老いたるは若きにハンドル(ステアリング)を譲り、まかせること。黙って去っていくのではなく、大切なメッセージを同時に託すこと——ジョージ・トテフは引退作のテーマにこの'53インディ・ペースカーを選び、金型をリンドバーグ1/25キット随一の傑作に仕上げ、市場に送り出した。「なんだ、マッスルカーじゃないのか」「50'sカーは俺嫌いなんだよね」と短絡する者たちは吐き捨てただろうが、謙虚な気持ちでキットと向き合えば、そこにはすばらしい経験と知恵が詰まっていることが誰にでもわかるだろう。
写真:羽田 洋、秦 正史