国内試乗

是非一度そのステアリングを握ることをお奨めしたい1台!「ランボルギーニレヴエルト」【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

ランボルギーニの凄まじい底力を感じる仕上がり

新たなるフラッグシップとして上陸したレヴエルトを富士スピードウェイで試乗してからというもの、ランボルギーニのハイブリッド戦略に迷いが見られないこともあり、今の時代に適応するにはこの手しかないと実感している。特に昨今、カーボンニュートラルという課題に対してスーパースポーツカーもBEVへと移行する兆しが強く、早々に1000ps級を実現し、その呼び名もハイパーカーと変え定着しつつあるものの、果たしてそれで楽しめるのかという疑問ばかりが浮かんでくることが多かったから昭和世代の筆者にとってはレヴエルトの方向性こそが正攻法だと先の富士スピードウェイで思い知らされた。

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ボディは軽量化のため、カーボンファイバー製のモノコックを採用するほか、各所にカーボンパーツが多用されている。宇宙船を代表する航空宇宙エレメントからの着想と伝統のデザイン手法を織り交ぜることで、アイコニックなバックスタイルを確立した。

というのも今回、いつもの走り慣れたワインディングでレヴエルトに乗って改めて感じたのは、内燃エンジンこそスポーツ! ガソリンこそ快感!という事実を再認識したからだ。レヴエルトのミッドに搭載される6.5リッターV12エンジンは自然吸気式ながらも825psを発揮するが、フロントに150psを出力するモーターを2基組み合わせ、さらにセンタートンネル内の駆動用のバッテリーとV12エンジン後方に搭載される1基のモーターを使用することで、EVによる無音走行から最高1015psのパワーまで実現するという、BEVのハイパーカーたちと同じ1000ps級でもV12エンジンを主役にしたアプローチを採ったのは老舗の意地を感じさせるとはいえ、大正解。テクノロジーの進化を活かすにはBEVのほうが適しているものも確かにあるが、重要なのはドライバーの没入感だろう。それをランボルギーニはレヴエルトを通じて伝えたいのは明白だ。

ミッドに搭載されるランボルギーニ伝統のV12ユニットは最高出力825ps、最大トルク725Nmを発生。エンジン単体重量は僅か218kgと軽量に仕上げられている。これと3基のモーターにより、システム合計出力は1015ps、0→100km/h加速は2.5秒を誇る。バッテリー容量は3.8kWhで200Vの普通充電に対応している。

しかも、その没入感は凄まじいレベルに達している。決して1000ps超えているからではない。ハイブリッドだからという訳でもない。レヴエルトの真骨頂は、V12を主役とする、基本設計の素晴らしさにあると今回の試乗で痛感した。詳細は多くの解説記事が出回っているから割愛させていただくが、新たに開発されたカーボンモノコックとシャシー制御技術のすべてがV12エンジンを活かすためにあることを深く思い知らされる。しかもこれがワインディングでも楽しめるようセットアップされているのが実は意外な驚きでもあった。その理由は、サーキットで体感した驚異的な速さとは別格のエンターテインメント性。おそらく、マラネロの首脳陣がレヴエルトを試乗したならその完成度に舌を巻くに違いない。それほど、ワインディングで見せる走りは魅力的でドハマリする。

おそらく、いや現状、世界でもっともハンドリングが優れているのはこのレヴエルトである。そう言い切れるほど、コーナーでの姿勢とトラクションは秀逸そのもの。進入では驚くほど素直にノーズがインを突き、旋回中の微妙なコントロールも容易、出口付近でのトラクション性は強烈そのものだ。しかも予想に反して常に軽快感があるから驚かされる。サーキットで試乗した時はハイブリッド特有の重量のハンデが目立っていたが、それが不思議なことにワインディングでは一切感じることはなかった。これはドライブモード毎に変更されるパワー値とピックアップレスポンスによるものだと思われるが、サーキットのような全開領域に達さずともドライバーを楽しめせるのは決して容易いことではない。

コクピットはステアリングホイールに操作系コマンドが並ぶなど、シンプルな仕立てに。ダッシュボード中央上部には縦型のタッチスクリーン、助手席には横型のサブスクリーンが備わる。ドライブモードは「チッタ」、「ストラーダ」、「スポーツ」、「コルサ」の4種類から選択でき、PHEVパワートレイン特性の「リチャージ」、「ハイブリッド」、「パフォーマンス」の3種類と合わせて合計13種類の設定から切り替えることができる。

