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【詳細解説】新型フェラーリ・アマルフィ・スパイダーの真価。V8“ソフトトップ”の選択と「東京テーラーメイド拠点」の深い関係

フェラーリ・アマルフィ・スパイダーと、フェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏(右)、フェラーリ本社プロダクト・マーケティング・マネージャーのマッティア・メッジョリン氏(左)
フェラーリ・アマルフィ・スパイダー
フェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏
フェラーリ本社プロダクト・マーケティング・マネージャーのマッティア・メッジョリン氏
フェラーリ・アマルフィ・スパイダーと、フェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏(右)、フェラーリ本社プロダクト・マーケティング・マネージャーのマッティア・メッジョリン氏(左)

「仕立てる悦び」を極めたV8オープンスポーツ 。アマルフィ・スパイダーが示すフェラーリの新たな針路

フェラーリが新たに送り出したフロントミッドシップV8モデル、「アマルフィ・スパイダー」。クーペ版「アマルフィ」の優雅なプロポーションを受け継ぎつつ、流麗なファブリック製ソフトトップを備えた2+シーターのオープンスポーツである。

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しかし、このクルマがフェラーリのラインナップにおいて果たす役割は、単なる「クーペのオープン仕様追加」にとどまらない。日本初披露の際に実施されたグループインタビューにおける、フェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏と、伊フェラーリ本社プロダクト・マーケティング・マネージャーのマッティア・メッジョリン氏の言葉を紐解くと、そこにはフェラーリの最新マーケティング戦略と、日本市場を見据えた明確なビジョンが浮かび上がってくる。

走りの純度を高める「ブレーキ・バイ・ワイヤ」の恩恵 。クラス最高峰のV8ツインターボ

まずは、このアマルフィ・スパイダーが内包する極めて高いポテンシャルを確認しておきたい。長く彫りの深いボンネットの下に収められるのは、国際的な賞を数多く獲得してきたF154ファミリーの最新進化形となる3855ccのV8ツインターボエンジンだ。高度なターボチャージング・マネジメント・システムにより、最大ターボ回転数は17万1000rpmまで引き上げられ、7500rpmで最高出力640ps、3000-5750rpmで760Nmの最大トルクを発生する。リッターあたりの出力は166ps/Lに達し、SF90ストラダーレで初導入された8速デュアルクラッチ(F1 DCT)との組み合わせにより、最高速度320km/h、0-100km/h加速3.3秒、0-200km/h加速9.4秒というクラストップレベルの数値を叩き出す。

ボディサイズは全長4660mm×全幅1974mm×全高1305mm、ホイールベースは2670mm。乾燥重量は1556kg(オプション装備車)に抑えられ、パワーウェイトレシオは2.42kg/psを誇る。クーペモデルと比較してスパイダー化による重量増は約86kg(ソフトトップ機構等で約70〜75kg)に留められており、ダイナミクスへの影響は最小限に抑えられている。

さらに注目すべきは、最新鋭のシャシー制御デバイスだ。システムの中核を成すのは、ペダルストロークを短縮し制動効率を大幅に高める「ブレーキ・バイ・ワイヤ」の導入である。これに、6Dセンサーからのデータを用いて各ホイールの制動力配分を最適化する「ABS Evo」システムが組み合わされ、横方向の安定性と減速度のバランスが求められる複合的な条件下でも極めて高い有効性を発揮する。これらはすべて、サイドスリップ・コントロール(SSC)6.1のもとで統合制御され、あらゆる状況でパフォーマンスを最大限に引き出してくれるのだ。

牙を剥くスポーツ性と優雅なクルージング。相反する「2つの魂」がもたらす新境地

これほどの圧倒的なスペックを備えながらも、アマルフィ・スパイダーが照準を合わせているのは、サーキットのラップタイムを削るようなパイロット層だけではない。ロマニエッロ社長は、このクルマを語る上で欠かせないのが「2つの魂(ソウル)」であると強調する。一つは前述した「跳ね馬が生み出すピュアなパフォーマンス」、そしてもう一つは「人生を楽しむ歓び、ドライビングがもたらす感動、デザインと多用途性」だ。

メッジョリン氏はこのターゲット戦略について、次のように語る。

フェラーリ本社プロダクト・マーケティング・マネージャーのマッティア・メッジョリン氏

フェラーリ本社プロダクト・マーケティング・マネージャーのマッティア・メッジョリン氏

「初めてフェラーリの世界に足を踏み入れる新規のお客様は、必ずしもパイロットのような方ばかりではありません。フェラーリならではのパフォーマンスを求めつつも、より多くのシチュエーションでクルマを楽しみたいと考えています。その点において、アマルフィ・スパイダーの多用途性(2+のパッケージングや広いトランクなど)は、彼らのニーズに完璧に適合するのです」

この「多用途性」は、ステアリング上のマネッティーノ(ドライブモード・セレクター)のセッティングにも明確に表れている。メッジョリン氏によれば、各モードのキャラクターの「差」を、あえて意図的に広げているという。

「『Wet』や『Comfort』モードでは、クルマは驚くほど穏やかで扱いやすく、周囲の景色や同乗者との会話を楽しむクルージングに最適です。しかし、『Sport』や『Race』に切り替えると、エンジンのレスポンスは劇的に変化し、爆発的なパワーと素早いシフトチェンジによる、フェラーリ本来のエキサイトメントを最大限に表現します」

