魅惑の自動車カタログ

そこに威厳はあるのか!?日産最高級車のSWB版、「G50型系プレジデントJS」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第26回

Q45のボディを延長したプレジデントのショート版

日産プレジデントは1965年に登場した。「V8エンジンを搭載した初の国産車」という地位こそトヨタのクラウンエイトに譲るものの、派生モデルではない3ナンバー高級車としては、日本で初めての存在である。ボディデザインからエンジンやシャシーまで、アメリカ車的な性格を強く持つものであった。1973年にはフルチェンジ(実態はビッグマイナーチェンジ)を行い、2代目へと進化。より押し出しの強いデザインへと変更、リアオーバーハングが延長され、エンジンも4Lから4.4Lへと拡大されて、あらゆる意味で日本最大の高級車となった。

【画像26枚】キーを握るのはあなた!のプレジデントJSを細部まで見る

その後、排ガス規制対策を受けて型式名は252となり、1982年にはヘッドライトを角型へと変更。この時点で初代デビューから17年も経過しており、そのスタイルには異様なほどの“古めかしさ”が漂っていたが、そうした古めかしい姿のまま最上位に君臨し続けることが、ある種の威厳を身に纏わせてもいたのであった。しかし1990年10月、そんなプレジデントにもとうとうフルモデルチェンジの時が訪れた。ここで生まれた三代目プレジデントは、インフィニティQ45からの派生モデルだったのである。

インフィニティQ45ももうすでに存在しない車種となってしまったが、日産が北米市場でスタートさせた新しいプレミアムブランド(その後世界各地で展開)の皮切りとしてのモデルであり、1989年11月に発売された。日本でのインフィニティ・ブランドの展開はなかったため、国内での車名はあくまで日産インフィニティQ45であった。

Q45のボディサイズは全長5090mm/全幅1825mm/全高1435mm、ホイールベースは2880mm。このディメンションの元に構築されるスタイリングは、低く抑えたノーズと6ライトの大きなキャビンを持つものであったが、高級車の象徴であるフロントグリルを持たないことが特徴である。この個性的なスタイルは、開発テーマである「ジャパン・オリジナル」を体現したものとされていた。

エンジンはQ45のために新開発されたV型8気筒を搭載。このVH45DE型エンジンは排気量4494cc、90度V8でヘッドはDOHC、可変バルブタイミング機構(NVCS)を採用し、最高出力280ps/最大トルク40.8kgmを発生。ミッションは電子制御4速オートマチック(E-AT)が組み合わされ、後輪を駆動。

サスペンションは前後ともマルチリンク式で、市販車として世界初の油圧アクティブサスペンションをオプション採用した。これにより、スポーティなビッグサルーンとしての走行性能については、世界最高のレベルと評価が高かった。そのスポーティぶりを反映してインテリアは4名乗車が前提のようで、後席も左右バケットシートのような形状となっていた(一応乗車定員は5名)。

三代目プレジデントは、このQ45をベースにホイールベースを150mm延長し、内外装の細部を変更したものである。エクステリアでは、Q45ではかなりスラントしていたノーズがスクエアな形状となり、フロントグリルも先代プレジデントのそれをイメージしたという立派なものを装着。比較して、Q45よりもメッキパーツが多い印象である。エンジンやサスペンションはQ45のそれと基本的には共通だが、ショーファードリブンの高級車として相応しいよう、セッティングには変更が加えられており、エンジンの最高出力も270psであった。

インテリアも基本的にはQ45のそれを踏襲したものだが、助手席のヘッドレストがシートバックの上部ごと電動で前に倒れ、後席からの視界を確保するという独自の機構も加えられていた。Q45で話題を呼んだ蒔絵パネルのような風変りな装備は排され、シート地にはシルクウールを採用。本革仕様もオプションで設定されていたが、ベーシックな革とは別に、英国コノリー製の最高級本革も用意されている点がひとつのハイライトだった。

エッグシェル色の表紙に、ゴールドと錯覚させるブラウンの文字で車名が小さい目にレイアウトされた、高級車らしい表紙。「JS」の文字が大きめに配置され、ショートホイールベース版のカタログであることを明確にしている。

遅れて追加されたJSの半端さはカタログにも
さて本題のプレジデントJSだが、これは1992年2月に追加されたショートホイールベース・バージョンである。日産では「従来の『プレジデント』の全長を150mm短縮(ホイールベースを150mm短縮)」とのみ説明していたが、要するにQ45と共通の寸法だ。当然ながらというべきか、本来のプレジデントよりはオーナードライバーをも意識したモデルとなっており、あるいは販売的に苦戦していたQ45をフォローする意味あいも持たされていたのかもしれない。

グレード構成は通常のプレジデントとは異なっており、上からタイプG、タイプX、タイプSの3種類。このうちタイプSはアクティブサスペンションが省かれている。登場翌年の4月には、通常のプレジデントともども後席用エアバッグをオプション設定。1994年5月には両シリーズともにマイナーチェンジを実施、内外装の細部を変更した。特にインテリアには木目パネルを採用、またアクティブサスにはプレビュー制御を追加し、乗り心地を向上させている。

1997年9月のマイチェンでは後席用エアバッグを標準化、1998年12月にはさらに装備を充実させる小変更を行い、2002年8月に生産を終了している。プレジデントはさらにのちにはシーマの兄弟車となり、そしてシーマに統合されるかたちで廃止され、そのシーマも2022年に生産を終えてしまった。

ここでようやくカタログの話となるが、ここでお見せしているものは「このカタログの内容は1993年5月現在のもの」と注記されている通り、後席用エアバッグがオプション設定された直後のものである。サイズは338×250mm(縦×横)、ページ数は表紙を含め全32ページ。

カタログの作りとしては特に変わったところはなく……というよりも、紙質やデザインなども含め非常に平凡なもので、ショートホイールベース版とはいえ日産の最高級車に相応しい厳かさのようなものは、特に感じられない。前述の通りオーナードライバーもターゲットとして視野に入れたモデルであるので、それを反映した部分も見受けられるのだが、このプレジデントJSのステアリングを握って意気揚々と乗り回す人が当時いたのか、そこはどうもよく分からない。やはり中途半端な印象に尽きるようだが、これは結局ベースのQ45が持つ半端さがそのまま引き継がれているように思われる。

AUTHOR

愛車の売却、なんとなく下取りにしてませんか?

複数社を比較して、最高値で売却しよう!

車を乗り換える際、今乗っている愛車はどうしていますか? 販売店に言われるがまま下取りに出してしまったらもったいないかも。 1 社だけに査定を依頼せず、複数社に査定してもらい最高値での売却を目 指しましょう。

手間は少なく!売値は高く!楽に最高値で愛車を売却しましょう!

一括査定でよくある最も嫌なものが「何社もの買取店からの一斉営業電話」。 MOTA 車買取は、この営業不特定多数の業者からの大量電話をなくした画期的なサービスです。 最大20 社の査定額がネット上でわかるうえに、高値の3 社だけと交渉で きるので、過剰な営業電話はありません!

【無料】 MOTA車買取の査定依頼はこちら >>

注目の記事
注目の記事

RANKING