国内試乗

コスパNo.1はどれ!?「BMW iX1」をはじめとするジャーマンコンパクトBEV 4台を比較テスト!

iX1の実力をライバルとの比較試乗で検証!

ドイツコンパクトBEVそろい踏み
今回お出ましいただいたのは、ドイツの4ブランドの(日本市場においては)もっともコンパクトなBEVである。

【画像18枚】ドイツ・プレミアムブランドのコンパクトBEV4車種、その詳細を見る

全長は4.5m前後に収まっていて、4590mmのアウディQ4 40e-tron Sラインを筆頭に、4585mmのフォルクワーゲンID.4 Pro、4500mmのBMW iX1 xDrive30 M Sport、4465mmのメルセデス・ベンツEQA 250と続く。ホイールベースは長い順にID.4、Q4、EQA、iX1となるが、全長に占めるホイールベースの割合を算出するとEQAがもっともロングホイールベースで、もっともショートホイールベースなのはiX1。操縦安定性重視のメルセデスと、ハンドリング重視のBMWの思想の現れか。

いっぽうで、BEVの場合はホイールベースの長さが物理的にバッテリーの搭載量と比例する。実際、数値上ではホイールベースが最も長い2770mmのID.4の航続距離は618kmで最長だ。ID.4はMEBと呼ばれるVWグループのBEV専用プラットフォームをQ4と共有し、バッテリー搭載量もモーターのスペックも両車で同じ。しかし航続距離は594kmのQ4のほうが若干少ない。

これは、出力/トルク特性の違いによるものだろうが、実際にはQ4が少ないというよりも、ID.4が電費優先のソフトウエアを採用していると思われる。走りに一家言あるアウディと最上の大衆車を目指すVWの差とも言えるかもしれない。今回2690mmでもっともホイールベースが短いiX1の航続距離は465kmで、それよりも約40mm長い2730mmのEQAは555kmとなる。

最小回転半径は全長が1番短いEQAの5.3mがもっとも小さく、ID.4とQ4は5.4mで同値、ホイールベースが短いiX1が 5.6mでもっとも大きかった。ラゲッジルーム容量はID.4の543L、iX1の540L、Q4の520L、そしてEQAの340Lとなる。

今回比較試乗した4台。写真右から順にBMW iX1 xDrive30 M Sport、フォルクスワーゲンID.4 Pro、メルセデス・ベンツ EQA 250、アウディQ4 40 e-tron S line。

ここまでの比較結果をまとめてみると、取り回しがいいのはEQA、航続距離はID.4、ラゲッジルームの広さもID.4となる。ただし、ボディが長く背も高いID.4のラゲッジルームが最大なのは当たり前でもあり、EQAの次に小さいiX1の540LはID.4よりわずか3L少ないだけでQ4よりも広く、パッケージの観点からするとかなり優秀であると評価できる。

今回の4台の仕様の車両本体価格は安い順にID.4(648.8万円)、iX1(698万円)、Q4(710万円)、EQA(782万円)。乗り出しでどうにか600万円台で収まりそうなID.4に対して800万円台に乗りそうなEQAはちょっと割高に思えなくもない。iX1は唯一の 4WD(EQAは前輪駆動、ID.4とQ4は後輪駆動)であると共に電子制御式ダンパーを標準装備するなど装備面を考慮すると、価格に対する商品力は高いと言えるだろう。

走りのキャラクターは各車さまざま
ID.4はBEV専用のプラットフォームを使ったVW初のモデルで、日本ではバッテリー容量とモーターの違いにより、 LiteとProの2種類が用意されている。VWと言えばゴルフやポロをイメージする人はきっと、ID.4との初対面で「大きいな」とちょっと驚くに違いない。この4台の中では、全長はQ4のほうが長いものの1番背が高く、大きいというか立体的な存在感がある。

シンプルなデザインで開放感あふれるコクピットは、極力スイッチを排してすっきりとした仕上がりに。

日本仕様の中では唯一の後輪駆動のVWであり、それを忘れてFFのつもりでステアリングを切ると、タイミングや荷重移動が合わなくてうまく曲がれない。慣れれば極めて正確な操縦性を実感できる。個人的には、もう少しフロントのイン側に荷重がかかってくれたらもっと気持ちよく曲がれるのにと思った。まるでダンピング不足で、重いバッテリーを搭載するフロアにストンと引き戻されるようなフラット感の少ない乗り心地も少し残念だった。

Q4は前述のようにID.4と同じプラットフォームを共有する。日本仕様は装備の違いで3グレードを揃える他にクーペルックのスポーツバック(2グレード)も選択可能だ。そもそもアウディは、ペダルやステアリングの操作荷重が比較的軽いが、それがモーター駆動によりトルクの立ち上がりの速く、軽々と車体を運ぶ動力性能とぴったりマッチしている。

