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BMWとメルセデス、2台持ちするのならどんな組み合わせにする? 3名のジャーナリストが出した回答は?

BMWもメルセデスも、さまざまなカテゴリーでフルラインナップを揃えているブランド。クルマ好きとしては、家族用と自分用、ビジネス用とプライベート用などできれば2台持ちできるのが理想だろう。その日の気分に合わせて、クルマをチョイスできるなんてサイコー! とはいえ、BMWとメルセデスなんてガチのライバル同士で2台持ちするなんて、そんなのあり得ないのでは? でもここは、空想の世界。日頃からさまざまなモデルを試乗するジャーナリストだからこそ、興味深いチョイスをしてくれるはず。というわけで、なぜその2台を選んだのか理由を語っていただこう。

石井昌道(M.Ishii)/刺激たっぷりのXMととてつもない快適性のEQS

現実的に考えればM2とEクラス・オールテレインの組み合わせなどが豊かで渋いカーライフを送れそうだが、今回はあくまで空想なのでもう少しぶっ飛んでいきたい。BMWにスポーティネスを、メルセデスにはコンフォートと安心・安全を求めるのはかわらないとすれば、まずBMWの方はXMレーベルにしたい。

BMW XMレーベル/斬新なエクステリアと、ラグジュアリーとハイパフォーマンスを高次元で融合させた、まったく新たなPHEVであり、史上最強のMモデル。

素晴らしい官能性をもつエンジンを搭載するモデルを、いつまで新車で手に入れられるのかは不明ではあるものの、そう遠い将来ではなさそう。BMW自慢のストレート6と並んで名機と呼びたいのがS63型エンジンで、これはV型8気筒にクロスバンドエキゾーストを採用して排気干渉を抑え、スムーズな吹け上がりと洗練されたサウンドを発するエンジンだ。BMWが他に先駆けて採用したバンク内排気のホットVでもあるからレスポンスにも優れている。S63型エンジンをピュアに楽しむのならM8やM5がいいかもしれないが、ここは欲張って強力な電気モーターと組み合わせたPHEV(プラグインハイブリッド)のXMレーベルを選ぼう。エンジン単体で最高出力585ps/最大トルク750Nmだが、電気モーターの197ps/280Nmと合わせてシステムトータルでは748ps/1000Nm! スペックが凄まじいだけではなく、低速域では電気モーターが、中・高速域ではエンジンが、それぞれ得意な領域で活躍して加速感に多くのドラマがあるのも堪らない。通常PHEVは環境対応のために採用されるが、XMでは電気モーターのパフォーマンスを引き出すために大容量バッテリーを搭載したかったのが優先的な動機ではないかとさえ思える。満充電ならばWLTCモードで102.6kmをEV走行できるので、環境対応にもしっかり貢献しているのはたしかだ。
シャシーはスタビライザーやダンパー、リアアクスルステアなど電子制御のハイテクがてんこ盛りで2710㎏にも達する車両重量をものともせずに凄まじい運動性能を発揮する。そのパフォーマンスのわりには乗り心地はまずまずではあるが、さすがに23インチタイヤの低速域でのゴツゴツ感や鋭い突起での突き上げ感は否めない。高速道路での移動がメインならば、いやな硬さはなくなり衝撃の収束が素早いので快適と言えるだろう。

メルセデス・ベンツEQS/メルセデス・ベンツ初の電気自動車専用プラットフォームを採用し、107.8kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、700kmの航続距離を実現。

一方、メルセデスでもっとも欲しいのはコンセプトカーのEQXXだ。航続距離を伸ばすため空力性能を突き詰めたカムテールデザインに惹かれてしまう。Cd値は驚異の0.17で、100kWhのバッテリーを搭載し1000kmの航続距離を誇るという。10km/kWhの電費がWLTPモードで達成できれば立派だろう。このコンセプトやテクノロジーをベースにした市販車が登場するのは2025年とのことだが、スタイリングが近いのであれば欲しくなりそうだ。とはいえ、いまは存在しないので、その変わりと言ってはなんだがEQSをチョイスしておこう。やはり空力性能を強く意識していてCd値は市販車最高クラスの0.20。背が低いから前面投影面積も小さく、いかにも高速電費に優れたカタチだ。乗り心地の快適さや圧倒的な静粛性は、もはやエンジン車では到達不可能なレベル。今後の高級車はBEVがマジョリティになることを確信させるほどだ。
刺激たっぷりのXMととてつもない快適性を誇るEQSの組み合わせは、メリハリの効きまくったカーライフを送れそうだ。どちらもラグジュアリーの極みでパフォーマンスも高いが、一応は環境に配慮したポーズがとれるという一面もある。とはいえ車両重量がとんでもなく重いことは如何ともしがたく、軽量化のブレークスルーが起きる事を期待したいところだ。

