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【1300キロ乗り比べ】ルノー新型「キャプチャー」の「フルハイブリッドE-TECH」と「マイルドハイブリッド」の違いは? 乗り味と燃費をリポート

リニューアルして「エスプリ アルピーヌ」の名を冠したキャプチャー

大胆な変貌を遂げたフロントフェイスを引っさげて、大幅アップデートを受けたルノー「キャプチャー」。パワートレインはフルハイブリッドE-TECHとマイルドハイブリッドの2種類が用意されるとともに、「エスプリ アルピーヌ」グレードでは、BセグメントSUVとしては異例の19インチホイールを標準装備するのが特色だ。はたして履きこなせているのだろうか?

【画像22枚】フランス流「スポーツシック」とは? 新型「キャプチャー・エスプリ アルピーヌ」の詳細を見る

6月28~29日は名古屋で新型キャプチャーの展示・試乗会が開催

ルノーのコンパクトSUVのベストセラーモデル、キャプチャーが2025年6月5日にビッグマイナーチェンジを受けた。それにあわせてルノー・ジャポンでは6月に「新型ルノー キャプチャー 3都市展示・試乗会」を開催しており、ル・ボラン編集部も試乗車や展示車の解説に協力している。

すでに行われた東京・二子玉川 蔦屋家電と兵庫・阪急西宮ガーデンズでのイベントに際して、展示車両の搬送などのため、「エスプリ アルピーヌ」のフルハイブリッドE-TECHとマイルドハイブリッドの両方に、合計で約1300kmほど乗ることができたのでインプレッションをお届けしよう。

なお、この新型キャプチャー展示・試乗会の3回目は、今週末の6月28日(土)と29日(日)の10:00~18:00に、愛知県名古屋市の星が丘テラスで開催予定だ。展示および試乗車には「エスプリ アルピーヌ フルハイブリッド E-TECH」が用意され、試乗は事前申し込み不要で、先着順での受付となる。
■星丘テラス アクセス

アサーティブなデザインで存在感アップ! 車幅はそのまま1.8m以下

さて、新キャプチャーで何といっても最大の変化は、フロントデザインの刷新だ。従来の、ノーズの輝く菱形のルノー・エンブレム「ロザンジュ」を中心とした「ヴァン・デン・アッカー顔」から、水平方向を強調してエッジのきいた、モダンな表情となっている。ボンネットも今回のマイナーチェンジにあわせて、厚みと立体感を増している。

デザインコンセプトは「アサーティブ(際立つ)」で、強い主張を持ちながら調和を忘れない、とのこと。ロザンジュを取り囲んでブロックパターンが並ぶグリル部分はポリカーボネート素材が採用されていて、光りモノとは異なるしっとりした質感と陰影をもたらしているのも、アサーティブの表れだろう。

左右の大きなデイタイムライトはロザンジュの菱形を分割したイメージで、遠くから見ても新型キャプチャーだと識別できる要素。これらがアイキャッチとなってワイドな印象を強調しているわけだが、実際の車幅は1795mmでマイチェン前と同じだ。

パワートレインはフルハイブリッドとマイルドハイブリッドの2本立て

ラインナップ構成も一新された。従来は1.3L直列4気筒ターボエンジンの「インテンス」と、1.6L直4自然吸気エンジンにメインモーターとサブモーターを組み合わせた「E-TECHフルハイブリッド」の2本柱から成っていたのに対して、1.3L直4ターボに補助モーターと12Vリチウムイオンバッテリーを組み合わせた「マイルドハイブリッド」と「フルハイブリッドE-TECH」(語順が変わっている)の2本立てに。

そして「アルカナ」ですでに導入されていたスポーティなグレード「エスプリ アルピーヌ」がキャプチャーにも導入され、2種類のハイブリッドモデルに適用される。ほかに、ベーシックなグレードの「テクノ」がマイルドハイブリッド仕様で用意され、計3グレードのラインナップとなる。

