国内試乗

【スバル・レヴォーグ試乗】道東・野付半島で見た「この世の果て」。北の大地で試す、国産GTステーションワゴンの真価

スバルと共に冒険の旅路へ

「いつか行ってみたい」という場所はあるだろうか? 現在テレビなどで放映されているスバルのCMも「自由という名の冒険を」という印象的なフレーズとともに、雄大な自然の中を走るレイバックが描かれている。今回、そのCMの舞台である北海道で改めてスバルのクルマを試乗することとなった。行き先はなんと自由! そこで前々から気になっていたある場所へと赴く決意を固めた。

【写真48枚】レヴォーグと共に道東「野付半島」へ! その旅の行程を見る

道東の不可思議な形の半島

筆者は仕事柄、時間があればグーグルマップで日本全国津々浦々、“ロケハン”という名の妄想旅行を繰り広げているのだが、この地形を初めて見たとき度肝を抜かれた。その名を「野付半島」という。

皆さんもぜひグーグルマップで調べてみてほしい。海老がしっぽを巻いているような、何とも言えない形の半島が出てきたのではないだろうか。知床半島と根室半島のちょうど中間あたりに位置し、別海町(べつかいちょう)と標津町(しべつちょう)にまたがるこの独特な形の半島は、全体が海抜数メートルしかないにもかかわらず、なんと先の部分まで自家用車まで行けるらしい。

――いったいこの半島の先にはどんな景色が待っているのだろうか。今まで行ってみたいとは思っていたものの、場所が場所だけに機会がなかったこの野付半島。まさにこの企画は渡りに船、かくして今回のロングツーリングの目的地は決定したのであった。

レヴォーグで道東の大地を駆ける

旅のスタート地点は釧路空港。野付半島までは約150kmの道のりだ。早速、北海道らしい雄大な自然の中へと駆けだしてゆく。

今回の旅のお供は今や貴重となった国産ステーションワゴン、スバル・レヴォーグ。2024年に一部改良が施された最新モデルの「STI SPORT R-Black Limited」だ。搭載されるエンジンは1.8Lの水平対向4気筒直噴ターボ。最高出力177ps、最大トルク300Nmのスペックは、この北海道のロケーションにうってつけ。スバル伝家の宝刀「アイサイト」もいかんなくその力を発揮、まさにストレスフリーな快速グランドツアラーだ。

信号のほとんどない道東の平野部を抜けて、軽いワインディングへ突入する。するとレヴォーグのもうひとつの面が顔をのぞかせた。思いのほかクイックなステアリングフィールは、峠道でこの快速グランドツアラーを一瞬でスポーツカーへと変容させたのだ。

近年のSUVブームは多種多様なSUVを産み、スポーツカーに匹敵するようなドライブフィールを持つものも少なくなくなった。しかしながらベースとしてのSUVの車高・重心の高さはいかんともしがたく、気持ちのいいコーナリングフィールはスーパー級SUVでないと味わえないのが正直なところ。一方、レヴォーグのようなステーションワゴンの、低く構えたプロポーションから繰り出される路面に張り付くような馴染みのドライブフィールに「これこれ!」と思わず膝を叩いてしまった。

いよいよ野付半島へ

終始快適なレヴォーグのドライブフィールに150kmをあっという間に駆けぬけ、いよいよ野付半島の“根元”部分に到着。今更ではあるがこの野付半島について少し解説しておこう。

野付半島は「砂嘴(さし)」と呼ばれ、海流によって運ばれた砂が堆積してできた地形だ。全長は約26kmに及び日本最大、約3000年をかけて堆積と浸食を繰り返して今の地形が形成された。なお、今でも半島の先端部分では堆積が進んでおり、半島の延長がみられるという。

半島全体が野付風蓮(のつけふうれん)道立自然公園に属し、オオハクチョウやタンチョウといった渡り鳥が毎年2万羽以上も飛来するほか、エゾシカやキタキツネといった陸生の生物も生息している。そして内部の浸食された干潟部分には「トドワラ」と呼ばれるトドマツの立枯れも見られ、観光の名所となっている。前述の通り半島のほぼ全体が海抜数メートルの平坦な地形で、そのほぼ先端部分まで自家用車で赴くことができる。

