コラム

ドイツのカー・オブ・ザ・イヤーはBMW 5シリーズが受賞! 【池ノ内ミドリのジャーマン日記】

ドイツカー・オブ・ザ・イヤー

ADACの評価テストではID.7がトップに輝く

まだまだ寒い日が続くドイツですが、冬至が過ぎてからは少しずつ日没が遅くなり、夜明けも早くなってきていて、春の訪れが待ち遠しい毎日です。日本のJAFと同様の機関のADAC(ドイツ自動車連盟)。ドイツで自動車を運転する事になったと同時に会員になってから早10数年。本来の様々な自動車に関するサービスの他にも、自動車保険、海外旅行保険、事故保険、弁護士保険(自動車保険の特約にはなく、別途単体で加入)でお世話になっている他、DTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)やニュルブルクリンク24時間レースの主催者でもあるADACには、プライベートから仕事まで大変お世話になっています。

ニュル24h BMW

ニュル24hでのBMW M車両の展示

ADACは日頃から様々な自動車の評価テストをして会報誌やウェブサイトなどで公表しています。ドイツ車を中心にドイツ国内で販売されている輸入車も含めて内燃系とEVも含めて2024年は84台の車両をテストし、その総合的に1位から84位まで評価した順位を発表しました。ADACのエンジニアの方々によって評価ポイントは約300項目以上もあり、燃費や車内サイズの測定値を収集し、扱いやすさやアシスタンスシステムの機能をテストなど、かなり多岐に渡ったテストだったようですが、私のように一般的な知識しかない者にも分かりやすく大きく分けて以下の項目で評価をしました。

テスト項目の主な評価点
•ボディ剛性/トランクルームの実用性
•内装
•快適性
•トランスミッション(操縦性やトルクなど)
•走行特性
•安全性
•エコテスト

84台の内訳は、ガソリン車:22台、クリーンディーゼル車:16台、ハイブリッド車:16台、ガス車:1台、電気自動車:29台です。テスト車両野中で電気自動車が一番多いというのが世相を表していますね。コンパクトカーから高級車まで、様々な車種がミックスされています。

ADACの選ぶ『良いクルマ』のまずトップ10をご紹介しましょう。
10位:ジェネシス G80 Electrified AWD(EV)
9位:アウディ Q4 Sportback 45 e-tron(EV)
8位:スコダ Superb Combi 2.0 TDI SCR Selection DSG (EV)
7位:メルセデス-ベンツ EQE SUV 350+ Electric Art Advanced(ディーゼル)
6位:Kia EV9(EV)
5位:スコダ Enyaq 85x(EV)
4位:ポルシェ Taycan Performancebatterie Plus(EV)
3位:BMW i5 eDrive40(EV)
2位:VW ID.7 Tourer GTX(EV)
1位:VW ID.7 Pro(EV)

上位10台中9台がEVという評価に驚きを隠せません。様々なポイントを総合した平均点で順位が決められているようですが、本当にどれも僅差のようです。数年前まではEVが上位を占めるなんて、自動車王国のドイツには考えられなかった事です。

では、その一方でワースト10はどんなラインアップになっているのでしょう。
10位:スバル Crosstrek 2.0ie(ガソリン)
9位:MG MG3 1.5 Hybrid+(ハイブリッド)
8位:日産 Juke 1.0 DIG-114(ガソリン)
7位:Hyundai i20 1.0 T-GDI(ガソリン)
6位:スズキ Swift 1.2 Dualjet Hybrid(ハイブリッド)
5位:Hyundai  i10 1.0 T-GDI(ガソリン)
4位:Kia  Picanto 1.0(ガソリン)
3位:SsanYong  Torres 1.5 GDI-T(ガソリン)
2位:SsanYong Tivoli 1.5 GTI-T(ガソリン)
1位:Dacia Duster TCe 100 ECO-G(ガス)

ワースト10に3台の日本車がノミネートされているのが気になります。ちなみにワースト10に続き、11位もスバル Impreza 2.0ieがエントリーしました。6位のスズキ スウィフトは車両価格やエコテストでは非常に高得点でしていただけに残念。8位の日産 ジュークは安全性とエコテストは良い点数でした。10位のスバル Crosstrekはエンジンと安全性は良い点数が付いていました。どのクルマも特に物凄く悪い点を獲得はしていなかったものの、内装や快適性などの点数が少しだけ低かった、その程度だと思います。

日本車の中で一番上位だったのが37位にランクインしたトヨタのプリウス2.0 Plug-In Hybridです。予想では11~20位辺りには日本車は何台もランクインしているのではないかと思っていただけに、ドイツに住む日本人としてはなんとも複雑です。日本では毎日必ず何台も見掛けるプリウスですが、住むミュンヘン市では年に数回程度しか見掛ける事がありません。タクシーではプリウスプラスという少し大きな車両が数多く走っていますので、そちらの方が身近に感じます。

