国内試乗

今度のBMW1シリーズはとにかくスゴイ!

BMWブランドにおけるエントリーモデルながら“駆けぬける歓び”を全身でアピールする新型1シリーズ。新型はマイルドハイブリッドシステムを採用するほか、最新テクノロジーの採用で走行性能はより力強く、軽快かつきびきびした走りを手に入れている!

ワイド&ロー感が強調されスポーティな雰囲気に

2004年に3シリーズ・コンパクトの後継モデルとしてデビューした1シリーズ。Cセグメントに本格参入したカタチだが当時はクラス唯一のFRということでライバルと一線を画していた。ところが2019年に登場した3代目はFFへスイッチ。熱心なBMWファンからは嘆きの声も聞かれたが、販売台数は右肩上がりで累計台数は300万台とBMWの屋台骨にまで成長している。
4代目となる新型はキドニーグリルもヘッドライトも横長になったことでワイド&ロー感が強調され、覚的に長いボンネットも相まって従来よりもスポーティな雰囲気になった。また、最近のBMWに続々と採用されている光るグリルのアイコニックグローも用意されている。
プラットフォームは従来と同様でホイールベースはかわらず、ボディサイズもほとんど同一。ドアの形状なども酷似していることから、事前には「ビッグマイナーチェンジに近いフルモデルチェンジ?」と噂されていたが、シャシーには大幅に手が入れられている。フロントサスペンションはキャスタートレールが約20%拡大され、各コンポーネントはほとんどが新規開発。軽量・高剛性であるとともに、ボディとの接合剛性も強固なものとされている。フロントアクスル関連はほとんど作り替えたようで、立派にフルモデルチェンジといえる内容。開発コードは従来のF40からF70となった。

スリーサイズは、全長が+51㎜の4370㎜、全幅は同じ1800㎜、全高は+31㎜の1450㎜でホイールベースは先代と同じ2670㎜となる。サイドから回り込んだ形状とモダンなグラフィックで目を惹くテールライトが、リアのワイドなスタンスを強調する。写真はエントリーモデルの120。

日本仕様はいまのところ120と135xDrive。BMWはガソリン車の車名に付けていた「i」を省略することになったので、両車ともガソリンエンジンを搭載する。前者は直列3気筒1.5Lターボで駆動方式はFF、後者は直列4気筒2Lターボで4WDとなる。まずはエントリーモデルの120で走り始めると最高出力156㎰、最大トルク240Nmというスペック以上に頼もしくドライバビリティがいいのがまず印象的だった。

エンジン本体も低回転な1500rpmから最大トルクを発生することに加えてMHEV(マイルドハイブリッド)のアシスト効果も少なくないようだ。BMWのMHEVにはベルトドライブ式とトランスミッション内蔵式があり、120が採用しているのは効果が大きいとされる後者。15kW(20㎰)/55Nmのモーターが搭載されていて、とくにエンジンが苦手としている超低回転域でアシストするので、発進時や巡航から加速へ移る際などに頼もしさがある。1500rpmを割ったところからでもアクセルを踏み増すとグイッと前に出て行くのだ。そういったこともあって絶対的なパフォーマンスはさほど高くはないものの、一般的な走行で不足を感じることはなかった。

アクセルを深く踏み込んでいけば6000rpmまでスムーズに、それなりの勢いを伴って回っていく。3気筒特有のサウンドではあるが、軽自動車から連想するような安っぽさはなく、元気でスポーティ。スポーツモードを選択するとDCTの変速スピードがあがり、軽くシフトショックがあるのも気持ちいい。切れ味のいいフィーリングなのだ。

インテリアは、メーターパネルとコントロールディスプレイを一体化させ大型化し、運転席側に傾けることで視認性を高め、タッチ操作による操作性を高めたBMWカーブド・ディスプレイを採用し、最新のBMWオペレーティング・システム9を搭載。写真のシートはオプションのスポーツシートを装着。

120にはBMW初となる、キドニーグリルに斜めのデザインを採用。Cピラーには数字の1があしらわれる。ガソリンエンジン車を意味する「i」の文字が新型1シリーズより廃止となり、今後「i」は電気自動車のみに使われる。

120には1.5L直列3気筒エンジンに48Vマイルドハイブリッドシステムを組み合わせ、システムトータル最高出力170ps/最大トルク280Nmを実現する。40:20:40分割可倒シートの採用により、ラゲッジ容量は大人3名乗車時には380L、リアシートを前方に全て倒すことで最大1,200ℓにまで拡大。

快適性を重視するか?コーナリング性能か?

