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【BMWアルピナB3GT試乗】アルピナマジックの集大成に相応しい感動的な乗り心地

BMWアルピナB3GT

アルピナの本拠地、ブッフローエで生産される最後のモデルとなるB3GTが上陸。その内容は従来型B3のアップデート版とも言えるものだが“らしさ”は十二分。高性能セダンとしての魅力度は、まさに「集大成」と呼ぶに相応しいものだった。

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高性能セダンらしからぬ上質なライド感を披露

BMWをベースとしながら、いざ走らせてみれば乗り手に独自のキャラクターを見せつける……。クルマ好きは、長年それを「アルピナ・マジック」と呼んできたわけだが、B3GTリムジンの出来栄えはまさにマジックそのものだった。本拠、ブッフローエ産としては最後の量産車となるこのモデルは、従来のB3比でエンジンパワーを34ps上乗せしシャシー回りをリセッティング。内外装も、決して派手ではないが独自のディテール、装備が採用されている。つまり門外漢からすればマイナーチェンジ版、あるいは体のいい限定車的なイメージすら抱かれかねないメニューなのだが、走りのテイストに限れば、そこには長年マニアを魅了してきた”アルピナ流”が凝縮されているのだ。

B3GTでは、リアディフューザーやテールパイプはハイグロスブラック仕上げとなり、さりげなくも精悍なイメージに。リアのエンブレム等も含め、外観はGTのデザインカラーとなるオロ・テクニコ(淡いゴールド)でコーディネートされている。

試乗にあたっては、ニコル・オートモビルズの広報担当から「走行モードはコンフォートプラスがオススメです。上質なフランス車のような乗り心地ですよ」とのコメントを頂戴していた。その昔、フランス車を何台か乗り継いでいた筆者的には正直なところ少し疑心暗鬼な思いを抱いたが、確かに乗り心地の良さは走り出した瞬間からオススメされたコメント通りのものだった。

前後20インチ、35/30扁平の戦闘的なタイヤを履くだけにロードノイズこそサイズ相応。だが、路面からの当たりは特にコンフォートプラス選択時では3シリーズがベースとは思えないほどに重厚、かつ滑らか。もちろん、昔日のフランス車に見られた良い意味での脱力感とはベクトルが異なるが、”現象”として得られる快適性は勝るとも劣らない。

エンジンルームは、左右ストラット頭長部を結ぶ補強材が目立つ。アルピナいわく、フロントエンドの剛性を高め操舵時の精度が大きく向上しているという。エンジン本体は従来比で34㎰が上乗せされている。

そして、驚くべきは前述の走行モードを選択していようとピッチングに類する上下動を意識させないこと。引き締まった足回りとロープロファイルなタイヤの組み合わせとなれば、路面からの入力を穏やかにする際には多少なりともピッチングの類が出るのは普通。しかし、B3GTでは当たりの優しさとフラットな姿勢が両立されるので、高性能セダンに相応しいダイレクト感を安楽な気分のまま愉しむことができる。いまや硬く、引き締まってはいても乗り心地の良いスポーツモデルは珍しくなくなったが、本来は相反する要素をここまで高いレベルで兼ね備えたクルマには、なかなかお目にかかれるものではない。

そんなアルピナらしい品の良さは、スポーツモードを選択しても変わらない。コンフォート、あるいはコンフォートプラス選択時と比較すれば足回りのダイレクト感は明確に高まるのだが、乗り心地は相変わらず高性能セダンとして十分に容認できるレベル。変位の速い入力があっても無粋な突き上げ感とは無縁なので、乗る人によっては日常域からスポーツモードに入れっぱなしでも苦にはならないかもしれない。

