ニューモデル情報通

【ニューモデル情報通】Vol.15 8代目となる「BMW 5シリーズ」が日本デビュー! 約50年にわたるその歴史を知る

8代目「BMW 5シリーズ」が日本でも発売開始

2023年5月、新型「BMW 5シリーズ」が世界初公開され、7月には早くも日本での発表・発売開始がアナウンスされた。

5シリーズは、BMWのEセグメントモデル。3シリーズ、7シリーズとともに、同社セダンの中核をなす重要な車種だ。8代目を迎える新型では、エッジとカーブを巧みに組み合わせたシャープなエクステリアデザインが特徴である。インテリアも横方向を広がりを見せるダッシュボード、カーブドディスプレイなどが採用されており、これらはいずれも近年のBMWのデザイン流儀に沿ったものだ。

新しい5シリーズで大いに注目を集めているのが、BEV仕様の「i5」だ。写真は「BMW i5 M60 xDrive」で、トータル最高出は601ps、 最大トルク820Nmを誇る。

導入時点のラインナップは、48VマイルドHVシステムのガソリンエンジン仕様が、「523i Exclusive」「523i M Sport」(7,980,000円/8,680,000円)、そしてクリーンディーゼルエンジンを積む「523d xDrive M Sport」(9,180,000円)という構成。注目のBEV版「i5」では、「i5 eDrive40 Excellence」「i5 eDrive40 M Sport」(ともに9,980,000円)が用意されるほか、Mパフォーマンス・モデルの「i5 M60 xDrive」(15,480,000円)も設定している。

BMWの期間限定ポップアップ・エキシビションで、8世代目に進化を遂げた新型5シリーズを発表
https://carsmeet.jp/2023/07/13/304487/

ひとまずはセダンのみで発売を開始した新型5シリーズ。追ってツーリング(ステーションワゴン)の追加も予想されており、今後の展開に注目したい。

5シリーズの前身は、現代BMWの原型「ノイエ・クラッセ」

1961年にデビューした “ノイエ・クラッセ”は、順次バリエーションを拡大。1964年には「1800」、1966年には「2000」を追加し、これらが5シリーズの前身となった。デザインはミケロッティによる。

5シリーズが初めて登場したのは、今から約50年前の1972年だった。ではその前身は? となると、多くの人は答えに窮するかもしれない。答えは、1961年に「BMW 1500」として生まれた、「ノイエ・クラッセ」と呼ばれる一連のモデルがそれに当たる。

1950年代のBMWは、イセッタなどの超小型「バブルカー」か、戦前の超高級車路線を継いだモデルしか持っていなかったが、軽快なデザインの高性能セダン、ノイエ・クラッセ(=ニュークラス)によって、現在の「BMW=スポーツセダン」というイメージを確立した。3シリーズの始祖となった「02シリーズ」や「2000C/2000CS」なども、ノイエ・クラッセの派生車種である。7シリーズの祖先で、メルセデス・ベンツSクラスをライバルとした「2500/2800」も派生のひとつともいえるため、ノイエ・クラッセはまさに現代BMWの「母」とも呼べるモデルなのだ。

中でも5シリーズは、ノイエ・クラッセの直系後継車にあたる。ノイエ・クラッセは当初「1500」のみだったが、追って「1600」「1800」「2000」を順次追加。最終的には1800と2000が残り、これをフルモデルチェンジしたのが、初代5シリーズなのである。

「1800」(右)と、これをベースに美しい2ドアクーペボディを載せた「2000C/2000CS」(左)が並ぶ。2000C/2000CSの違いはエンジンのチューニング。デザインはベルトーネが行った、とされている。

【知られざるクルマ】 Vol.4 イセッタと501……両極端なラインナップだった1950年代のBMW
https://carsmeet.jp/2020/05/29/151079-2/

初代5シリーズは1972年登場

初代5シリーズは1972年の登場。初代3シリーズが1975年なので、実はそれよりも出現が早い。写真は「520」。エンジンは直4SOHC+キャブで、最高出力は115ps。

そして1972年、初代5シリーズ(E12)がデビュー。いかにも70年代的モダンなディティールを持つデザインは社内によるもの。車体・ホイールベースともに拡大され、広い室内空間を確保している。

