのは前述の通り1990年の、正確には9月のこと。タミヤの1/24キットはこれとほぼ同時期にリリースされ、実車に触れることの叶わぬモデラーにも大きなプレゼントとなったが、それから1年ちょっとが経ってから送り出されたこの1/12キットの満足度は、やはり1/24とは比べ物にはならない。同じホンダのF1やバイクの1/12キットと同じスケールで並べられるのも、格別の喜びである。今回の特集(注:『モデルカーズ』誌290号巻頭特集、2020年)と言うきっかけがなければ、作ることはなかっただろう。
キット内容は、スケールの割りに各パーツのランナー離れもほぼ無く、秀逸な出来。実際に組んでみても特に大きなストレスは無く、リアハッチのフレームが経年により歪んでいても、ビス止めによって矯正される。金属部品が多用されており、ドアヒンジ、ステアリングシャフト/バー/ジョイント、リアハッチヒンジ、フードステー、各種ビス、ホイールボルト/ナットなど多岐に亘る。
それ以外はもちろんスチロール樹脂だが、組み上がると結構な重量感だ。付属の極細プラスドライバーも精度が高い。未だ外国生産に頼る前の、現代の分冊版ビッグスケールの源流を観る思いである。そして、バブルの残り香、あるいは平成の幻影をも感じた。あの頃は、F1ブームの立役者、そしてNSXのテスト走行も行ったアイルトン・セナの全盛期であった。『失われた30年』を反映してか、以後のビッグスケールのモデルカーは完成品が主流となった」