
5500人を超えるポルシェ愛好家が集結
英国で2025年8月3日(日)に開催された「Megaphonics ’25」は、欧州最大級のポルシェイベントとしての評価を不動のものとした。この年次イベントは英国のBoxengasseという企業が主催するもので、単なる車両展示会にとどまらない。スポーツカーそのものと同じくらい、それを取り巻く活気あるコミュニティに光を当てることを主眼としている。会場には61ものブランドが出展し、ポルシェという一つのブランドを中心に、多様な文化が交流する場が創出された。
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すべてはポルシェのために。細部に宿る主催者の美学
イベントの舞台となったのは、オックスフォードシャー州ビスターに所在するBoxengasseの広大な40ヘクタール(40万平米)の敷地である。この場所は、ポルシェブランドに関連するあらゆるものを展示するために専用に設計されたものであり、その隅々にまでブランドの哲学が息づいている。BoxengasseのCEO、フランク・キャシディ氏が「これがポルシェのショーではありますが、本質的には職人技、デザイン、エンジニアリングへの感謝の場なのです」と語るように、会場は機能的デザインを通じて美と性能を追求するというポルシェの理念を体現している。建物のドアに使われるリベットのサイズから、会場に流れる音楽、来場者に提供される食事に至るまで、すべてが展示されるポルシェのモデルを引き立てるよう、細心の注意を払ってキュレーションされているのだという。
このリラックスしたフェスティバルのような雰囲気の中、参加者は心ゆくまでポルシェの世界に浸ることができる。歴史に名を刻むレーシングモデルが、日常的に使用されるロードカーと分け隔てなく展示され、来場者は希少性や価値にとらわれることなく、純粋な憧れの眼差しを注いでいた。フランス、ベルギー、スイス、イタリアから自慢の愛車で駆け付けたオーナーもいれば、カナダ、ドバイ、オーストラリア、米国といった遠方から、この日のために飛行機で訪れた愛好家もいた。まさに、ポルシェへの情熱が国境を越えて人々を結びつけているのだ。
3つのエリアで魅せる、ポルシェ世界の縮図
1日限りのこのイベントは、ポルシェ文化のあらゆる側面を称えるため、大きく3つのエリアに分けて構成された。個人オーナーの車両は「空冷」と「水冷」のセクションにそれぞれ展示され、湖畔の会場中央には、普段はめったに公の目に触れることのない55台の極めて希少なモデルが慎重に選ばれて並べられた。これらのエリアの間には、数十のブランド、スポンサー、ディーラーのパドックや、ポルシェのレストア専門業者が出展し、オーナーやファンが業界のプロフェッショナルと交流できる貴重な機会を提供した。
展示車両の多様性は、このイベントの包括性を象徴していた。ラリーレイド仕様のカイエンがカレラGTの隣に並び、水辺には356スピードスターが複数の959と共に佇む光景は、ポルシェというブランドがいかに幅広いファン層に支えられているかを示していた。キャシディ氏が「私たちは包括的なイベントを作り、あらゆる異なるポルシェモデルのオーナーを惹きつけています」と説明するように、Megaphonicsはすべてのポルシェファンに開かれた場所なのだ。中央の展示エリアでは最新のロードモデルが、904-079や906、そして最初に製造された908といった、ブランドの黎明期を飾った耐久レース用プロトタイプと肩を並べた。
歴史を未来へ。伝説のレーシングカーたちの声を聞く
さらに2つの中央建物内部では、自動車レースの歴史に燦然と輝く、最も有名なポルシェのレーシングカーたちが来場者を迎えた。その中には、スティーブ・マックイーンの映画『栄光のル・マン』で不朽の名声を得たガルフカラーの917や、9台ものグループC耐久レーサーが含まれていた。「これらの希少で歴史的に重要なクルマは、その価値を保ち、人々にポルシェの歴史を思い出させるために、公の場にあり続ける必要があります」とキャシディ氏は語る。この言葉通り、展示は単に車両を並べるだけでなく、ポルシェの発展の年表を提示する試みでもあった。アートワークや音楽と共に演出された空間で、ポルシェ初の本格的な耐久プロトタイプである906から、工場から出荷された最後の空冷911である「The Last Waltz(最後のワルツ)」の愛称を持つ993に至るまで、一台一台が持つ自動車史における位置づけを、来場者たちは深く理解することができた。
Boxengasseは、今後もさらに大きな規模でのイベント開催を計画しており、現在の熱心なファン層の情熱を称え続けると同時に、新しい世代のファンにポルシェブランドとその豊かな歴史を紹介していくことを目指しているという。まもなく80年を迎えようとしているポルシェの歴史には、まだ語り尽くせぬ多くの物語が眠っているのである。Megaphonicsは、その物語を未来へと語り継ぐための、かけがえのない場であり続けるだろう。
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