コラム

【ディエップ現地レポート】アルピーヌA110の現在と未来。70周年記念の限定車3モデルに見る、ブランドの次なる一手

アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA106
アルピーヌA106
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 R70
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 GTS
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
ロラン・ウルゴン氏
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム
アルピーヌA110 Rウルティム

70周年を祝う3つの個性。アルピーヌA110、その進化の最前線

フランスはノルマンディ地方のディエップで2025年6月に行われたアルピーヌの創業70周年を記念するミーティングは、まさしくブランドの過去から未来を展望させる機会だった。未来=A390の市販バージョンのお披露目と同時に、来場者たちの目を引いた現在とは、現行A110の70周年記念モデルだった。

【画像61枚】カーボン地に浮かぶ「A70」ロゴから、ポルトローナ・フラウのレザー内装まで。アルピーヌA110限定車の作り込みを見る

初代A106へのオマージュ。トリコロールを纏う限定車「A110 R70

中でも注目を集めたのは、ブルーキャディ/ブラン(白)グラシエ/ルージュマグネティックのトリコロール3色が用意された「A110 R70」だ。これは既存のA110 Rと基本的な仕様は同じで、最高出力300ps・最大トルク340Nmのエンジンスペックも変わりないが、ボンネットやルーフ、リアフードなどカーボンパネルにもボディ同色塗装が施されている。とはいえ単に塗りつぶすでなく、ルーフには「A70」の記念ロゴにカーボンの目地が透け、ボンネットのストライプも同じくカーボンを見せる仕上げとなっている。ボディサイドのエンブレムもA70のアニバーサリー・ロゴだ。マフラーは無論、アクラポヴィッチのチタンマフラーが奢られている。

他にもカタログモデルのA110Rとの大きな違いとして、初期限定のA110R同様、デュケーヌ社製のカーボンホイールを履いている。しかもリムにボディ同色のアクセントが入れられている。加えてシートのアルカンターラ張りとステッチもボディ同色という、洒落込んだ仕様といえる。

じつはBBR(ブルー・ブラン・ルージュの略)のカラーリングは、1955年に発表されたアルピーヌ最初期の市販ベルリネット、A106に則って選ばれている。週末に行われたパレードランでは、同じトリコロールのA106の3台と、最新にして同じカラーリングのA110 R70の3台がディエップの街中を走るという、粋な演出がなされた。A110 R70は世界限定770台で、トリコロールの仕着せが施されるのは全世界210台のみ。日本では限定14台で、価格は1850万円(税込)となる。

S」の俊敏さと「R」の空力が融合。新たなグランドツアラー「A110 GTS

アジリティやレースの血統はアルピーヌA110の核となる部分だが、もうひとつの核としてGT、いわゆるツーリング・パッケージでも新しいモデルが発表された。それが「A110 GTS」だ。これは従来のA110 Sの足まわりはそのままに、Rのフロントリップ、サイドスカート、リアディフューザー、リアウイングを組み合わせることで、高速域でのダウンフォースをより強化したシャシーだ。

つまりエレガントにしてハイパフォーマンス仕様だが、あくまで高速ツアラー仕様の証として、シートはリクライニング機構やヒーター付きのサベルト製で、既存のA110 GTと基本骨格は共通ながら、山型を重ねたまったく新しいステッチパターンや、外装のカーボンとの色合わせを意識した淡いグレーの新色を選ぶことができる。またサブウーファー付きのフォーカル製プレミアム・オーディオを標準装備だ。

加えてディエップでの展示車両で確認した限りは、後期型のGTでは省かれていた左右シート間、三角の筒状収納ケースが復活していた。エンジンは通常の300ps・340Nm仕様だが、マフラーはリアエンドが二重になったステンレス仕様というカタログモデルのRと同じ仕様で、アクラポヴィッチ製もオプションで選べる。

SとGT、それぞれの長所を組み合わせつつ、Rに準じる空力やエキゾーストノートを得られるという魅力的なパッケージ、それがA110 GTSというわけだ。ボディカラーについても、アトリエ・アルピーヌというパーソナライズ・プログラムを通じてまったくの新規となる3色のマットカラーが用意された点は、GTSの特徴だ。日本での価格は1200万円~(税込)となる。