エンジンは2000から引き継いだ直4 SOHC 2Lを搭載。インジェクション仕様の「520i」では130psを発生した。さらに1973年には2500用の直6 SOHC 2.5Lを積んだ「525」を、翌年には1.8Lの「518」、2.8Lの「528」を追加してバリエーションを拡充していった。さらに1977年にはフェイスリフト。同年、2L版は直6に置き換えられている。

クリーンで上品な初代5シリーズのリアビュー。デビュー時は左のようにさらにシンプルな佇まいだったが、1977年のマイナーチェンジでテールライトを大型化した。

初めて「M5」が設定された2代目

1981年に発売を開始した2代目5シリーズ。写真は、かの「M1」用ユニット「M88」を搭載した「M5」。ノーマル状態のM5では、派手なエアダムなども持っておらず、まさに「羊の皮を被った狼」の表現がぴったりである。

1981年にフルモデルチェンジを受けて2代目となった5シリーズ(E28)。初代から多くの外装パーツを流用しつつ、各部のリファインによって新しいクルマに生まれ変わっていたが、Eセグメント車としては小さめな、おおむね5ナンバー規格に収まるコンパクトな車体も引き継いでいた。現代の目からすると、その「小ささ」に驚かされる。

バリエーションは豊富で、1987年までに4気筒の「518/518i」、直6の「520i」「525i」「528i」「535i」、直6ディーゼルターボの「524td」、燃費重視の「e(イータ)エンジン」を積んだ「525e(日本・北米では528e)」などが用意された。そしてこの代で初めて「M5」が誕生。286psを誇る「M1」用の直6DOHC 3.5Lユニットが搭載されていた。

3代目では車体を大型化 ツーリングも初登場

ぐっと長く、なめらかなボディを持って登場した3代目。写真は直6 DOHC 3.5リッターエンジンを積むM5で、当初の最高出力は315psだった。特徴的な17インチホイールは、「アルミホイール+ディッシュカバー」というスタイル。

今や5シリーズでは欠かせない存在のツーリングは、3代目のモデルライフ途上で追加された。

3代目(E34)は、1988年に登場。全長約100mm、全幅約50mm、ホイールベースが140mm伸ばされたことで、このクラスでは欠点ともいえた車体の小ささを克服。上位車種の「7シリーズ」の雰囲気を上手に取り入れたなめらかなデザインを採用しており、Eセグメント車にふさわしい存在感を得た。また、1991年には5シリーズ初のステーションワゴン「ツーリング」も追加されている。

発売開始時は、車体が大きくなったことで4気筒モデルはドロップし、「520i」「525i」「530i」「535i」「524td」でスタートするも、のちに4気筒の「518i」が復活。1992年には「535i」がV8エンジンの「530i」「540i」に置き換えられた。「M5」の直6エンジンは排気量を3453ccから3535ccに拡大、最高出力315psをマークしたが、1992年には3.8L・340psへとパワーアップしている。

完成度の高いデザインが魅力の4代目

BMWに在籍していた日本人デザイナー、永島譲二氏がデザインを手がけた4代目5シリーズ。

4代目5シリーズ(E39)は1996年から2003年まで販売された。3代目に似たフォルムを残しつつ、まろやかな面と整理されたディティールによって、洗練されたイメージを持つ。軽量化のためにシャーシにアルミを多用。エアバッグ、トラクションコントロールなどの安全装備が充実しており、電子制御デバイスも数多く盛り込まれている。

やはりエンジンバリエーションは多く、ガソリン・ディーゼル共に豊富に用意された。ツーリングは1997年に追加。1999年には、現在では販売の主流を占める「Mスポーツ」モデルが設定されている。M5はついに直6ではなくなり、400psを絞り出すV8 DOHC 5Lというモンスターエンジンを搭載する。