10.4インチのタッチスクリーン採用で快適性が向上

今回の展示・試乗イベントに用意されたのはエスプリ アルピーヌのフルハイブリッドE-TECHとマイルドハイブリッドの2種で、試乗したのも同様。エンジンルーム以外に見た目の違いは、ほぼない(数少ない違いについては後述)。

インテリアは全グレード共通で、10.4インチの縦型タッチスクリーンが採用された。スマートホンとワイヤレスで接続してApple CarPlayやAndroid Autoを使うことができ、ナビ操作はタッチスクリーン側からもスマホ側からも可能だ。

エスプリ アルピーヌでは運転席が電動シートとなっているほか、前席にシートヒーターも標準装備。なにより、各所に配されたブルーのステッチと、助手席側ダッシュボードに奢られたブルーとグレーのグラデーションが美しい。スポーティさとシックな美意識が両立した、アルピーヌならではの世界観を感じることができる。

19インチ大径アロイホイールを標準装着

エスプリ アルピーヌの見どころの一つが、BセグメントのSUVとしては異例の19インチという大径アロイホイールを標準装着していることだ(テクノは18インチ)。足元の存在感は際立っていてルックス全体にも安定感をもたらしているが、乗り心地がゴツゴツ硬くなっているのではないかと心配していた。他ブランドのコンパクトモデルで19インチといえば、サーキット志向のハードコアなクルマという印象が強いからだ。

しかし19インチ専用にチューニングされたというサスペンションは、市街地の凹凸や高速道路の継ぎ目などの入力もいなして、うまく角のとれた乗り味。特にフルハイブリッドE-TECHでは、マイルドハイブリッドより90kgプラスの車重1420kg、とりわけリアに積んだバッテリーが適度な荷重となっているのか、終始しっとりした接地感を味わえる。225/45R19サイズのミシュランeプライマシー2も相性がよく、ロードノイズも少ない。ドイツ車のようなゴツゴツ感はなく、穏やかに路面をいなすフィールはフランス車ならではだ。

この乗り心地について、実際にイベントで試乗した欧州車ユーザーからは「ソフト」「思ったより普通」、国産のファミリーカーに乗る人からは「少し硬いかも」といった感想が聞かれたことを、参考までにお伝えしておこう。

フルハイブリッドE-TECH:新感覚のジェントルな走り

フルハイブリッドE-TECHはトランスミッションにルノー独自の「電子制御ドッグクラッチマルチモードAT」を採用していることで、走り出しのなめらかさ、加速の立ち上がりの速さに加えて、アクセルペダルを一定の開度で踏み続けたときに同じペースで加速し続ける自然なフィールが特徴的だ。

発進からおおむね40km/hまではEV走行、40km/h~80km/hはハイブリッド走行、それ以上の高速域ではエンジン走行を中心とするのだが、メーターにエネルギーフローを表示していると、状況に応じてとても小まめに制御が切り変わっているのが分かる。その働きはなめらかすぎて、ドライバーにはほとんど分からない。

とても静かでジェントルな走行フィールでエンジン音も控えめ。それでいて登り坂や高速道路などでアクセルを強めに踏み込めば、ルノー車らしい直4エンジンの力強い音を味わうこともできるので、ICE車から乗り換えたとしても寂しさを感じることはないだろう。

WLTCモード23.3km/Lという燃費性能の高さは本物で、高速区間では適当に走っても21~22km/Lを示し、下道を織り交ぜた場合で19km/L前後。燃費のスイートスポットが高速域にあるのも欧州生まれのハイブリッドらしいところで、長距離ドライブの多いユーザーには特にお勧めできる。

試乗会ではさまざまな人が乗って、特に暑くてエアコン稼働しっぱなし、かつ渋滞にはまる時間が長かった、燃費的に最悪なケースでの区間値が15.5km/Lだった。燃料タンク容量は48Lあるので、高速道路主体の長距離移動であれば満タンから1000km走行することも可能だ。

