メルセデス・ベンツ C 400 4MATIC エレクトリック 試乗リポート
2026年4月の世界初公開から熱視線を集める新型EV「Cクラス・エレクトリック」。航続距離762km、最高出力489psを誇る最上級モデルを、ドイツ在住のモータージャーナリスト、アレックス・オースタン氏が地元でテストした。物理スイッチの復活により、EQシリーズで失われかけた「メルセデスらしさ」は戻ったのか。そして、兄弟車GLCとは別物と評される驚愕の走りとは。伝統のCが辿り着いた最上級の解を紐解く。
【画像30枚】MBUXハイパースクリーンから洗練のフォルムまで。最新EVセダンのディテールをチェック
「EV専用デザイン」からの脱却と、メルセデスらしさの帰還
メルセデス・ベンツの電動化への本格的なスタートは、決して順調なものではなかった。EQSやEQEではEV専用のデザイン言語を採用し、とりわけ空力性能を重視したスタイリングが特徴だったが、残念ながら最終的にはそれが顧客に十分受け入れられたとは言い難い。
それに対して、新型「Cクラス・エレクトリック」は、先に発表されたGLCと同様、はるかに調和の取れたデザインとなった。
フロントでは、大きなスリーポインテッド・スターがイルミネーションを備えた大型グリルパネルに組み込まれ、オプションではその周囲を1050個ものLEDが取り囲む。また、デイタイムランニングライトの一部には、オプションで発光するスリーポインテッドスターのモチーフも採用される。
サイドから見ると、セダンとしては前後のオーバーハングが短いことが目を引く。引き続き販売される内燃エンジン搭載の「Cクラス」では、直列6気筒エンジンまでボンネット下に収められるスペースを確保する必要があるが、電動パワートレインの「Cクラス・エレクトリック」では、GLCと同じく、「MB.EA-M」なるEV専用プラットフォームを採用するため、その制約がない。そのためフロントセクションを大幅に短くすることが可能となり、2962mmという長いホイールベースの実現にもつながっている。
ボンネットの下には101Lのトランクを備え、追加の収納スペースとして利用できる。さらにリアトランク容量は470Lを確保する。
ただし、より大きな荷室を必要とし、ステーションワゴンを好むユーザーにとっては残念なニュースがある。現時点ではCクラス・エレクトリックにTモデル(ステーションワゴン)を設定する計画はないからだ。より大きな収納を求めるのであれば、当面は内燃エンジン搭載モデルを選ぶことになる。
圧巻のデジタル体験と、手になじむ「物理スイッチ」の復活
最近のメルセデス・ベンツ車を知っている人であれば、インテリアに大きな驚きはないだろう。
Cクラス・エレクトリックにはオプションで新世代の「MBUXハイパースクリーン」が用意される。左右のエアベントの間に広がるそのサイズは39.1インチ。表示は非常に鮮明で、今回は1枚の連続したディスプレイとして構成されている。EQSのMBUXハイパースクリーンでは、ガラスパネルの下に3枚の独立したディスプレイを配置していたが、新型Cクラスではその考え方が変わった。
この全面タッチスクリーン仕様を選択しない場合には2枚の独立したディスプレイとなり、さらにオプションで助手席用ディスプレイを追加することもできる。
ステアリングを握った瞬間の第一印象は、まるで何年かぶりに我が家へ帰ってきたような感覚だった。タッチセンサー式の操作面だけに頼るのではなく、再びローラーや物理的な操作系が部分的に採用されたからだ。操作性は非常に良く、素材のクオリティも含めて、しっかりとした上質感が伝わってくる。
よりエントリーに位置付けられるCLAとは、上質感の差別化も図られており、インテリアの下部には硬質プラスチックはほとんど使われていない。日常的に手が触れる部分にはソフトな素材が使われるか、柔らかいパッドが施されており、上質感への配慮がなされている。
身長1.83mの筆者が後席に座ってみても、文句のない快適さだった。バッテリーがフロア下に搭載されているにもかかわらず、リアシートの着座位置は適切に設定されており、体格の大きな乗員でも長距離移動で窮屈さを感じることはないだろう。
システム出力489ps、最大航続距離762kmという圧倒的スペック
心臓部である電動パワートレインについては、近年、電動化を推し進める中で蓄積してきたメルセデス・ベンツの最新EVテクノロジーが投入されている。EVプラットフォームである「MB.EA-M」には800Vシステムが採用され、高出力の急速充電器を利用することで充電時間を短縮できる。
今回テストに連れ出したのは、最もパワフルなパワートレインとメルセデス・ベンツのお家芸である4WDを備えた最上級モデル「C 400 4MATIC エレクトリック」である。フロア下に94.5kWhのバッテリーを搭載し、WLTPモードの航続距離は最大762kmを誇る。標準で11kWのAC充電器を備え、公共の普通充電器や自宅のウォールボックスで充電できる。さらにオプションで、22kW仕様へのアップグレードも可能だ。