5代目は奇抜な内外装デザインで賛否両論

凹凸を多用した面構成、シャープさと曲面が入り混じった「クリス・バングル時代」のデザインが個性的なのかな5代目5シリーズ。

2003年に登場した5代目は、当時の社内チーフデザイナー、クリス・バングルが率いるチームが描いた個性的な姿で話題を呼んだ。特徴的なヘッドライト、肩にエッジを置く一方でパネル側面は滑らかな造形にするなど、これまでのBMWの文法と異なるデザインを持つ。車体はさらに大きくなったが、ボディ前半にアルミを用いて重量増加を抑えている。形式は、セダンが「E 60」、ツーリングが「E 61」と分けられていた。

iDriveインフォテインメントシステム、ヘッドアップディスプレイ、アダプティブヘッドライトなどのハイテクデバイスも大量に導入されたことも特徴。

4代目におおむね沿ったエンジン展開だが、4.4L/4.8L V8の「545i」、「550i」を追加。M5はさらに強力になり、なんとエンジンは507psを発生するV10(!)を載せていた。

ハッチバックの「グランツーリスモ」が設定された6代目

6代目5シリーズセダンを前後から。四隅を絞り込んだボディ、コンパクトに見えるキャビンなどから、5m近い大きなクルマとは感じられない。

6代目は、2010年に発売を開始。5代目から一転してコンサバティブなイメージに戻ったが、スポーティなフォルムは5代目譲りといえるもの。電子制御デバイスはさらに進化し、安全装備も充実した。

この代のトピックは、「アクティブハイブリッド5」と呼ばれるハイブリッド版、そして5シリーズ初となる5ドアハッチバックの「グランツーリスモ」の設定である。後者はハッチバックやSUVの利便性と、5シリーズセダンのスポーティさを融合。ハッチゲートはセダンのようにリッドだけ開くことも、ハッチバックとして大きく開けることも可能となっている。

ダウンサイジングの波を受け、モデル途中から従来直6だった「523i」「528i」が直4ターボに切り替わっている。注目のM5は、再びV8に戻ったが、4.4Lツインターボは560psまでパワーアップされていた。

なお形式は、セダンが「F10」、ツーリングが「F11」、グランツーリスモが「F07」だった。

5シリーズ初のハッチバック、「グランツーリスモ」。写真では大きく見えないが、全長は5mジャストもある。

7代目では技術面でさらなる進歩を遂げる

まとまりのある美しいデザイン、広い室内、シュアなハンドリングという5シリーズの美点を凝縮したような7代目。

2016年、本国でセダンの発売を始めた7代目5シリーズは、部分自動運転を可能とした運転支援システムなどさらなる安全装備を搭載。高張力鋼板、アルミ、マグネシウムなどを使って軽量化された車体は、6代目比で80kgもの減量を果たしたという。

サイドを走るキャラクラーライン、ウインドウグラフィックス、L字型テールライトによって見るからにBMWとわかるデザインを持ちつつも、ヘッドライトとグリルをつなげる処理が採用されたのが目新しい。

パワートレインは大きく変更されており、ついにメインのエンジンが直4ターボに置きかわって、伝統の直6は「540i」に残るのみに。6代目まで存在したV8エンジンも、M5以外は消えてしまっている。なおM5の最高出力は、ついに600psを超えることとなった。

6代目に設定のグランツーリスモは、7代目では切り離されて6シリーズグランツーリスモへ。もはや5シリーズ伝統ともいえるツーリングは、この世代でももちろん用意されている。形式はセダンが「G30」、ツーリングが「G31」、M5が「F 90」だ。

バランスのとれたデザインが心地よい、7代目5シリーズツーリング。かつて4.6m台だった全長は、4.9m台にまで大きくなった。

気がついたら8代目に! 50年にわたる5シリーズの歴史

改めて、こうして8世代50年にわたる5シリーズを並べてみたが、気がつけば5シリーズも8代目となるため、「以前の5シリーズを全部思い出せない」「あの世代はもう20年も前なのか」「6代目はこんな形だったのか」などの感想を持った人も多いのではないだろうか。

そして、基本的には「5シリーズというクルマ」の性格は変わっていないということも、確認できた。デザインや搭載エンジンは、時代に合わせて移り変わっていくものの、最新の5シリーズもまた、見事に5シリーズの系譜を継いでいるのである。

初代から7代目までを集めた、記念ショット。FRのEセグメントスポーツサルーン、という性格が見事に一貫していることがわかる。

この記事を書いた人

遠藤イヅル

1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。

遠藤イヅル

AUTHOR

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

注目の記事
注目の記事

RANKING