サーキット試乗

【試乗】SUVの皮を被ったスーパーカー。727psの「DBX S」の走りが教える、アストン流“真のGT”の正体《LE VOLANT LAB》

アストン・マーティン DBX S

727psの咆哮、難コースに刻む。アストン史上最強SUVは、果たして「速いだけの道具」か

アストン・マーティンの新型「DBX S」は、既存の707psをさらに上回る727psもの最高出力を手に入れた、ブランド史上最も万能なスーパーカーだ。単なるパワーアップに留まらず、徹底した軽量化と専用設計の車体骨格がもたらす走りの質感は、SUVの概念を根本から覆すという。果たしてその実力は本物か。千葉の会員制ドライビングクラブ「THE MAGARIGAWA CLUB」にて、その“真のGT”としての正体に迫る。

【画像34枚】光沢ブラックのグリルと真鍮製「S」バッジの凄み。アストン・マーティン「DBX S」のディテールを全方位から見る

1953年から続く栄光の「S」を継承した、最強のDBX

「これまでDBXに対して顧客からパワーが足りないとクレームがきたことは一度もありませんが……」と、アストン・マーティンのAPAC & グレーターチャイナ担当 リージョナルプレジデントのカール・ベイリス氏は前置きする。

それはそうだ。既存のモデルでも707psもあるのだからと思わずツッコミたくもなるが、それでもアストン・マーティンは、DBXに新たなモデル「DBX S」を追加した。

この「S」というグレードはさかのぼると、1953年のレーシングカー、DB3Sが起源という。近年では2004年のヴァンキッシュSを皮切りにヴァンテージやラピードにも設定されたもので、軽量、高出力、高性能仕様の位置づけにある。

DBX SはDBX707比で最大47kgの軽量化を実現し、最高出力は20psアップの727psに、0-200km/h加速は0.3秒短縮している。

機能美と攻撃性が共存する、S専用のスタイリング・パッケージ

エクステリアにおける変更点はまず光沢のあるブラックのフロントグリルが目をひく。同色のフロントスポイラーやサイドシル、ルーフレール、サイドミラー、そしてリアディフューザーなどが一連のものとしてデザインされている。リアディフューザーからのぞく、左右に縦に2本ならんだクアッド・エキゾーストもDBX Sの証。ちなみにこれらリアバンパーやディフューザー、サイドシルなどはオプションでカーボン製にすることも可能で、それによって7kgもの軽量化を図ることができるという。

そしてフロントフェンダーにはさりげなく赤いエナメルガラスを充填したSのバッジが備わる。これは樹脂製ではなくアストン・マーティンのウイングバッジと同様に真鍮製だ。バッジの周囲はオーナーが選んだウイングバッジに合わせてブライトクロームかダーククロームで縁取られる。

伝統のクラフトマンシップと革新のインフォテインメントが交差する空間

インテリアは2024年のマイナーチェンジで導入されたDBX707に準じたもので、ダッシュパネル全体が左右対称のウイング形状をしたデザインの流れをくみつつも従来モデルとは別物となっている。中央に10.25インチのタッチ式ディスプレイを配置し、従来モデルではその上部に配置されていたスタート/ストップボタンやシフトセレクターをセンターコンソールパネルに集約している。

シートにはDBX Sの特徴として床板や洋服の生地の模様として知られるヘリンボーンをあしらっている。エンタテイメント装備もぬかりなく最新のインフォテインメントシステムにあわせ800W、14スピーカーのアストン・マーティン・プレミアムオーディオシステムを標準装備。オプションのBowers & Wilkins社製のものでは1600W、23スピーカーという素晴らしい音響空間をつくりだす。

高低差80mの試練。しなやかなハンドリングがSUVの常識を疑わせる

今回の試乗の舞台は千葉県南房総市にある会員制ドライビングクラブ・THE MAGARIGAWA CLUB。全長約3.5kmのコースは、22のコーナーからなり800mの長いストレートを擁し、高低差は80mにも及ぶ。特に後半の上りのセクションは峠道のようなワインディングセクションの先に、空に向かって駆け上がるラグナセカのコークスクリューを彷彿とさせるユニークなコーナーがある。DBX Sのような大型SUVにとっては決して楽な道ではない。

試乗はインストラクターの先導のもとに行われた。ちなみに走行モードの切り替えはスタート/ストップボタンを兼ねており、「GT」、「SPORT」、「SPORT+」があった。1周目はGTモードで慣熟走行を行う。軽量化されたといっても車両重量は2トンを超えるわけで、おそるおそる走り出す。想像していた以上にハンドリングはしなやかで、エアサスの恩恵もあって23インチのピレリP-ZEROからもゴツゴツとした硬さは伝わってこない。

900Nmの奔流。ストレートエンドで露わになる、スーパーカーの真骨頂

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