公道を走るGT4マシン「A110 R ウルティム」、その過激なる本性

これらA110 R70と同GTSは、来年6月いっぱいであろうディエップ工場のA110生産枠の中でかなりのウェイトを占めるものだが、さらに究極の1台も今回のイベントにお目見えした。昨年秋にパリサロンで発表された「A110 Rウルティム」の実車が、ここディエップでも展示されたのだ。

「Rウルティムのコンセプトは、GT4仕様をロードゴーイングバージョンとして型式認証をとること。通常のRはほら、“ラディカル”だったからね」

と、ルノー・スポール時代からニュル北コースのタイムアタッカーとして名をはせたテストドライバー、ロラン・ウルゴン氏自ら、来場者に対して説明員を買って出ていた。

A110 Rウルティムは外観、つまり数々のエアロデバイスからして禍々しい雰囲気だ。リアフードに立てられたトサカ状のエアスプリッターは、A110 Rル・マンでも見られたものだが、リアフェンダー後端に備わる大きな整流板は往年のA210辺りのル・マン車両を彷彿させる。リアスポイラーは2段式で、他のエアロデバイスと相まって高速域では通常のA110 Rに対し、+160kgものダウンフォースを生み出せるという。

すべてはGT4仕様のエンジンが可能にする速度域とパフォーマンスのために、あらゆる最適化が図られている。1.8Lの排気量こそ変わりないが、クランクやコンロッド、ターボチャージャーも見直され、日本のハイオクガソリンでは325psが最大出力ながら、オクタン価102のガソリンを使える環境なら、345ps・420Nmというスペックが公表されている。増強されたトルクに合わせ、トランスミッションは6速DCTを採用。これはメガーヌR.S.で採用されていたものを1084kgのA110 Rウルティムに最適化し見直したもので、通常の7速DCTよりケーシングが張り出しているため、サブフレームの形状変更も施されている。じつにリッターあたり180~190psもの高効率パワーユニットなのだ。

そのためラジエーターは前方にかぶせチルトして搭載され、ボンネット上方から熱を抜く方式に改められている。つまりフロントボンネット下の荷室は省かれた。ブレーキディスクはAPレーシングの330mm径バイメタルのスリットローターを採用。ホイールはフロント18インチ、リア19インチの異径に改められ、サスペンションには車高そして伸縮それぞれの減衰力を独立して調整可能なオーリンズのダンパーが組み込まれている。全体としてフロント側が10mmほど、A110 Rより低まった姿勢も印象的だ。

究極は性能だけではない。ポルトローナ・フラウと創る至高の室内空間

しかしA110 Rウルティムが究極である理由はパフォーマンスだけにとどまらない。アルピーヌはサベルトそしてポルトローナ・フラウとコラボレーションして、シートやダッシュボード、ステアリングやドアに至るまで、アップホルスタリーのレザー張りすべてを、完全にパーソナライズできる。とりわけ助手席側のストップウォッチケースはA110 Rウルティムの内装、独特の装備といえる。

A110 Rウルティムは全世界110台の限定だが、うち15台はブルーのグラデーション塗装が施された「ラ・ブルー」が導入される。少量生産で手吹き塗装のできる技能工がいるディエップ工場だからこそ、市販が可能になった仕様でもある。ちなみにチーフデザイナーのアントニー・ヴィランは、アルピーヌのブルーに決まった一つの青というのはなく、50以上のニュアンスがあるという。だからこそ現状で最終・最新進化形のA110として、そこに至るまでの多様性と物語を1台で体現するのがラ・ブルー、というわけだ。ラ・ブルーは5200万円~(税込)、“通常仕様”のA110 Rウルティムは4200万円~(税込)。高いと思うか、その価値があると思うか。それも自由の試金石ということだ。

【画像61枚】カーボン地に浮かぶ「A70」ロゴから、ポルトローナ・フラウのレザー内装まで。アルピーヌA110限定車の作り込みを見る

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
フォト=南陽一浩/K. Nanyo、ALPINE
南陽一浩

AUTHOR

1971年生まれ、静岡県出身、慶應義塾大学卒。ネコ・パブリッシング勤務を経てフリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・男性ファッション・旅行等の分野において、おもに日仏の男性誌や専門誌へ寄稿し、企業や美術館のリサーチやコーディネイト通訳も手がける。2014年に帰国して活動の場を東京に移し、雑誌全般とウェブ媒体に試乗記やコラム、紀行文等を寄稿中。2020年よりAJAJの新米会員。

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