どちらもラグジュアリーの極みで環境にも配慮している。(石井昌道)

竹岡 圭(K.Takeoka)/ちょっと完璧じゃない? この2台持ち(笑)

「X1とCLE」か「M2とCクラス・オールテレイン」か。悩んだ末にこのふたつの組み合わせまで、なんとか絞り込みました。ようするに2台持ちするならば、ひとつはシュッとしたスポーティ系かオシャレ系。もうひとつはSUVとかワゴンのアウトドア系。言わば奇抜さはまったくない王道の選択なのです。
奇をてらいたい気持ちも当然あったのですが、ついつい比較的現実的な2台持ちとして考えてしまったわけです。って、普段はフォルクスワーゲンとルノーの2台使いをしている私が言うのもナンなんですけどね。

メルセデス・ベンツ C220d 4マチックオールテレイン/Cクラスステーションワゴンから約40mm高められたロードクリアランスや、アンダーガード付きバンパーなど、SUVとワゴンのいいとこどりが魅力。

我が家は充電設備のない集合住宅なので、EVは選択肢に入らずとなりました。いえね、最近は複数所有できる方には、1台はEVとかPHEVという選択肢もアリですよ~、なんてお話をしたりすることもあるんです。日本は災害が起こる可能性が比較的高い国なので、そうなった場合、言わば動く充電池とも言えるクルマが家にあるというのは、かなり心強いと思うんですよね。その後も、電気の方がガソリンスタンドよりも早く復旧したりしますから、そうなった場合の移動の自由の有無は生活にかなり影響すると思うんです。
とはいえ、BMWはV2Hにはまだ対応していないし、メルセデス・ベンツも対応車種がかなり限定されているので、今回の2台持ちチョイスではそこは考えないことにしました。
で、「X1とCLE」か「M2とCクラス・オールテレイン」の振り出しに戻るわけですが、この組み合わせはシュッとしてるか否か以外にも、ガソリンとディーゼルというコンビでもあるんです。X1は“パワーオブチョイス”を謳っていたくらいなのでパワートレインが3つもありますが、ここでの選択はXドライブ20d。XラインかMスポーツかは同価格のためお好みで。個人的にはシート形状はスタンダードなXラインの方が良さそうだけれど、アダプティブサスペンションがついているから、やはりMスポーツかしらというところに。その方がリセールも良さそうだしね……なんて下心もチラリの選択。
CLEは200クーペスポーツというモノグレードなので悩みナシで決定。同じくCクラスオールテレインも、220d 4マチックオールテレインのモノグレード設定なので、これまた一件落着。

BMW M2(MT)/3L直6エンジンのダイレクトなレスポンスを味わいながら、自らの手足のようにマシンを操る感覚はマニュアルトランスミッションの醍醐味だ!

残るM2クーペは、MTかATかの選択になります。すっかり2ペダル全盛の世の中ではありまして、もはやMTのクルマを探すのが難しい時代になってきましたが、それだからこそMTは久しぶりに乗るとやはり楽しいんですよねぇ。
もちろん、クルマ任せの方が賢くて効率も良く速いのは重々承知なんですけれど、走っていて気持ちの良い道に遭遇すると、非日常感をより深く味わえるとでも言えばいいでしょうかね。でもこれが日常で使うとなると、渋滞とか!? そんなシーンが頭をよぎります。
待てよ! だからこその2台持ちなんじゃない? 渋滞はいつ起こるかわからないとはいえ、元気に遊びに行くときはMT、日常のお仕事はATの使い分けをするのがいちばん現実的な気がする……。
というわけで、チョイスストーリーはなんとも微妙な展開になってしまった気もしますが、結果としてMTを所有するという、単純な選択を加えることによって、「M2クーペのMTとCクラス220dオールテレイン」という、すごく納得のいくチョイスで腹落ちすることができました。っていうか、これ完璧じゃない!? と、ちょっと自画自賛レベルであります。
結果的に、いちばん高い組み合わせのお買い物になってしまったというのはご愛敬と言うことで。

