メルセデス・ベンツ

【海外試乗】トラディショナルな内燃機関と最新装備のマリアージュ。正常進化の万能オフローダー「メルセデス・ベンツG450dローンチエディション」

2018年のデビュー以来6年ぶりにマイナーチェンジが行なわれたGクラス。フル電動モデルのG580に注目しがちではあるが、トラディショナルなICE搭載モデルもオフローダーの名に相応しい進化を遂げていた!

本格オフローダーとして変わったものと変わらないもの

3Lの直列6気筒ディーゼルターボエンジンを始動して発進すると、「ガッチャン」という大きな音が響いて、自動ドアロックが作動した。現代の技術をもってすれば簡単に消すことができるこの音をあえて残すあたりに、メルセデス・ベンツのメッセージが伝わってくる。つまり、高級SUVの競合が増えたけれど、1979年に初代Gクラスがデビューしてから継承してきた、最強のオフローダーという根っこの部分は変えないぞ、という意思の表れだと見た。

センターコンソール上のボタンからフロント、リア、センターの3段階でデフロックの強さをコントロール可能だ。

2018年にフルモデルチェンジを受けた現行Gクラスが、今回初めてのマイナーチェンジを受けた。ここでは、G450dのオフロード試乗会でのインプレッションをお伝えしたい。オフロードコースに乗り入れる前にマイチェンの概要をざっくりと記すと、外観はほとんど変わっていない。従来型のG400dでは3本だったフロントグリルの水平方向のルーバーが4本になっているなど、サイゼリヤの間違い探しのレベル。ただし、空力性能向上のためにAピラーの形状を変えたり、リップスポイラーを追加するなど、実効的な部分に手が入っている。

オフロード走行に必要な情報を表示する「OFFROAD COCKPIT」をワンタッチで呼び出せる。

インテリアも同様で、基本的なレイアウトに変更はない。「ハイ、メルセデス」と呼びかけると起動するMBUXが、Gクラスに初めて搭載されたのが最大のトピックだ。

一見するとマイナーチェンジ前と比べて外見上の違いはほとんどないように見えるが、空力性能向上のためのAピラー形状変更や、リップスポイラーの追加など実利的なモディファイが施されている。

オフロードコースに入る前に、センターコンソール上に3つ並んだデフロックのスイッチの上部に位置する「OFFROAD COCKPIT」のスイッチを押す。すると、センターディスプレイにデフロックの作動状況や車体の傾きなど、悪路走行に必要な情報が表示される。もちろん、走行に役立つ機能ではあるけれど、これからオレはオフロードを走るんだ! と気持ちを引き締めてくれる副次効果もある。

フロントバンパー下部に装備されたカメラ映像を合成し、疑似的にボンネット下の映像を映し出す「トランスペアレントボンネット」。障害物の多い悪路走行時には非常に役に立つ。

ローレンジモードに切り替え、でっかいコブが連続するモーグルのセクションに向かう。ローレンジモードでは、通常のハイレンジでは1.00だった減速比が2.93になり、駆動力が高まる。

アクセルペダルを踏み込むと、極低回転域から滑らかにトルクが盛り上がる。今回のマイチェンの眼目のひとつが、内燃機関モデルの電動化で、すべて48Vのマイルドハイブリッドシステムと組み合わされている。G450dのオフロード走行では、モーターで押し出されているという感覚は薄いけれど、アイドル回転付近でも微妙なアクセル操作に反応してくれるあたりに、モーターの恩恵を感じる。這うようなスピードでコブを登り降りする際に繊細にスロットルをコントロールできるから、電動化はオフロードを走破する性能も引き上げてくれると感じる。

インテリアもGクラスの伝統的なスクエアデザインに基づいたもの。今回「ハイ、メルセデス」で起動する音声コントロールを備える最新のMBUXが搭載され、実用性が向上している。

ここで、センターディスプレイのカメラの形をしたアイコンをプッシュすると、トランスペアレントボンネットが作動、ボンネットの下の画像を映し出してくれる。

マウンテンセクションに移り、壁のようにそびえる登り坂にアプローチ、ここで初めて3つのデフロックのうち、センターをロックする。すると、何事もなかったかのように、涼しい顔で完登した。実はこの日は試乗会の3日目で、路面がかなり掘られてしまったためにセンターデフのロックが必要だったとのこと。初日はデフロックのスイッチに触る必要がなかったというから、その登坂性能には恐れ入る。

キメ細やかなパワートレインとともに感心したのが、悪路での乗り心地のよさ。なんでこんなに快適なのかと思ったら、マイチェン前のG400dではオプションだったアダプティブダンピングシステムが標準装備になっているのだという。

現行モデルがデビューした6年前にも、そのオフロード性能の高さに驚いたけれど、技術の進歩とは素晴らしいもので、まさに鬼に金棒といえる圧倒的なパフォーマンスを見せてくれた。

【SPECIFICATION】メルセデス・ベンツG450dローンチエディション
■車両本体価格(税込)=21,100,000円
■全長×全幅×全高=4680×1985×1980mm
■ホイールベース=2890mm
■トレッド=前後:1660mm
■車両重量=2560kg
■エンジン形式/種類=656M/直6DHOHC24V
■内径×行程=82.0×94.3mm
■総排気量=2988cc
■最高出力=367ps(270kW)/4000rpm
■最大トルク Nm(kg-m)/rpm 750(76.5)/1350-2800
■モーター形式/種類=EM0023/交流同期電動機
■モーター最高出力=20.4ps(15kW)/2000rpm
■モーター最大トルク=208Nm(21.2kg-m)/100rpm
■燃料タンク容量=100L(軽油)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後;リジット/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:275/50R20

問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

リポート=サトータケシ フォト=郡 大二郎 ル・ボラン2025年1月号から転載

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