「この世の果て」のような幻想的な風景

半島の先端部分の少し手前には「野付半島ネイチャーセンター」がある。ここにクルマを停め、トドワラには徒歩で向かう。その道中はまさに「この世の果てに来た」と形容するのがぴったりの景色だ。眼下の草原とその先に広がる海、そして時おり駆けぬける爽やかな潮風が、都会の喧騒に疲れた現代人にはたまらない。だがその先のトドワラもまた絶景だった。

トドワラの先端部分には観光船が発着する桟橋が掛けられているのだが、その広大な干潟と無機質な人工物との組み合わせが、この世のものとは思えない幻想的な風景を生み出していた。取材日は平日ということもあり観光客はほぼゼロ、広大な自然の中、独りとり残されたような感覚は「明日世界が終わるかも」と言われても信じてしまいそうな、他ではけっして味わえない、そんな絶景だった。

ちなみにネイチャーセンターからトドワラまでは結構な距離があり、往復で約1時間は見ておいた方が無難だ。なお夏季はトラクターバスの「はまなす号」が出ているので体力に自信のない方は利用するといいだろう。

名産海産物に舌鼓

またネイチャーセンターには特産品の販売を行う売店とレストランが併設されており、ぜひ地元の食材にも触れておきたい。有名な海産物は「北海しまえび」だ。打瀬舟(うたせぶね)という帆船で漁が行われ、初夏(6月中旬~7月下旬)と秋(10月中旬~11月中旬)が漁獲時期だ。

また、レストランで食べられる「別海ジャンボホタテバーガー」も必見だ。全国ご当地バーガーグランプリで第1回、第2回と2連続でグランプリを獲得した当バーガーは、地元の別海牛乳を100%使用したバンズと野付産のジャンボホタテの春巻きのハーモニーが絶品だ。

ぜひ一度訪れてほしい「この世の果て」

楽しい時間というのはあっという間で、ネイチャーセンターでホタテバーガーを食べていたら、もう釧路のホテルに戻らないといけない時間になってしまった。名残惜しいがレヴォーグに再び乗り、野付半島を後にする。

この野付半島、先端こそは新たな堆積によってその面積を拡大させているが、半島の根元部分については年々浸食が進み、場所によっては道路+αくらいの幅しかない部分もあるくらいだ。さらには半島全体の地盤が沈下していたり、温暖化による海面の上昇により、近い将来この野付半島は完全に分断され半島ではなくなってしまう可能性も示唆されている。

この幻想的な風景をドライブしながら楽しめるのはあとわずか……というのは大げさかもしれないが、ぜひ皆様にも一度足を運んでほしい……自信を持ってオススメできる魅力的な風景がそこには広がっているのだから。

【写真48枚】レヴォーグと共に道東「野付半島」へ! その旅の行程を見る

【Specification】スバル・レヴォーグSTI SPORT R-Black Limited

■車両本体価格(税込)=4,680,000円
■全長×全幅×全高=4755×1795×1500mm
■ホイールベース=2670mm
■トレッド=前:1550、後:1545mm
■車両重量=1570kg
■エンジン型式/種類=CB18/水平対向4気筒DOHC16V+ターボ
■内径×行程=80.6×88.0mm
■総排気量=1795cc
■最高出力=177ps(130kW)/5200-5600rpm
■最大トルク=300Nm(31.6kg-m)/1600-3600rpm
■燃料タンク容量=63L(レギュラー)
■トランスミッション形式=CVT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:ダブルウィッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ=前後:225/45R18

AUTHOR

1991年生まれ、ル・ボラン編集部唯一の30代。クラシックカー&ヤングタイマー系の雑誌編集を経て当編集部に至る。1990年代国産車が好物。愛車は1990年式ホンダ・インテグラXSiと2022年式のアルピーヌA110GT。

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