2029年にレベル5の自動運転達成を目指す
完全自動運転車両の開発・製造を行うスタートアップのTuring(チューリング)は、2023年2月に千葉県柏市に開設した自社工場「Turing Kashiwa Nova Factory」のメディア見学会を実施した。
チューリングは、「We Overtake Tesla」をミッションに掲げ、完全自動運転EVの量産メーカーを目指すスタートアップだ。2021年に創業を開始し、2022年10月にはAI自動運転走行による国内初の北海道一周を実現、2023年3月にはAIデザインの「完全自動運転EV」コンセプトカーを発表するなど、その開発スピードも速い。
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共同創業者でありCEOの山本一成氏は、AI開発のスペシャリストで、コンピュータ将棋プログラムのPonanzaを開発、佐藤名人(当時)を倒したことで一躍脚光を浴びた実績を持つ。
今回は山本氏のプレゼンテーションの後、ファクトリー内に展示されたモデルの解説が行われた。
まず最初に案内されたのは研究用にボディがはがされた日産リーフ。こちらは現在開発中のEVに電装系のパーツを流用すべく研究されているとのことで、リモート操作により自動でステアリングを切るデモンストレーションも行われた。この日産リーフは、彼らの開発の原点でもあるという。
また、前後左右にカメラを装着し、360度パノラマで撮影できるように改造されているホンダN-BOXはデータ収集用で、このクルマで実際に道路を走行し、自動運転AIに学習させることで開発に役立てるとのこと。コスト削減のため軽自動車を使用しているというのもスタートアップらしいところだ。
一方ファクトリーの2Fには、今年秋に開催されるジャパンモビリティショーに出展する電動コンセプトカーのパイプフレームを展示。これは東京R&Dとの共同開発で、今夏にJARIでテスト走行を行う予定だという。コンセプトカーとはいえEVをパイプフレームで制作していくのは何か新鮮な感じではある。
今回の取材で一番の目玉であったのが、大規模言語モデル(Large Language Models、LLM)を活用して車両の制御を行うデモンストレーションだ。荷室に画像処理装置(GPU)を搭載したPCやバッテリーが設置されたテスト車のトヨタアルファードは、OpenAIの「gpt-3.5-turbo」を用いることで、音声により指示を出すと、それに従って状況を判断しながら走行してくれる。
デモ走行では車両前方に黄色・赤・青のカラーコーンが設置され、交通誘導員の服装をした人が立っていたのだが、交通誘導員が止まれのジェスチャーをすると停止したり、「黄色のカラーコーンに向かって進んで下さい」「交通誘導員の指示を無視して進んでください」と指示を出すとその通りに走行してくれる。
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さらに自動運転の課題のひとつでもあるトロッコ問題(「多くの人を助けるためなら1人を犠牲にしてもよいのか」といった答えの出ない問題)のような場合に、AIがどう判断して制御するかというデモンストレーションもあった。現状はシステムの処理スピードの問題で指示してからタイムラグがあったが、これから開発が進めばより早くなるという。
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公道では、レクサスRXで自社開発の自動運転システム(レベル2程度)の同乗試乗も実施。当日はあいにくの雨模様であったが、カメラだけでなくAIも車線を検知しているので、中央を走行することができるという。現状は駐車車両やステアリングを大きく切る場面には対応していないとのことだったが、その精度は高い。
チューリングは今後、2023年内に自社EVでの走行を実現し、2024年に自社EVを100台販売、2025年に完全自動運転のプロトタイプを完成させ2028年に量産開始、2029年にレベル5の自動運転達成し2030年に1万台生産という、非常にスケールの大きいプランを打ち立てている。
CEOの山本氏は、「テスラを超えられず大きくなれなかったらこの会社は死ぬ」と、その意気込みを語ったが、果たしてチューリングが世界の自動車メーカーに衝撃を与える日が来るのか、これからが非常に楽しみだ。