フォルクスワーゲン

【海外試乗】LWBでキャラの異なる2タイプを本国でテストドライブ。VW流、未来型プレミアムコミューター『フォルクスワーゲン ID.バズ・ロングホイールベース」

主に北米市場に向けて開発された、LWB(ロングホイールベース)仕様の標準版と高性能版のID.Buzzに試乗。そして、ID.Buzzの日本導入時期が遂に決定。2025年前半には日本市場に届けられ、VWの新しい世界に触れることができそうだ。

標準仕様とGTXはかなりキャラが異なる

遂に、ID.Buzzが2025年前半に日本へ正規輸入されることが決まった。現状のモデルバリエーションは4つ。標準ボディとロングホイールベース(LWB)版があり、それぞれのホイールベースは2989mmと3238mm。LWBは3列シートを備える。各々のボディに2種類のパワートレインが設定され、標準仕様は後輪駆動で最高出力が286ps。高性能版のGTXは2モーターの4輪駆動で最高出力は340psとなる。

写真の標準パワートレイン仕様も、下写真のGTXも、160km/hでリミッターが作動することで最高速度を制限している。フォルクスワーゲンのBEV専用プラットフォーム「MEB」を用いておりエンジンの設定はない。

現時点ではどの仕様が日本に導入されるかは決まっていないとのことで、4つのバリエーションすべてが入ってくる可能性もある。

今回は、フォルクスワーゲンの本拠があるヴォルフスブルク近郊で、LWBの標準パワートレインと、同じくLWBのGTXの2モデルに試乗することが許された。

まずホワイトとネイビーのツートーンに塗られた標準パワートレイン仕様からスタート。ダッシュボード中央のタッチスクリーンにインターフェイスが集約されているために、物理的なスイッチやダイヤルが見当たらないため、インテリアはすっきりとしている。タッチスクリーンの最上段にはソフトスイッチが備わり、ここを押すとワンアクションでナビゲーションや車両セッティングなどのページを呼び出せる。したがって、「なかなか必要な情報にたどり着けない」という“タッチスクリーンあるある”は解消されている。

ダッシュボード中央のタッチスクリーンにインターフェイスを集約していることから、運転席からの眺めはすっきりとしている。ヨーロッパ仕様にはChatGPTの機能が備わるが、まだ日本語には対応していないという。

いざ走り出すと、BEVらしくスムーズで静か。加えて、乗り心地も快適だ。全高1927mmとなかなかの背の高さであるけれど、重量物のバッテリーを床下に配置するBEV専用プラットフォームを用いることから重心は低い。そのため、足まわりを固めなくてもロールを抑えられ、良好な乗り心地を確保できたのだろう。

ロングホイールベース仕様は主に北米市場に向けて開発されたという。試乗車は前席から2:2:2の乗車定員6名の仕様だったが、2:3:2の7名仕様も存在する。スライド機構を備えた2列目シートはスペースに余裕があるばかりでなく、シートの掛け心地も快適。

標準パワートレインでもパワーは充分で、アウトバーンに上がってもストレスは感じない。制限速度130km/hの区間でも余裕を持って追い越し車線を走行できる。

驚いたのは静粛性の高さで、これだけ背が高いスタイルなのに風切り音が低く抑えられている。確認したところウインドーには遮音材が奢られているとのこと。もうひとつ、電費向上のために空気抵抗を下げることにも取り組み、結果として空気抵抗の大小を示す係数のCd値も0.29と、非常に低い値となっている。これも高い静粛性に貢献しているはずだ。

残念ながら3列目シートを試すことはできなかったが2列目シートは、掛け心地もよく、スペース的にも広々としている。前述したように静かで乗り心地も良好であることから、ショーファードリブンとして使うのも面白いのではないか。このクルマから降りてくる社長はセンスが良さそうに見えて、好感度が上がるはず。

続いて、赤とシルバーのツートーンのGTXに乗り換える。こちらは明らかにパワフルで、アクセルペダルの踏み方に気をつけないと同乗者からクレームが来るほどの加速を見せる。だからアウトバーンを爽快に走ることができるけれど、足まわりも相応に固められている。ワインディングロードで車体のサイズを忘れるほど軽やかなフットワークを見せるいっぽうで、乗り心地のしやなかさでは標準パワートレインに軍配が上がる。

3列目シートまで人が乗った状態での荷室容量は306L、5名乗車で3列目を倒した状態では1340L、さらに2列目まで倒すと最大で2469Lまで拡大する。

2台に共通しているのは、追従型クルーズコントロールと車線維持機能を統合するTravel Assistの出来のよさで、加減速、ハンドルに伝わる反力がすべてナチュラルだから、安心してアウトバーンをクルーズできる。

パノラマルーフは、本国仕様ではオプション設定になる。

パッと見は、“ワーゲンバス”の愛称で親しまれたタイプ2を思わせるスタイリングに目を惹かれる。けれども、その中身はフォルクスワーゲンが進もうとしている未来を表現している。

【SPECIFICATION】フォルクスワーゲン ID.バズ プロ・ロングホイールベース
■全長×全幅×全高=4962×1985×1927mm
■ホイールベース=3239mm
■車両重量=2650kg
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=286ps(210kW)
■モーター最大トルク=550Nm(56.1kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=86kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=487km
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:235/45R21、後:265/40R21
【SPECIFICATION】フォルクスワーゲン ID.バズ GTXロングホイールベース
■全長×全幅×全高=4962×1985×1927mm
■ホイールベース=3239mm
■車両重量=2650kg
■モーター形式/種類=ー/交流同期電動機
■モーター最高出力=340ps(250kW)
■モーター最大トルク=580Nm(59.1kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=86kWh
■サスペンション形式=前:マクファーソンストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:235/45R21、後:265/40R21
問い合わせ先=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン 0120-993-199

リポート=サトー タケシ フォト=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン ルボラン2024年10月号より転載
CARSMEET web編集部

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