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【毎日乗れるスーパースポーツ/その2】日常使いはEV、週末はドライビングプレジャーの世界へ誘う―「マクラーレン・アルトゥーラ」【毎日がスポーツなクルマ】

ひと昔前まで、スーパースポーツと言えば大排気量ユニットを搭載し、爆音を響かせながらクルージングするのが常であった。しかし最新モデルでは環境性能に配慮し、PHEVとすることで、静粛性に優れたEV走行とスポーツ性能を両立。今回はその代表的な2モデルをピックアップしてみた。

EV走行をデフォルトとし環境性能にも配慮

今にはじまったことではないものの、マクラーレンがニューモデルで見せるスペックやアプローチには毎回、ワクワクさせられる。何故なら、フォーミュラワンさながらの、”そっちがそうなら、こっちはさらに上を行くぜ!”とでも言いたいのか、わずかにライバルに出遅れたとはいえ、確実に意識しているのが明らかだからだ。

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マクラーレンの最新作、アルトゥーラに搭載されるパワーユニットは、ハイブリッドシステムを組み合わせる3L V6ツインターボ。しかもバンク角は120度と、言うまでもなく、あの最大のライバルと同じ。しかし、注目すべきEV走行の航続距離はライバルを上回る31kmを実現、電気モーターのみで130km/hまで可能と謳う。さらに330km/hの最高速度や0→100km/h加速3秒ジャストといったパフォーマンスがほぼ同等であるにも関わらず、680㎰ &720Nmという、そのライバルよりも抑えたパワー&トルク値で実現していることに、”効率優先主義”を匂わせているから徹底した姿勢が伺える。実に面白い! そう思って試乗をはじめると、さらなる意地とも例えられるような一面が顕になった。

パワートレインは最高出力585㎰、最大トルク585Nmの3L V6ツインターボに、同95㎰&225Nmの電気モーター、容量7.4kWhのリチウムイオンバッテリーを組み合わせたPHEVとなる。

それこそ、エンジンスタートボタンを押した瞬間にわかる。驚くことにアルトゥーラは、E(エレクトリック)モードがデフォルト。すなわち、EV走行からはじめよ! という、強制的に環境保全に尽くすよう促される。実際、EVのみで走り始めると、ウルトラスムーズかつシームレスな感触に新鮮さを覚える一方で、ライバルよりも静粛性に優れていることが明白となった。おそらくマクラーレンは、GTで培った遮音対策の一部をこのアルトゥーラにも適用しているようで、ラグジャリーモデルにも近い騒音の抑え込みに成功している。しかも、それに合わせてなのか、室内の仕立ても質感を高くして、ミッドシップスポーツのイメージを残しつつもセンス良くアップグレードしているところも褒めたくなる部分であった。

装着されるタイヤはピレリPゼロで、内部にマイクロチップが備わることで、空気圧やタイヤ温度をリアルタイムで計測が可能。リアデフューザーも空力を重視した大型タイプだ。

元々、マクラーレンはタウンユースでも扱いやすいのが特徴であったが、アルトゥーラはさらに磨きをかけた印象だ。とはいえV6エンジンが始動すると、さすがにカーボンモノコックゆえに振動がわずかに身体に伝わってくるが、それでもかなり抑え込んでいる。不快ではない程度だからさほど気にならないが、快適性という点においては、トラックモードでも不快感がないことのほうが驚いた。

というのもアルトゥーラは、EV走行を続けてバッテリーを使い切ってしまった場合など、できるだけ早めに充電したい時は、トラックモードの使用を余儀なくされるが、それが一般道で走行していても、まったくと言っていいほど極度な突き上げを感じることがなかった。見事なまでに快適性を維持するこの乗り心地は、数あるスーパースポーツの中でもダントツの完成度と断言できるほどだ。

シンプルなでサインのコクピット。メーターナセル左右のスイッチでパワーユニットとシャシーの制御を個別に調整できる。セミバケットシートは、快適な掛け心地を実現している。

だから日常の足としての役割は十分に果たすのだが、これまでのマクラーレンとハンドリングはやや違う。初期の入力に対してクイックな反応がわずかに抑えられているうえ、旋回中の微調整がしやすくなっているのが嬉しい改善点であった。しかも電動油圧式パワーステアリングの採用を頑なに貫いているからマクラーレンらしさは健在。一般道で乗っていても扱いやすく快適で、長距離ドライブも苦にならない出来だ。

もちろん、アルトゥーラの醍醐味はワインディングやサーキット。そういった面でも期待に応えられるように、今回はじめてEデフが採用されたこともトピックだろう。時代に見合った効率性だけでなく実直な進化を加えてくるところが実にマクラーレンらしいと思う。

【Specification】マクラーレン アルトゥーラ
■車両本体価格(税込)=29,650,000円
■全長×全幅×全高=4539×1913×1193mm
■ホイールベース=2640mm
■車両重量=1395kg
■排気量=2993cc
■エンジン最高出力=585ps(430kW)/7500rpm
■最大トルク=585Nm(59.6kg-m)/2250-7000rpm
■モーター最高出力=95ps(70kW)
■モーター最大トルク=225Nm(22.9kg-m)
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション形式(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/35ZR19:295/35ZR20

フォト=望月浩彦 ルボラン2023年7月号より転載

この記事を書いた人

野口優

1967年生まれ。東京都出身。小学生の頃に経験した70年代のスーパーカーブームをきっかけにクルマが好きになり、いつかは自動車雑誌に携わりたいと想い、1993年に輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。経験を重ねて1999年には三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務。2008年から同誌の編集長に就任し、2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。フリーランスとしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動している。

野口優

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