伝説の「ショート」が帰還。プロトタイプによる公道テストが解禁
メルセデス・ベンツは2025年12月2日、「Gクラス」の新たなファミリーとなる「Gクラス カブリオレ」の走行テストを開始したと発表した。かつて2013年まで生産されていたショートホイールベースのカブリオレモデル以来、長らくカタログモデルとして不在だった「オープントップのG」が、ついに現実のものとして動き出したのである。9月にティザー画像が公開された際には世界中から極めて肯定的な反響が寄せられたが、今回、ついにプロトタイプによるテスト走行が公道およびテストコースで開始されたことが明らかになった。
【画像3枚】擬装に包まれた「ショートボディ」の凝縮感。ついに始動した新型Gクラス カブリオレの姿を見る
オープンボディでも「G」の堅牢性は譲らない
メルセデス・ベンツによれば、この待望の新型Gクラス カブリオレは、すでに最初のテスト走行をこなしている段階にある。公開された情報はまだ限定的ではあるものの、エンジニアたちはこの車両が将来のオーナーに対して、比類なき「Gクラスらしさ」を感じさせるオープン・ドライビング体験を提供できるよう、データ収集に注力しているとのこと。
Gクラスといえば、その堅牢なボディと悪路走破性がアイデンティティであるが、屋根を取り払ったカブリオレモデルにおいて、その剛性や快適性をどのように確保するかは極めて重要な課題となる。今回のテスト開始宣言は、単なるデザインの公開にとどまらず、メルセデス・ベンツがこのモデルの「走り」に対して、クローズドボディのモデルと同様の厳格な基準を設け、開発を本格化させたことを意味している。同社はこのモデルについて、顧客の期待を再定義し、新たな冒険へと駆り立てるような存在になることを目指しているという。
「空白の12年」を埋める正統なる系譜
Gクラスのカブリオレモデルには、熱狂的なファンが存在し続けてきた歴史がある。1979年の初代モデル(W460)登場時から、キャンバストップを備えたショートホイールベースモデルはGクラスの象徴的な存在の一つであった。しかし、2013年に「G 500 カブリオレ ファイナルエディション」をもって、ショートホイールベースのカブリオレ生産は終了した。
その後、2017年には高級サブブランドであるメルセデス・マイバッハから「G 650 ランドーレット」が登場したが、これは世界限定99台という極めて特殊なモデルであり、後席部分のみがオープンになるランドーレットスタイルであったため、純粋な意味での「Gクラス カブリオレ」の系譜とは異なる存在であった。

今回開発が進められている新型は、こうした空白期間を経て投入されるモデルであり、かつてのファンにとっては12年越しの悲願とも言える復活劇である。メルセデス・ベンツは、この新型車が「伝説的なGクラスファミリーの拡大」の一環であることを強調しており、一過性の企画ではなく、ブランドの未来を形作る重要なピースとして位置づけられていることがうかがえる。
次なる舞台は極寒のスウェーデン。ソフトトップの真価を問う
開発の次なるステップとして、Gクラス カブリオレはスウェーデンへと向かうことが予告されている。そこでは、氷点下の気温と雪に覆われた過酷な環境下で、車両の堅牢性、ドライビングダイナミクス、そして信頼性を証明するための集中的なウィンターテストが行われる予定である。
ソフトトップを持つカブリオレにとって、極寒地での耐候性や断熱性、そして凍結路面での挙動制御は、クローズドボディ以上にシビアな検証が求められる領域である。メルセデス・ベンツがこのタイミングでウィンターテストへの移行を明言したことは、開発が順調に進んでおり、市販化に向けた品質確認のフェーズに確実に入っていることの証左と言えるだろう。エンジニアたちは、いかなる環境下でも顧客が「自宅にいるようにくつろげる」感覚を提供するために、妥協のないテストを続けていく構えだ。
「スペシャルモデル」としての矜持。デビューの刻は近い
今回の発表において、メルセデス・ベンツはこの新型車を「スペシャルモデル」と表現しており、通常のラインナップとは一線を画す特別な存在になることを示唆している。2024年に約240万台の乗用車・バンを販売し、世界的なハイエンドカーメーカーとしての地位を盤石にしている同社だが、電動化やソフトウェア開発への注力と並行して、こうした「ブランドの魂」とも言えるアイコニックなモデルの開発にも余念がない。
Gクラス カブリオレの具体的なスペックや発売時期、価格などの詳細については、適切な時期に改めて発表される予定とのこと。しかし、プロトタイプが公道を走り出したという事実は、そのデビューが決して遠い未来の話ではないことを物語っている。世界中のファンは、スウェーデンの雪原から届くであろう次なるレポートを、固唾を飲んで待つことになるだろう。
【ル・ボラン編集部より】
BEVの「G580」で電動化という難題を解いたメルセデスが、今度は「開放」というプリミティブな快楽に回帰した。2013年以来となるGのカブリオレだが、最新の骨格が持つ堅牢さと、スウェーデンの極寒をも厭わない耐候性。それらを両立させる技術的裏付けがあってこその「遊び」である。閉塞した時代に、金庫のごとき剛体で風を切って走る背徳感。それは効率や理屈を並べる昨今のEVシフトへの、ある種の優雅なアンチテーゼにも映る。理性を捨てて本能で選ぶ、極めつきの一台となるはずだ。
【画像3枚】擬装に包まれた「ショートボディ」の凝縮感。ついに始動した新型Gクラス カブリオレの姿を見る