日常の足としての扱いやすさと、週末のスポーツドライビングという背反する要素を、高度な電子制御によって完璧に両立させる。これが「誰もが安心して楽しめるフェラーリ」という新たな顧客戦略の核となっている。

ローマ・スパイダーから継承されたソフトトップ 。あえてファブリックを選ぶ「3つの必然」

アマルフィ・スパイダーのアイデンティティを決定づけているのが、時速60km/hまでなら走行中でもわずか13.5秒で開閉可能なファブリック製ソフトトップである。先代にあたるローマ・スパイダーに続き、今回もリトラクタブル・ハードトップ(RHT)ではなくあえてソフトトップを選択した理由について、メッジョリン氏は3つの明確な戦略を明かした。

「最大の理由は、クーペの美しい流麗なシルエットを、スパイダーでも完全に維持するためです。ハードトップの機構では、ルーフ形状をクーペと全く同じにすることは不可能です。第2の理由は、フェラーリのラインナップの中での明確な差別化です。そして第3の理由が、パーソナライゼーション(カスタマイズ)の可能性を極限まで広げるためです」

この「パーソナライゼーションの極大化」こそ、現在のラグジュアリー市場における最重要テーマである。アマルフィ・スパイダーでは、専用開発されたテーラーメイドファブリック4色とテクニカルファブリック2色からルーフ素材を選択できる。さらに、トノカバーやドアパネル、シートのバックレストといった内装の一部にも、ルーフと同じファブリック素材を適用することが可能だ。

「ルーフの色、ボディカラー、そしてインテリアの素材をシームレスに連動させることで、お客様は実質的に世界に一台だけのユニークなクルマを作り上げることができます。これはハードトップでは決して得られないことです」(メッジョリン氏)

なお、実用面でのネガティブな要素は周到に排除されている。ソフトトップは5層構造のアコースティック・ファブリックを採用しており、RHTと同等の遮音性・断熱性を確保。さらに格納時の厚みをわずか220mmに抑えたことで、オープン時でも172L、クローズ時にはクラス最高レベルの255Lというトランク容量を実現している。リアシートの背もたれに組み込まれた、時速170km/hまで展開可能な特許取得済みのウィンドディフレクターも、極上のオープンエア体験を約束する装備だ。

2027年、東京に「テーラーメイド新拠点」誕生 。日本市場へ向けたフェラーリの周到な戦略

こうした高いカスタマイズ性を持つモデルの投入は、日本市場におけるフェラーリの販売戦略とリンクしている。日本の超富裕層人口が増加するなか、単なる「モノの所有」から「人生を楽しむための特別な体験」へとラグジュアリーの価値観がシフトしているからだ。

ロマニエッロ社長は、新規顧客へのアプローチとして「フェラーリを実際に試乗していただく体験」を最重視しており、販売店の枠を超えた大型の体験型試乗イベントを東京や大阪のホテル等で積極的に展開していくと語る。そして、グループインタビューの中で明かされた最大のニュースが、「パーソナライゼーション・テーラーメイドセンター」の日本開設である。

フェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏

フェラーリ・ジャパン代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏

「来年(2027年)、直営店舗としてのパーソナライゼーション・テーラーメイドセンターを東京にオープンする準備を進めています」(ロマニエッロ社長)

これまでフェラーリの極めて高度なオーダーメイドプログラム「テーラーメイド」を利用するには、イタリア・マラネッロの本社アトリエ、あるいはニューヨークや上海のセンターへ赴く必要があった。

「マラネッロ以外でも、日本のお客様からの需要は非常に多く、現在の枠はなかなか取りにくい状況です。日本市場にはそれだけの高い要求があると判断し、今回の開設を企画しました」

新型フェラーリ・アマルフィ・スパイダーは、640psという圧倒的なパフォーマンスを秘めながらも、流麗なソフトトップと洗練されたパッケージングにより、日常から週末の小旅行までをシームレスに繋ぐ「ライフスタイルの拡張ツール」としての側面を強く打ち出している。あえてソフトトップを採用することでカスタマイズの自由度を飛躍的に高めた本モデルの登場と、来たるべき東京でのテーラーメイドセンター開設は、完全に軌を一にする戦略だ。

アマルフィ・スパイダーは、単なる新型オープンスポーツではない。それは、フェラーリが日本の成熟した富裕層に向けて放つ、極めて戦略的かつ魅力的な「新しいライフスタイル」への力強い招待状なのである。

【ル・ボラン編集部より】

バイ・ワイヤ技術がもたらす一級品のスポーツ性と、ソフトトップが醸し出す優雅なクルージング体験。かつては相容れなかった「速さ」と「多用途性」という相反する要素を、高度な電子制御によって完璧に調律してみせた点に現代フェラーリの凄みがある。ローマ・スパイダーで復活したフロントエンジンとソフトトップの系譜を受け継ぎつつ、テーラーメイドによる美意識の投影という新たな価値を提示した。単なる派生モデルの枠を超え、成熟した大人のためのグランドツアラーとして見事な着地点を見出している。

【画像82枚】官能のデュアル・コクピット。640cvの咆哮を予感させる、新型アマルフィ・スパイダーの内外装を全方位からチェック

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
フォト=LE VOLANT、Ferrari Japan
LE VOLANT web編集部

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