国内試乗

【比較試乗】ちょっと大人に愉しみたいアナタに、エレガントなオープンスポーツを選ぶなら?「BMW・4シリーズ カブリオレ vs ポルシェ・911 カブリオレ」

これからの季節、まさに旬を迎えるオープンスポーツ。一般的に屋根がない分、動的性能では不利になるといわれるオープンカーだが、最新モデルでははたしてどうなのか!?

青空とスピードを楽しむ特等席、その頂上対決?

時系列としては2019年にデビューしたポルシェ911カレラ・カブリオレに対し、2021年に登場し、先ごろLCI(ライフ・サイクル・インパルス)を経たBMW M440i xDriveカブリオレという図式になる。

BMW M440i xDrive CABRIOLET/路面を軽快に捉えワインディングを走るM440i。車重は911カブリオレの方が300kgも軽いはずなのだが、限界域でのドライバビリティの高さもM440iの方が優れている印象だった。

LCIの内容は見た目の改良がほとんどのようだ。前後のランプユニットが新デザインになった他、サイドミラーがMモデルと同じ2本脚タイプに変更されている。またキドニーグリルの縁取りがメタリック系からブラックに変更されたことで表情が引き締められている。

BMW M440i xDrive CABRIOLET/インストルメントパネルにはお馴染みのBMWカーブドディスプレイがそびえる。

最初にドライブしたのは白いボディにボルドーのソフトトップが鮮やかな911カレラ・カブリオレの方だった。内装も濃い目の赤革で抜かりなしである。

BMW M440i xDrive CABRIOLET/シートも軽いタッチの走りを反映したラグジュアリーなタイプだ。

911カブリオレの動的質感に関しては、個人的に997と991の間にはっきりとした技術的な進歩があったと思っている。クーペと同等とは言わないまでもボディ前後の剛性バランスがしっかりと取られ、不快な振動の類も感じられなくなったのだ。もちろん現行モデルにもその完成度は受け継がれており、今回幌を閉めて走っていても隙間から音が漏れるようなことはなかった。

BMW M440i xDrive CABRIOLET/B58型の3L直6ターボユニットは幅広いトルクバンドとトップエンドの鋭さを両立している。

思い返すと997までのカブリオレは代替わりするごとに徐々にスカットルシェイクが減ってきていた。それでも攻撃的なサイズのタイヤ&ホイールを履いていると簡単に調和が崩れてしまう。さらに911の場合クーペの完成度が高いので、わざわざカブリオレを選ぶ必要性が感じられなかったというのも正直なところだった。

BMW M440i xDrive CABRIOLET/タイヤは19インチのミシュランPS4Sだが、アシの印象は想像以上にしなやかだ。

ターンパイクの途中で速度を落とし、走りながら幌を下ろすと景色が一変した。針葉樹の香りに包まれ、フラット6の快音もよりダイレクトに響いてくる。

BMW M440i xDrive CABRIOLET

走行モードをノーマルからスポーツに切り替えるとサスペンションの減衰力が高まり、ステアリングから伝わってくるグリップ感が鮮明になった。エンジンレスポンスと、PDKのキレが完全にシンクロしており、いつの間にかペースが上がってしまう。楽しい! でも次のコーナーを注視してしまいがちなので、頭上の青空よりも走りの方を楽しみたくなってしまう。そういう意味ではオープンでもしっかりとポルシェなのだ。

PORSCHE 911 CARRERA CABRIOLET/カブリオレ以外にも多彩なボディバリエーションが多い911だが、あくまでキャラクターの中心はスポーツカーであり、最大の満足感はペースを上げることでしか得られないのかもしれない。

911カレラ・カブリオレから乗り換えると、M440iのコクピットはラグジュアリーそのものといった印象。車名にはMとあるが、シートもルーミーな感じで見るからに快適そうだ。

PORSCHE 911 CARRERA CABRIOLET/小さなシフトノブが世代を感じさせるが、コクピットの眺めは伝統的な911そのものだ。

走りはじめても幌をかけている限り室内は非常に静かだった。ソフトトップの内側が樹脂製のパネル構造になっており消音性能が高いのだろう。昔からドイツ車の幌は“ジャーマントップ”と呼ばれ分厚いことで知られていたが、その最新版は見た目こそソフトに見せかけたハードっぽい屋根なのだ。トップの開閉時間は15秒くらいだろうか。この部分には優劣などないのだけれど、BMWの方がオープンになった時の開放感は高かった。911より室内空間が広く、内装色が明るいことも開放感に効いているのだろう。

PORSCHE 911 CARRERA CABRIOLET/ステアリング上のモード切り替えダイヤルは走行中にも扱いやすい。

ドライバビリティが優れたクルマは、いくつかのコーナーを過ぎればそれとわかるもの。今回のM440iもそのパターンだった。アシが良く動くのに、余計なオツリを一切もらわない。タイヤのグリップやAWDの制御に頼っているような気配もない。全域でトルクフルなエンジンと相まって、楽にフラットな姿勢を維持できている。

PORSCHE 911 CARRERA CABRIOLET/エンジンを直接拝むことはできず、排気のファンしか見えない。

一方ペースを落とした時の乗り心地の良さ、ゆったりとした雰囲気もM440iは見事だった。結果的に911よりもオープンエアドライブを楽しませることにも長けていたのである。

PORSCHE 911 CARRERA CABRIOLET/タイヤはオプションの大径タイプで、前20インチ、後21インチ。走りに振ったチョイスだが、バタつくことはなかった。

かつてのオープンスポーツは二兎を追いきれない、どっちつかずな印象を拭えなかった。だがポルシェとBMWが放った最新版は、走りの部分で「もしかしたらクーペを凌ぐ?」と思ってしまうほどバランスが良かった。その中で特に感銘を受けたのはM440iの方だった。膨大なBMWのラインナップの中で、隠れがちではあるが間違いなく当たり。個人的にはそう確信している。

PORSCHE 911 CARRERA CABRIOLET

【SPECIFICATION】BMW M440i xDrive CABRIOLET
■車両本体価格(税込)=11,820,000円
■全長×全幅×全高=4775×1850×1395mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=1880kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ターボ/2997cc
■最高出力=387ps(285kw)/5800rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1800-5000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:ストラット、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前:225/40R19、後:255/35R19
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437

【SPECIFICATION】PORSCHE 911 CARRERA CABRIOLET
0■車両本体価格(税込)=17,280,000円
■全長×全幅×全高=4520×1850×1300mm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1650kg
■エンジン種類/排気量=水平対向6気筒DOHC24V+ターボ/2981cc
■最高出力=385ps(283kw)/6500rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1950-5000rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション(F:R)=マルチリンク:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/40ZR19:295/35ZR2
問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911

フォト=佐藤亮太 ル・ボラン2024年11月号から転載

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