ドイツカー・オブ・ザ・イヤー日本と同様にドイツでもカー・オブ・ザ・イヤーは毎年開催されており、『German Car of the Year』で略して『GCOTY』というそうですが、ドイツに長年居住しておりながら、その存在をいままで全く気に掛けて来なかった事にお恥ずかしい限りです。
こちらの『GCOTY』はモータージャーナリストの方々が評価されるのに対し、ADACはエンジニアの評価となりますので、視点や評価点も多少は違いますので選出されるクルマも違うでしょうね。

日本でも毎年年末近くに、日頃数多くの乗用車の試走や評価をしていらっしゃる自動車ジャーナリストの方々が選考委員となってカー・オブ・ザ・イヤーが開催されていますね。昨年末にも日本のメディアを通じて、日本のカー・オブ・ザ・イヤーの様子を拝見していた事もあり、ドイツのカー・オブ・ザ・イヤーではどんなクルマがそれらに選出されているのか、ふと興味を持ちました。特にドイツでは日本のように大々的にアピールもしていないだけに、その存在をご存知の国民の方は少ないのではないかと思います。

ドイツ在住の自動車ジャーナリストを中心に、外国からのゲスト審査員も含め総勢38名の方々がこの『GCOTY』の審査に当たられています。国際的に長年ご活躍の有名な木村好宏氏のお名前も審査員名簿に記載してありました。この『GCOTY』に関して調べてみたのですが、どんな車両が各クラスにノミネートされたのか等、情報は一切分からず、各クラスの1位のみが発表されました。ちなみに評価車両には日本のブリヂストンが全車装着されていたようです。

ドイツの『GCOTY』では以下の5つのカテゴリに分かれてノミネート、審査されて各クラスの優勝車は以下の通りです。
•コンパクトカー(3万5千ユーロ以下):Citroën ë-c3 / C3
•プレミアムカー(7万ユーロ以下):BMW 5 シリーズ / i5
•ラグジュアリー(7万ユーロ以上):Cadillac Lyriq
•ニュー・エネジー(車体価格関係なし): Audi Q6 / SQ6 e-tron
•パフォーマンス(車体価格関係なし):Porsche 911 GTS T-Hybrid

そして、『German Car of the Year 2025』には、BMW 5 シリーズ / i5が大賞を受賞したのですが、なんとADACの評価テストで選ばれた良いクルマの第3位にこのi5が入賞していました。16位に520d Touring、17位には520dがランクインするなど、双方から評価が高いという事は、クルマの買い替えをご検討されている方にとっては参考になるかも知れませんね。
他にもヨーロッパのカー・オブ・ザ・イヤーも別途開催されており、そちらで最終選考に残った車両はコチラの7台で、Renault 5 / Alpine A290以外は全てSUVというのが、欧州に長く続くSUVブームを現しています。
Alfa Romeo Junior
Citroën C3/ë-C3
Dacia Duster
Cupra Terramar
Hyundai Inster
Kia EV3
Renault 5 / Alpine A290

ヨーロッパカー・オブ・ザ・イヤーヨーロッパのカー・オブ・ザ・イヤー2025を制したのはRenault 5 / Alpine A290です。まだドイツの公道で走っている姿を見掛けた事はありませんが、数年前のル・マン24時間レースのパドックでコンセプトモデルが展示されているのを観てから興味があり、乗ってみたいなと思っていました。このヨーロッパのカー・オブ・ザ・イヤーにはエントリーの中に日本車は複数台入っていましたが、最終選考に残らなかったのが残念ですが、中国や韓国車がどんどん勢力を広げる中で、欧州の中の日本車の立ち位置が以前とは確実に変わっているのを感じています。

ル・マン24h ロータス

ル・マン24hレースのロータスの車両展示

私は自動業界の中のモータースポーツという非常に狭い世界に身を置いてはいるのですが、自動車メーカーの量販車のご担当の方々とお会いする機会や試乗会などに伺う事は非常に少ないのです。ドイツメーカーでいうと、BMWのMやポルシェ、メルセデス-AMGは量販車とモータースポーツ部門が非常に密接で、レーシングカーと量販車の両方の開発をご担当されている場合もいらっしゃいますので、サーキットで開発責任者をはじめ、その関連の方々もお見掛けしますが、一般の乗用車のご関係者にはなかなかお会いする機会がないのが残念なところです。

WEC(世界耐久選手権)やデイトナ/ル・マン/スパ/ニュルブルクリンク24時間レースをはじめとした大きなレースのレースウィークではパドックの自動車メーカーさんの展示ブースが設置されている場合があるのですが、各ブースに工夫がされておりグッズ販売も充実していますので、ファンの皆さんと同様に私もそれらを見に行くのをとても楽しみしています。

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