
Mモデルの血統を証明、M4 CSLに肉薄する驚異のラップタイム
BMW M社は2025年7月31日、新型「BMW M3 CSツーリング」がニュルブルクリンク北コース(ノルドシュライフェ)において、7分29秒490という驚異的なラップタイムを記録し、史上最速のステーションワゴンとなったことを発表した。この記録は、レーシングカーに匹敵する運動性能と、ワゴンモデルならではの高い日常での実用性を見事に両立した、究極の「ワンカーソリューション」としての同車の実力を証明するものと言えるだろう。
【画像10枚】これがニュル最速ワゴンの勇姿。7分29秒を記録した「M3 CSツーリング」の走りを見る
熟練ドライバーが叩き出した7分29秒台、従来記録を5秒以上更新
今回の記録は、BMW Mの開発エンジニアであり、熟練のレコードドライバーでもあるヨルグ・ヴァイディンガーによって達成された。2022年にBMW M3ツーリングが記録した従来のステーションワゴン最速タイム、7分35秒060を5秒以上も短縮する新記録である。また、ミドルサイズカテゴリーにおけるBMW Mモデルの圧倒的な強さを示すものであり、最速のM4 CSL(7分18秒137)、M4 CS(7分21秒989)、M3 CS(7分28秒760)に続くタイムとして、その血統を色濃く反映している。
この記録を打ち立てたBMW M3 CSツーリングは、高性能スポーツカーセグメントに新たに加わった特別仕様車だ。ベースとなるのはBMW M3ツーリングでありながら、その心臓部にはレーシングカーの技術が注ぎ込まれた3.0L直列6気筒エンジンを搭載。最高出力550ps、最大トルク650Nmを発生させ、0-100km/h加速はわずか3.5秒、最高速度は300km/h(電子制御リミッター作動時)に達する。
最高出力550馬力、サーキット直系の専用チューニング
この強大なパワーは、ドライブロジック付き8速Mステップトロニック・トランスミッションと、後輪駆動を基本としながらも状況に応じて前輪にも駆動力を配分するM xDrive(4輪駆動システム)を介して路面に伝えられる。シャシーもサーキットでの高性能走行に最適化されており、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)やMダイナミック・モードには専用のセッティングが施されている。さらに、ボンネットやフロントスプリッター、リアディフューザーなどにカーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)を多用することで、標準のM3 Competitionツーリング比で約15kgの軽量化も実現している。
インテリアは、パフォーマンス志向のスポーツカーコクピットとデジタル技術が融合されている。標準装備される電動調整機能付きのMカーボン・バケットシートが、ドライバーをしっかりと支える。同時に、ラゲッジスペースは500Lから最大1510Lまで拡大可能であり、ツーリングモデルとしての高い実用性も兼ね備えている。
BMW Mにとって、ニュルブルクリンクは単なるテストコースではない。25年以上にわたるパートナーシップのもと、BMW Mテストセンターを拠点として数々のモデル開発が行われてきた、いわば「故郷」である。今回のM3 CSツーリングによる記録更新は、その深い関係性の新たな1ページを刻むものとなった。圧倒的な速さと日常の使い勝手を完璧なバランスで両立させたこの一台は、まさに究極の高性能ステーションワゴンの姿を提示していると言えるだろう。
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