
ブリヂストンのプレミアムタイヤ「レグノ」。その静粛性の高さを武器に、1981年の初代「RGー01」から同社のフラグシップモデルとして歴史を重ねてきた看板タイヤだ。そのレグノが昨年、11代目となる「GR-XIII」へとフルモデルチェンジを果たした。そして約1年の歳月を経て、今回ご紹介する「GR-XIII type RV」がそのラインナップに加わった。
レグノを静粛性を維持しつつRV向けにチューニング
GR-XIII type RVはその名前からもわかる通り、「RV」を対象としたレグノGR-XIIIだ。そもそもブリヂストンはレグノにミニバン向けの仕様として「GRV II」を用意してきた。となれば後継モデルは「GRV III」になりそうなものだが、今回からその名称は「GRーXIII type RV」となった。そしてその対象はミニバンに留まらず、昨今の潮流であるコンパクトSUVまでをカバーするようになった。
【画像15枚】RV向けにチューニングが行われた「レグノGR-XIIIタイプRV」のフォトギャラリーはコチラ
ちなみにブリヂストンのSUV用タイヤといえば「ALENZA」シリーズを思い浮かべるが、こちらはレグノではないのはもちろんのことながら、ミドルサイズ以上のSUVを想定したタイヤという棲み分けがなされている
レグノ GR-XIII type RV(以下タイプRV)は名前だけでなく、そのアーキテクチャーもシンプルなものに変わった。具体的にこれまでの流れと大きく異なるのは、そこに「余計な補強」を与えなくなったことだと開発陣は筆者に語った。
BRIDGESTONE REGNO GR-X III type RV

GR-XⅢ type RVには、ブリヂストンが新世代の基礎性能として掲げる「ENLITEN」(エンライトン)テクノロジーを搭載。これはタイヤを「薄く・軽く・円く」作る技術で、実際にタイヤを触り比べてみても、そのしなやかさを感じ取ることができた。
同じサイズのタイヤを履いてもミニバンやSUVは、セダンに比べて重心が高く車重も重たくなる。従来ならこうした車両の挙動を安定させるためにブリヂストンは、サイドウォール剛性を高め(すなわち補強を施して)来たわけだが、タイプRVの構造はセダン用GR-XⅢとまったく同じだ。唯一違うのは、イン側のショルダー部分に「ダイヤモンドスロット」と呼ばれるパターンが入ったことで、接地面を増やしながら剛性を上げるチューニングが施された。その結果タイヤの重量は、開発ターゲットであった先代アルファード/ベルファイアの205/60R16サイズで、1kg近く軽くなったという。

クローズドコースでは、クラウンクロスオーバーとアルファードで、スラロームや凹凸路を旧モデルのGRVIIと比較試乗したが、操舵応答性の良さや、ロール剛性が高くなっているのが感じられた。
実際の走りは、確かに旧モデルGRV IIIと比べてGR-XIII type RVの操舵応答性が良くなっていた。常用域を想定したスラローム(40km/h)やレーンチェンジ(60km/h)での操舵追従性がリニアで、結果として乗員の頭が大きく振られない。イン側トレッドの剛性アップで直進性や据え切り時の対摩耗性は向上すると想像できたが、ロール剛性も上がっているのにはちょっと驚かされた。
そしてこうしたライトチューンだけで走りが大きく変わった背景には、ブリヂストンが新世代の基礎性能として掲げる「ENLITEN」(エンライトン)テクノロジーが効いているのだと実感した。
それはタイヤを「薄く・軽く・円く」作る技術の総称で、実際カットモデルを触ってみるとタイプRVのサイドウォール断面はGRV Ⅱよりも格段に薄かった。そして実際にタイヤを触り比べれば、そのしなやかさを感じ取れた。
ブリヂストンは今後このエンライトン・テクノロジーをコアとしながら、各モデルのキャラクターを上乗せする。レグノで言えばそれは静粛性になるわけだが、商品ごとの性能にエッジを効かせて行くのだという。
垂直方向の入力に対しては、旧モデルの方が当たりは柔らかいと感じた。タイプRVは入力を素早く減衰する特性で、収まりが速い分クッション感は少ないが、縦方向の揺り戻しがなく酔いにくいと言えるだろう。この剛性が車両側の造りの悪さによっては若干NVHやビビリ音を出してしまう一面もあるが、今後クルマの車重が増え続けて行くだろうことを考えると、このくらいの強さはあってもよいのだろう。またたわみが少ない分、燃費もよくなるかもしれない。ちなみに転がり抵抗性能は、全29サイズのうち9サイズで「AA」、残りで全て「A」を獲得している。
一般路では新旧モデルを乗り比べられなかったが、肝心要な静粛性は見事だった。特にピュアEVであるメルセデスEQAとのマッチングは良好で、ロードノイズを高いレベルで抑えた走りはレグノの本領発揮と言えた。乗り心地はセダン用「GR-XIII」の方がしっとりしており、できればコンパウンド剛性を高めた上で同じ乗り味を実現して欲しかったが、開発陣にとってSUVやミニバンの走安性確保とハンドリング性能向上は、最優先事項だったのだろう。乗り心地の良さとは、単に柔らかいことではない。運転しやすさや酔いにくさも含めての快適性だとすれば、レグノ GR-XIII type RVは狙い通りのプレミアムタイヤに仕上がっていると言える。
問い合わせ先=ブリヂストン TEL0120-392936 https://tire.bridgestone.co.jp/