マイルドハイブリッド:キビキビ元気でスポーティな走り

一方のマイルドハイブリッドの乗り心地は、比較すればやや硬めの印象だ。フルハイブリッドE-TECHより90kg軽い分だけリアが少し跳ねぎみだったが、走行距離2000km台の個体だったので走り込めばもっと角が取れるだろう。その分、身のこなしは軽快で、最高出力158psの直4ターボエンジンで元気よく加速していく。

また、フルハイブリッドE-TECHには無くてマイルドハイブリッドにのみ付いているのが、パドルシフト。ワインディングロードのようなシチュエーションでは7速EDCを意のままに操りながら俊敏かつリズミカルに走れて、キビキビしたスポーティなキャラクターを楽しめた。

マイルドハイブリッドの燃費はWLTCモードで17.4km/L。下道で何も考えずに走っても13~15km/Lくらいはマークするし、高速道路でACCを使って移動した区間では18km/Lを超える数値を示した。

このマイルドハイブリッドでは関東から兵庫県までを自走で往復。高速域では、フルハイブリッドE-TECHに比べればエンジン音がよく響くものの、同クラスのSUVと同等以上の静粛性は確保されている。やはり、ロングドライブが日常であるフランスのクルマなのである。

* * *
エスプリ アルピーヌとして19インチのホイールを履きこなした上で、新感覚の大人な乗り味のフルハイブリッドE-TECHを選ぶか、元気よく走れるマイルドハイブリッドを選ぶか……。いずれにせよ、スポーツシックなコンパクトSUVとして個性も実力も十二分に備えているのが新キャプチャーだ。

【Specification】ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ フルハイブリッドE-TECH

■車両本体価格(税込)=4,549,000円
■全長×全幅×全高=4240×1795×1590mm
■ホイールベース=2640mm
■トレッド=前:1555、後:1540mm
■車両重量=1420kg
■エンジン型式/種類=H4M/直列4気筒DOHC 16V
■内径×行程=78.0×83.6mm
■総排気量=1597cc
■最高出力=94ps(69kW)/5600rpm
■最大トルク=148Nm(15.1kg-m)/3600rpm
■メインモーター形式/種類=5DH/交流同期電動機
■メインモーター最高出力=49ps(36kW)/1677-6000rpm
■メインモーター最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/200-1677rpm
■サブモーター形式/種類=3DA/交流同期電動機
■サブモーター最高出力=20ps(15kW)/2865-10000rpm
■サブモーター最大トルク=50Nm(5.1kg-m)/200-2865rpm
■燃料タンク容量=48L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=23.3km/L
■トランスミッション形式=電子制御ドッグクラッチマルチモードAT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ=前後:225/45R19

【Specification】ルノー・キャプチャー エスプリ アルピーヌ マイルドハイブリッド

■車両本体価格(税込)=4,090,000円
■全長×全幅×全高=4240×1795×1590mm
■ホイールベース=2640mm
■トレッド=前:1555、後:1540mm
■車両重量=1330kg
■エンジン型式/種類=H5H/直列4気筒DOHC 16V+ターボ
■内径×行程=72.2×81.4mm
■総排気量=1333cc
■最高出力=158ps(116kW)/5500rpm
■最大トルク=270Nm(27.5kg-m)/1800rpm
■燃料タンク容量=48L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=17.4km/L
■トランスミッション形式=電子制御7速AT(7EDC)
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:トーションビーム/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ=前後:225/45R19

【画像22枚】フランス流「スポーツシック」とは? 新型「キャプチャー・エスプリ アルピーヌ」の詳細を見る

フォト=竹内耕太/K. Takeuchi(ブラン ナクレM)、神村 聖/S. Kamimura(ブルー アイロンM)
竹内耕太

AUTHOR

1979年生まれ。日本学術振興会特別研究員(DC2/インド学仏教史)、中古車販売店勤務を経てカーメディアの世界に入り、2025年5月よりル・ボラン編集部デスクに着任。愛車の1963年式フォルクスワーゲン・カルマンギアとともに東京から小田原へ移住し、リモートワークを活用してガレージライフを満喫中。

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