もちろん、スポーツモデルとしての絶対的なシャシー性能も十分に高い。駆動方式が4WDということで、正直オンロードで悪戯をする程度だと限界域を探るのは難しい。セオリーを守る範囲内では盤石と言える安定感を発揮。よほど意図的な操作でもしない限りドラマチックな挙動に陥ることはなく、呆れるほどの速さであっけなくコーナーをクリアしてしまう。また、そうした場面で印象的なのは雑味のない滑らかなステアフィール。パフォーマンス相応にシャープでいながら上質感を意識させる点は、いかにもアルピナらしい。前述の通り、乗り心地は終始〝リムジン〟という車名からイメージされる通りの仕上がりだけに個人的にはスポーツ、あるいはスポーツプラスモードではもう少しアドレナリンの分泌を促すような味付けでも良い気もした。とはいえ、このあたりのサジ加減は意図的なものなのだろう。ヒリヒリとしたわかりやすい刺激を求めるなら、いまや日本仕様は駆動方式が変わらないM3セダンをどうぞ、というわけだ。

M3とは対照的な上品なパワーユニット

S58というエンジン型式から察せられる通り、B3用からパワーが上乗せされた直6ツインターボはM33などに使われているものとベースが同じ。トランスミッションも同じ8速ATで、ギア比もM3のそれと変わらない。だが、味付けは同じものとは思えないというのが実際のところだ。

数値上、B3GTではパワーがM3とほぼ同じ529ps。トルクは80Nmそれを上回る730Nmをより低い回転域から発揮する設定になっている。走らせてみると、そのフィールは数値からイメージされる通りで、B3GTは低中速、特に中速の充実したトルク感が印象的。日常域、あるいは多少飛ばす速域ではこのトルクの太さが威力を発揮し、走行モードを問わずM3比での力強さを実感できる。もちろん、この領域M33用ユニットに不足があるわけではないが、何気ない走らせ方ではB3GT用の方が力強さ、細かなアクセル操作に対するツキの良さを実感できるという違いだ。

外観と同じく、パドルを筆頭として随所にオロ・テクニコの差し色が入るインテリア。基本的にはマイナーチェンジ後の3シリーズに準じた仕立てだが、M3と同じくセンターコンソールにはシフトセレクターが残された。

一方、高回転になるとB3GTは端正な吹け上がりが、M3は弾けるようなパワー感が実に対照的だ。多少、ラフな息遣いながら一気に頂点を極めるかのようなM3と比較すればB3GTはここでも上品な印象が先に立つ。リミットに至る過程でパワーが目に見えて衰えるわけではないが、漸進的に力感が収束していく風情なので直6らしさという意味ではこちらの方がわかりやすい。そのぶん、人によってはM3より積極的に走らせた際に線が細いと感じるかもしれないが、こうした部分はもはや好みの問題に過ぎないだろう。むしろ、個人的には基本が同じパワートレインでありながらキャラクターの明確な差別化を実現しているアルピナの手腕に驚きを感じずにいられない。

ちなみに従来型B3用に対する34㎰の上乗せ分は、正直明確にはわからなかった。単に筆者の感性が鈍いだけかもしれないが、従来型のユーザーがB3GTに接して落胆する心配はないと思う。

さて、このように走りの仕上がりをチェックしていくとB3GTがいかにアルピナらしい出来栄えであるかが理解できる。BMWとは別の価値を提供する、という意味ではブッフローエ産の最終章に相応しい内容であることは確か。となれば、気になるのは今後BMWが自らリリースするであろうアルピナ車。個人的には、このB3GTに至る味わいがしっかり守られることを願ってやまない。

【SPECIFICATION】BMWアルピナB3GT
■車両本体価格=16,800,000円
■全長×全幅×全高=4725×1827×1440mm
■ホイールベース=2851mm
■トレッド=前:1577、後:1572mm
■車両重量=1875kg
■エンジン形式/種類=S58V30A/直6DOHC24V+ ツインターボ
■総排気量=2993cc
■最高出力=529ps(389kW)/6250-6500rpm
■最大トルク=730Nm(74.4kg-m)/2500-4500rpm
■燃料タンク容量=59L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前255/35R20、後265/30R20
問い合わせ先=ニコル・オートモビルズ TEL0120-866250

フォト=篠原晃一
小野泰治

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