シンプルで直感的な最新インフォテインメントシステムとともに、運転に集中できるコクピットが広がる。

ハンドリングはID.4よりも自然にボディの向きを変えられる印象が強い。コーナリングでは狙ったラインに簡単に乗せられるし、旋回中の姿勢も安定していた。乗り心地もID.4よりは快適であるものの、2100㎏の車重を考えるともう少ししっとりしていてもいいかもしれない。

EQAの日本仕様はEQA 250のみのモノグレードと潔い。BEVのみを扱うEQブランドとしてはEQCに次いで’20年に登場した。4台の中ではもっとも古参なBEVである。この頃のメルセデスはまだ、EQシリーズとしての共通の味みたいなものを決め切れておらず、最新のEQE SUVなどが内燃機とほとんど変わらない味付けとなっているのに対して、EQAは特に動力性能面で“BEVっぽい”乗り味が特徴だ。知人が最近EQAを購入し「ビューンと加速して気持ちいい!」とえらくご満悦の様子だったから、結果的にそういう趣向のカスタマーもちゃんと拾っているとも言える。

ワイドさを強調するデザインのダッシュボード。

いっぽうでハンドリングや乗り心地は内燃機を搭載するメルセデスに近い。つまり安定性重視の操縦性とばね上を適度に動かす乗り心地を実現している。

iX1の日本仕様はxDrive30のみだが、xLineとM Sportから選べるようになっている。7シリーズとi7がそうであったように、iX1も内燃機を搭載するX1とその乗り味はほとんど変わらない。ステアリングには左側のみパドルが設けられていて、BEVの場合は通常、パドルは回生ブレーキの強弱を調整するためのものだが(Q4とEQAは装備)、iX1のそれは“ブースト”用で、10秒間だけ約40ps上乗せされる。この時がBEVらしさを感じる一瞬でもある。

インテリアはタッチ式により操作性を高めたBMWカーブドディスプレイを採用。

ハンドリングも、ステアリングレスポンスのいいちょっとスポーティなBMWのそれである。その際のxDriveの駆動力配分のロジックもおそらく内燃機版と大きくは変わらないだろう。取材の復路で東名高速をぼんやり走っていたら「あれ?これはX1じゃなくてiX1だったよな」と再確認するくらい、BEVであることの違和感は感じられなかった。

価格や装備や使い勝手や乗り味などを総合的かつ客観的に比べてみると、iX1の平均点がもっとも高い結果となった。

BMW iX1 xDrive30 M Sport
■全長×全幅×全高=4500×1835×1620mm■ホイールベース=2690mm■車両重量=2030㎏■バッテリー総電力量=66.5kWh■モーター最高出力=190ps(140kw)/8000rpm■モーター最大トルク=247Nm(25.2㎏-m)/0-4900rpm■1充電走行距離(WLTCモード)=465km■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク■タイヤサイズ(F:R)=225/55R18:225/55R18■車両本体価格(税込)=6,980,000円■問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437

メルセデス・ベンツ EQA 250
■全長×全幅×全高=4465×1850×1625mm■ホイールベース=2730mm■車両重量=2030㎏■バッテリー総電力量=66.5kWh■モーター最高出力=190ps(140kw)/3550-11,130rpm■モーター最大トルク=385Nm(39.2㎏-m)/0-3550rpm■1充電走行距離(WLTCモード)=555km■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク■タイヤサイズ(F:R)=235/55R18:235/55R18■車両本体価格(税込)=7,820,000円■問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 0120-190-610

アウディQ4 40 e-tron S line
■全長×全幅×全高=4590×1865×1615mm■ホイールベース=2765mm■車両重量=2100㎏■バッテリー総電力量=82kWh■モーター最高出力=204ps(150kw)■モーター最大トルク=310Nm(31.6㎏-m)■トランスミッション=1段固定式■1充電走行距離(WLTCモード)=594km■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=ディスク:ドラム■タイヤサイズ(F:R)=235/50R20:255/45R20■車両本体価格(税込)=7,100,000円■問い合わせ先=アウディジャパン 0120-598-106

フォルクスワーゲンID.4 Pro
■全長×全幅×全高=4585×1850×1640mm■ホイールベース=2770mm■車両重量=2140㎏■バッテリー総電力量=77kWh■モーター最高出力=204ps(150kw)/4621-8000rpm■モーター最大トルク=310Nm(31.6㎏-m)/0-4621rpm■トランスミッション=1段固定式■1充電走行距離(WLTCモード)=618km■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム■タイヤサイズ(F:R)=235/50R20:255/45R20■車両本体価格(税込)=6,488,000円■問い合わせ先=フォルクスワーゲングループ ジャパン 0120-993-199

フォト=郡大二郎 ルボラン2023年8月号より転載

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