アウディのアッパーミドルクラスを担うA6が、フルモデルチェンジを受けた。ボディはアバントとスポーツバックの2タイプが用意されるが、BEVモデルのみとなったその走りはいかに?
個人的には最新BEVでベストと思えるモデル
アウディA6が代目にフルモデルチェンジした。A6 e-tronと呼ばれる新型は、「GH」という社内開発コードを持ち、C4〜C8と呼ばれた歴代モデルとは全く異なる次世代プレミアムEセグメントBEVだ。Q6 r-tronに続いて、アウディがポルシェと共同開発した、次世代BEV専用プラットフォーム「PPE(プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)」を採用している。
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今回はスペイン領カナリア諸島のテネリフェで行なわれた試乗会で、BEVに生まれ変わった新型の走りを体験することができた。
全長4928mm、全幅1923mm、全高1487mm(アバントは1527)の新型は、先代A6より若干短いが、40mmほど幅広く、60〜70mmほど背が高い。一方、2946mm(S6は2951mm)のホイールベースは約20〜25mm伸びている。
そのルックスは、4ドアクーペ(正確には5ドアハッチバック)のスポーツバック、ステーションワゴンのアバントともに、とても伸びやかで、いかにも空力が良さそうなシルエットである。実際、新型はエアロダイナミクスを非常に重視してデザインされ、エアロホイールやバーチャルエクステリアミラー(ドアミラーカメラ)、アダプティブエアサスペンションなどを全て装着した場合、スポーツバックが0.21、アバントは0.24という、クラストップレベルの優れたCd値を実現している。
新型のラインナップは、後輪駆動のベーシックモデルであるe-tronと、その高出力バージョンのe-tronパフォーマンス、4WDのe-tronnクワトロ、そして高性能モデルのS6の4タイプ。これら全てにスポーツバックとアバントが用意される。
最初に試乗したのはA6アバントパフォーマンス。リアに367㎰と565Nmを発揮する電気モーターを搭載し、WLTPモードで最大720kmもの航続距離を実現したモデルだ。
新型A6 e-tronは、800Vシステムを用いたBEV専用プラットフォーム「PPE」を採用。バッテリーは、e-tronが3kWh(ネット75.8kWh)で、その他は100kWh(同94.9kWh)。DC急速充電は最大270kWに対応し、10分間で10km走行分の充電が可能となる。
運転席に座ると、新型A5によく似た、アウディの最新コクピットデザインが目の前に広がる。A5と大きく異なるのは、インパネ両端に、バーチャルエクステリアミラーのモニターが備わる点だ。また最新世代のヘッドアップディスプレイには、ARナビの情報も投影され、とても先進的な雰囲気に溢れている。
ドライバー正面には11.9インチのアウディバーチャルコクピットと14.5インチのMMIタッチディスプレイを組み合わせたMMIパノラミックディスプレイを装備。助手席正面には10.9インチのディスプレイが備わる。バーチャルエクステリアミラー装着車は、インパネ両端にモニターが備わる。室内の開放感は抜群だ。
走りは極めて上質だ。アダプティブエアサスペンションは、ダイナミックモードまたはエフィシェンシーモードでは車高が10mm下がり、エフィシェンシーモードで120km/h以上で5秒走るとさらに10mm下がるのだが、乗り心地は常にフラットで、静粛性も抜群。快適性は素晴らしく高い。また車両重量は2250kgと重いが、加速はとても軽快で、ハンドリングも俊敏。テネリフェの険しいワインディングロードでも、十二分に走りを楽しめた。
S6スポーツバックは、さらに素晴らしい出来栄え。こちらもアダプティブエアサスペンションを搭載し、市街地や高速道路では極めてジェントルな走りを披露しながら、ワインディングロードでは2.4トンの車重を忘れさせる、凄まじい加速性能と、抜群にダイナミックな走りが楽しめた。
通常時のラゲッジスペースは、スポーツバック、アバントともに502L。40:0:40の3分割可倒式リアシートを倒せば、最大でスポーツバックが1330L、アバントは1422Lに拡大。またフロントにも27Lのトランクが備わる。
前後のモーターは、合計で503㎰を発揮。最大トルクはフロントが275Nm、リアは580Nmとリア寄りのため、ハンドリングはRWD的。コーナー出口で軽くリアをスライドさせながら加速、なんてことも容易にできる。トルクベクタリングの制御も絶妙だ。
これまでにもプレミアムブランドのBEVは色々と試乗してきたが、個人的には新型A6/S6 e-tronがベストだ。クリーンでラグジュアリーなデザインと仕立てのクオリティ、先進感、上質な走りと、あらゆる面で高いレベルを実現している。日本には2025年半ばに導入となる予定だが、ぜひ多くの人にこの走りを体験してもらいたいと願うばかりである。