遊びに行くときはMT、日常のお仕事はATで使い分け!(竹岡 圭)

島下泰久(Y.Shimashita)/この2台ならどちらもファーストカーにしたい

最初はメルセデス・ベンツがGクラス、BMWがXMというアピール度最高というだけでなく、乗り味も大いに気に入っている2台をドーンと並べてみたいと考えていた。けれど最近、巨大SUVで街を闊歩するのがカッコ良く見えなくなってきた。もっと颯爽と街を駆けぬけられるクルマが今の気分。そんな観点で選んだのが、こちらの2台だ。

メルセデス・ベンツ GLB200d 4マチック/高い悪路走破性を持つ本格的なSUVでありながら、広い室内空間に7人乗車を標準とし、取り回しのよいボディサイズを実現。

メルセデス・ベンツGLBは、すでに登場4年というモデルである。しかしながら先日、最新版のGLB200d 4マティックを試したところ、その味わいがさらに深化していて驚かされた。

全長4635mm×全幅1835mm×全高1700mmと、都心部でも持て余すことのないサイズでありながら、全体にボクシーかつスクエアで、ちょっとだけGクラスの匂いも感じさせるフォルムのおかげで存在感は十分。しかも3列シートの用意によって、実用性、機能性も非常に高い。
乗り込むと、立ち気味のフロントウインドウがもたらす開放感に嬉しい気分になる。クーペに寄せた今どきの多くのSUVとは一線を画する心地よさは、これまたGクラスっぽいところだ。
走らせれば、いかにも鉄板の厚そうなボディの剛性感にニヤリとさせられる。電子制御ダンパーを奢ったサスペンションのおかげもあり、乗り味はフラットかつしなやか。熟成ぶりは半端ない。
そんな乗り味と、トルキーな2Lディーゼルエンジンとのマッチングは上々。どこまでも走って行きたくなる感覚は、想像以上に“メルセデスしている”のだ。

BMW X2 M35i xDrive/日常的な使いやすさはそのままに、Mスポーツサスペンションをはじめとする専用装備を纏い、Mの称号にふさわしいパフォーマンスを発揮。

目指す方向は真逆と言っていい新しいBMW X2のデザイン。X4やX6などと同様の“正統派SAC”フォルムは、スッキリ精悍なフロントマスク、余計なラインの少ないクリーンなサーフェイスなどが相まって、個人的には最近のBMWの中で一番カッコ良いと思っている。
全長4555mm×全幅1845mm×全高1575mmというサイズもGLBと同様、大き過ぎず、そして小さ過ぎもしない都心最適サイズ。これもまたスマートに感じさせる要素だ。
国際試乗会で乗って気に入ったのはX2 M35i xDrive。2Lターボエンジンはとにかくツキが良く、しかも7速DCTを組み合わせることから反応がダイレクトで、クルマとの強い一体感が得られる。アクセルを踏むだけで心弾む、この時代に選ぶ意味のある内燃エンジンの存在が、まずひとつのポイントである。
乗り味の洗練ぶりも期待以上。FFプラットフォームを使ったBMW車は、素晴らしくよく曲がるけれど直進性に難が感じられたりで、正直に言うとこれまであまり評価してこなかったのだが、最新の2シリーズアクティブツアラーやX1、そしてこのX2はようやくツボを心得た様子。ちゃんとBMWらしさを味わえる。
2台持ちするのに、何も似たようなクルマを選ばなくてもいいのにと言われそうだが、考えたのはファーストカーとセカンドカーの2台ではなく、どちらもファーストカーにしたいということだった。サイズや使い勝手に大きな差があると、結局どちらか一方ばかり乗ってしまうものなのだ。それこそ平日はコッチ、休みの日はアッチというのでもなく、行き先は一緒でもその日の気分で2台を乗り分けることができたら、景色が違うものに見えてきて楽しいものになるのでは。そんな風に想像して、この2台を選んだ次第である。
あるいは、一方をBEVにしてもいいかもしれない。ただし、EQBもiX2もこれまた良く出来ているから、どちらにするかは悩ましい問題になりそうである。

この2台なら、あるいは一方をBEVにしてもいいかもしれない。(島下泰久)

ル・ボラン2024年8月号より転載
CARSMEET web編集部

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