Garage Life

一切の躊躇も妥協もなく創り上げた、日常生活となる上質のアンティークの魅力に満ちたガレージハウス。【ガレージライフ】

現実的な規模、生活のしやすさなども考慮された、建築家の代表作となるアンティークの魅力に満ち満ちた家が完成

ぬくもりのあるアンティークテイストの家、そしてガレージにこだわっているデザインファクトリーが「TDF」だ。これまで『GarageLife』誌でも、何軒もの作品を紹介してきている。それらすべてに共通して感じられるのは、まずは本物のアンティーク部材や家具へのこだわりだ。実際にTDF代表の谷津敏弘さんは、年に数回イギリスなどのヨーロッパへ出向き、自らの知識と経験、そして趣味のセンスを生かして買い付けてきている。

そして次がエイジング。本物のアンティークでまかないきれない部分や、快適性を考えて現代の部材を使わざるを得ない部分に関しては、エイジングで仕上げている。このエイジングは、古い部材と新しい部材をなじませ、全体の調和を図るうえで、その技術やセンスが大きく問われるものである。

TDFの家の最大の特徴であり魅力のポイントは、これらアンティークのさじ加減にあるといえるだろう。ヨーロッパの田舎に昔からあるような雰囲気にこだわり、細部まで手を掛け、気を抜かず、神経を行き届かせる一方で、全体としてはやり過ぎない。コテコテでないアンティーク、シンプルモダンのスマートさを取り入れたかのようなアンティークテイスト。だから、住む者がごく自然に穏やかな気持ちで暮らしていける。それがTDFのつくる家の最大の魅力ではないかと思う。

【写真15枚】大胆かつ繊細な古材使いの妙。空気のような違和感のなさ。 

前置きが長くなったが、ここで紹介する家は、そんなTDFがコンセプトハウスとしてつくった家だ。TDFを知ってもらうモデルハウスであり、また谷津さんの建築家としての代表作にもなる渾身の一軒なのである。さらに、スタッフ全員が携わった――たとえば、普段は経理を行っている者がエイジング塗装したり――という意味でもTDFの代表作といえるものだ。

実際に拝見すると、中庭を囲うような間取り、ドアなど本物の古い木の部材、しっくい仕上げの壁、インテリアと調和したアンティーク家具というように、まさしく一分の隙も妥協もない徹底した仕上がり。どこを見ても必ず発見がある、そんなアイデアと思い入れが凝縮した家として完成している。

TDFのコンセプトハウスとしてつくられたこの家は、現在はTさんと奥さまご夫妻のものになっている。実は、雑誌でTDFの家を知り、大いにほれ込んでしまったご夫妻は、TDFに依頼してマイホームを新築しようとしていた。ところが、土地がなかなか見つからず、そんなときにこのコンセプトハウスのことを知ったのだ。図面や模型を見ると、まさしく自分たちの求めていた、いやそれ以上のものだとわかり、最終的には両者納得してT邸として完成したのだった。

フランスの田舎町にあるような、味わい深い素材感にこだわったディテールが特徴的な家。全体の構成としては、まず家の前に―日本風には楼閣とでもいえばいいのか、2階部分が部屋になっている門が設けられた。離れの趣味部屋といった趣だ。その門を入ると中庭がありそれを囲うように、住居とガレージが配置されている。そのため、住居からは囲われた中庭の風景が楽しめ、ガレージ内の愛車も眺めることができる。

このありきたりでない深みのあるレイアウト、そしてインテリアの本格的なアンティークな質感と雰囲気、ご夫妻はこんな(すごい)家に住めるのだろうかと、最初は期待と不安を抱えていたという。しかしいまとなっては、ごく自然に暮らしているそうだ。5歳と2歳になる息子さんも家の中を駆け回って遊んでいる。日常生活となる上質のアンティーク、その繊細なさじ加減、それがTDFの家の最大の特徴なのだ。

◆Planning Data
 所在地:福島県
 竣 工:2011年12月
 施 主:Tさん
 構 造:2×4構造(住居)、在来構造(ガレージ)
 延床面積:176.35平米
 ガレージ面積:30.47平米
 愛 車:’59年式 VWタイプ2、’56年式 VWビートル

◆Owner’s Check
・自分のここがお気に入り
 ガレージ、間取り、雰囲気共に希望通り、理想どおりにできました。
 家の真ん中にキッチンがあって、家中どこでも声が届くところもいいですね。
・ちょっと失敗
 特にありません。
・これからの夢
 夫婦そろってガーデニングを楽しみたいです。
・読者へアドバイス
 自分たちの考えを一から伝えるのは大変です。そのためにも趣味が合う建築家、
 施工店を選ぶことが大事だと思います。

◆Comment from a Builder:TDF 谷津敏弘さん
 パティオのある家に住みたいなという考えから、3年ほどかけてラフのイメージを作り建築予定地を確保してゆっくり時間をかけて作ったT邸です。当初は、弊社モデルハウスとしてのスタートでしたが、お打合せ中のT様にコンセプトを気に入って頂き、着工時にはお客様の物件として施工させていただきました。VWが好きなご夫婦が、いつでもどの場所からでもVWが見えるようにパティオを囲んだ家です。やり過ぎず、あくまで住まい手が疲れないそのような仕上げを心がけました。10年程経過するとご家族の成長と一緒になじんでくる家になると思います。

TDF(ティーディーエフ) 福島県福島市荒井字横塚11-100
phone/024-594-0017 http://www.fukunoki.com

『ガレージのある家 Vol.25』掲載

text/Yuji-OHISHI(大石裕二) photo/Hiroyuki-KONDO(近藤浩之)

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