ANIMAと呼ばれるランボルギーニのドライブモードは、「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」のほか、EVのみで走行する「チッタ(Citta)」と用意されるが、言うまでもなくワインディングではスポーツモードが適当。この時の最高出力は907psという設定になり、ハンドリングはランボルギーニらしいダイナミックな方向に誘い込み、矢のように突き進む直進性とアプローチしやすい切れ角で、その気になればテールスライドはお手の物と言わんばかりのコントロール性が特徴だが、レヴエルトの場合は、何よりもフロント側のトルクベクタリングが肝。ブリヂストンと共同開発したタイヤのグリップ力とインフォメーション性の良さもさることながら、電動化によるベクタリングが優秀すぎてドライバーを高次元へと導きながら車両との一体感を味わえる。アクセルコントロールも右足と連動するかのように意思が通じ、わずかな微調整にも敏感に反応するから走ることが抑えられない衝動に襲われる。

タイヤは、オフィシャルテクニカルパートナーを結ぶブリヂストンが専用開発したハイパフォーマンスモデル用の「ポテンザ・スポーツ」が装着。サイズは前265/35ZR20、後345/30R21となる。

ブレーキも同様。まさにパーフェクト!と叫びたくなるほど、このカーボンセラミック&10ピストンの組み合わせは、ギリギリのところまで詰めきれるだけあり、ワインディングでメリハリのある攻め方を実行できる。これは間違いなく歴代最高峰の完成度だろう。12気筒搭載車でここまでワインディングを攻められるスーパースポーツははじめてである。おかげでコーナーからコーナーがあっという間に迫ってくるから楽しくて仕方がなかった。おまけに軽快感に加え、車両サイズはひと回り小さく感じるほど全体の動きが素直だから尚さら。エンジンが180度回転した影響で8速DCTが横置きに搭載されてはいるものの、DCTゆえにマイナス面など一切感じることもないし、むしろその変速スピードとダイレクト感に感謝したくなるほど素早く反応する。

技術的なトピックは数多くあるとはいえ、結局は“乗ってなんぼでしょ!”というメッセージを直球で投げかけられる仕上がりだ。言うなれば、ハイブリッド技術を効果的に活かすことで、1周まわってピュアスポーツを完成させた印象である。これならランボルギーニの未来は明るい。そして、その底力は凄まじい。フェラーリ、ポルシェ、マクラーレンと、レーシング直系のブランドを信じ切っているオーナーこそ、騙されたと思って一度そのステアリングを握ることをお奨めしたい。確実にランボルギーニの印象は一変するはずだ。もちろん、この後上陸するV8ハイブリッドスポーツのテメラリオも期待して良いだろう。

【Specification】ランボルギーニ・レヴエルト
■車両本体価格(税込)=65,430,000円
■全長×全幅×全高=4947×2033×1160mm
■ホイールベース=2779mm
■トレッド=前:1720、後:1701mm
■車両重量=1772kg
■エンジン型式/種類=ー/V12DOHC48V
■内径×行程=95.0×76.4mm
■総排気量=6498cc
■最高出力=825ps(607kW)/9250rpm
■最大トルク=725Nm(73.9kg-m)/6750rpm
■モーター形式/種類=ー/永久磁石同期電動機
■モーター最高出力=前:150ps(110kW)※一基あたり、後:150ps(110kW)
■モーター最大トルク=前:350Nm(35.7kg-m) ※一基あたり、後:150ps(15.3kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前後:Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)前:265/30ZR21、後:355/25ZR22

問い合わせ先=ランボルギーニジャパン TEL0120-988-889

フォト:篠原晃一/KShinohara

この記事を書いた人

野口優

1967年生まれ。東京都出身。小学生の頃に経験した70年代のスーパーカーブームをきっかけにクルマが好きになり、いつかは自動車雑誌に携わりたいと想い、1993年に輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。経験を重ねて1999年には三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務。2008年から同誌の編集長に就任し、2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。フリーランスとしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動している。

野口優

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