シャシーではまずステアリングフィールが良くなっていることに気付いた。中立付近がわかりやすく、微舵領域での反応もいい。従来も優れていたのだが、それ以上に感じられるのはキャスタートレールを増加させたからだろう。高速道路での直進安定性もひと際高くなっていたうえに、コーナリングの初期でも良さがある。操舵していったときにキャンバー角がつく方向になるので、コーナー入り口でよりグリップを感じるのだ。
コーナー脱出に向けてアクセルを踏み込んでいったときの所作も素晴らしかった。FFだからフロント内側のタイヤが空転しそうになるのだが、それを制御が瞬時に抑えてくれるのでアンダーステアにならず、トラクションが強力。内側のブレーキをつまんでいるだけなのだが、その制御スピードにBMWはこだわっているのだ。以前はDSCのECUを経由していたが、それを飛ばしてエンジンのECUで直接制御。これで最大10倍は制御が早くなるらしい。従来モデルでも採用していたが、さらに進化したようだ。
M135は300㎰/400Nmと強力なエンジンを搭載したホットハッチで、加速は強烈だ。アクセルを踏みつければ6000rpmオーバーまで迫力のある、ちょっと人工的なサウンドとともに素早く吹け上がっていく。最近のハイパフォーマンスBEVなどのように気持ち悪いほど速いわけではない、エンジンの鼓動を感じながら、楽しむには十分な速さがあるのが嬉しい。

写真はM135 xDrive。左のパドルシフトを1秒間引くことで、すべてのパワートレインとシャシーシステムを最もスポーティな設定に切り替えられる「Mスポーツブースト機能付き7速ダブルクラッチトランスミッション」をはじめ、アダプティブMサスペンションといった専用装備を纏う。

アダプティブMサスペンションは周波数感応型の新型ダンパーを採用。凹凸が連続するような場面ではソフトに、コーナーリングで負荷がかかるとハードになる仕組みだが、M135 xDriveはそもそもが硬めの設定なので、今どきとしては珍しくゴツゴツとした感触もある。試乗車は、まだおろし立てでサスペンションが馴染んでいないことも関係ありそうだがずいぶんと硬派な乗り味だ。ホットハッチとしては許容できるレベルではあるが、快適性を重視するのなら120を選択するべきだろう。
そのかわりにコーナリング性能は圧倒的に高く、ワインディングロードでの楽しさは格別だ。あらゆる面で進化が感じられる新型1シリーズだが、なかでも印象的なのはハンドリングだった。その味わいはBMWのFRに近い。「このセグメントの顧客は駆動方式にこだわらない」とBMWは言っていたが、じつは自分達がFRと同等の楽しさを追い求めているのではないか? そんな気さえするハンドリングの進化に、いちファンとして嬉しくなったのだ。

最高出力300psを発揮するM135 xDriveは、本格的なサーキット走行で培われた技術を余すことなく取り入れ走行性能を高めており、Mパフォーマンスモデルに相応しい駆けぬける歓びを提供する。

【SPECIFICATION】BMW 120
■車両本体価格=4,880,000円
■全長×全幅×全高=4370×1800×1465mm
■ホイールベース=2670mm
■トレッド=前:1560、後:1560mm
■車両重量=1460kg
■エンジン形式/種類=直3DOHC12V+ターボ
■総排気量=1498cc
■最高出力=156ps(110kW)/5000rpm
■最大トルク=240Nm(24.5kg-m)/1500-4400rpm
■燃料タンク容量=49L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速DCT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前205/55R17、後:205/55R17
問い合わせ先=BMWジャパン TEL0120-269-437

フォト=郡 大二郎 ルボラン2025年2月号より転載
石井 昌道

AUTHOR

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。自動運転や電動化への造詣も深い。

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