もう一方はキットの完成見本である。最近なにかとずり落ちるようになった老眼鏡をメンテナンスに出すファンが続出してもおかしくないような、息を呑む仕上がり。シュリンクフィルムを剥がす前から「これは傑作だ」と断定しても誰も困らない。21世紀のプラモデルは半世紀もの試行錯誤を歴史の彼方に追いやって、「誰でも気軽に組める究極」をついに発売するに到ったわけだ。繰り返すがこれは2010年、ついさっきのできごとである。姉妹キットのローランド・レオンズ・ハワイアンとあわせ、アメリカンカープラモ市場はいまだこの衝撃をあっけにとられて凝視し続けている。
写真:羽田 洋、秦 正史