DC急速充電では最大330kWに対応し、わずか10分間の充電で325km走行分の電力を補充できるという。日本同様、ドイツでも超急速充電が可能な充電ネットワークの整備が進んでおり、遠出したときでも充電の不便は感じない。
C 400 4MATIC エレクトリックのシステム最高出力は360kW(489ps)、最大トルクは800Nm。0-100km/h加速は、わずか4.1秒という俊足ぶりだ。
CLAと同様、リアアクスルには2速トランスミッションを組み合わせた永久磁石同期モーター(PSM)が搭載される。フロントにもPSMを搭載するが、必要のない場合には駆動系から切り離すことができる。これによりドラッグロスを抑え、ドライブトレイン全体の効率を高めている。
今後は、より小容量のバッテリーを搭載した後輪駆動のエントリーモデルも追加される予定だ。
GLCとは全く違う? 「史上最もスポーティなC」の真実
今回の試乗はフランクフルト周辺。筆者にとっては地元であり、よく知っている道ばかりだ。筆者は自宅で充電できるウォールボックスを備えていて、頻繁に訪れるサッカースタジアムやショッピングセンターの駐車場にも急速充電器が多数設置されている環境のため、充電のストレスはまったく感じなかった。
メルセデス・ベンツは、この「Cクラス」を「Cクラス史上最もスポーティなモデル」と表現している。少なくともスペックシートに記された489psという数字を見れば、それを疑う理由はない。
とはいえ、まずは「Comfort」モードから試乗をスタートした。GLCと比較して、アクセルの応答性はかなりダイレクトで、ステアリングはやや重め。まるで、スポーティな「Dynamic」モードを選択しているかのような印象さえ受ける。当然のことだが、よりスポーティなモードを選択すると、アクセルレスポンスはさらに鋭くなり、ステアリングの手応えも一段と重くなる。
しかし、どのモードでもステアリングの正確性は非常に高く、Cクラスを思い通りに操ることは難しくない。
Cクラスの歴代モデルを振り返ってみても、スポーティネスに軸足を置いたキャラクターを与えられていることもあって、今回、電気じかけの心臓部を得た新型Cクラス・エレクトリックでも、明らかにスポーティな性格を与えられている。実際に運転してみると、電動化によって追加された重量はあるものの、アジリティを高める努力がはっきりと感じられる。
乗りやすく、スムーズな乗り味のGLCとは多くの技術を共有しているにもかかわらず、そのように両車のキャラクターはまったく異なるのだ。
引き締まった足回りが生む、不快感ゼロのスポーツドライビング
オプションで装備されるエアサスペンションについても、「GLC」より、「Cクラス」の方がやや引き締まったセッティングとなっている。
だからといって乗り心地が悪いわけではない。石畳の上を走っても、路面からのショックが室内に伝わるのはごくわずかだ。そして、緩やかで長いうねりを通過した後に感じられる軽い余韻のような上下動には、昔からの「メルセデスらしさ」も残されている。
もうひとつ触れておきたいのが、先行するメルセデス車から得られる群知能データを利用した「インテリジェントシステム」だ。先行車が路面のうねりや損傷を検知すると、その情報がクラウドへ送信される。後続車はその情報を利用し、実際に凹凸へ到達する前からダンパーを路面状況に合わせて調整することができる。
スポーツモードではボディのロールが抑えられ、路面との一体感がさらに強まる。それでもCクラスが不快なクルマになってしまうことはない。
今回の試乗車は、標準のスチールサスペンションを装備しているモデルだが、非常に高い快適性を備えており、ペースを上げてもボディの動きは比較的落ち着いていた。資料によれば、オプションのリアアクスルステアリングを装着すれば、取り回しは非常に軽快になり、実際のボディサイズよりもひと回り小さなクルマを操っているように感じられると書かれている。が、今回の試乗車のようにリアアクスルステアリングを装着せず、標準サスペンションを選んでもまったく問題ないということは付け加えておきたい。
アウトバーンでも不安なし。高速域の実用性と今後の展開
EVを購入する際、多くのユーザーが心配することのひとつが高速道路での航続距離だ。速度を上げれば、それに比例するように航続可能距離が短くなってしまうのではないか、と不安に感じる人は少なくない。
しかし今回の試乗コースでは、アウトバーンで150km/h程度まで速度を上げて走行するシーンも含まれたが、車両に表示される巡航距離が大幅に減ってしまうこともなく、航続距離への不安を強烈に感じることはなかった。
C 400 4MATICエレクトリックのドイツでの価格は、6万7111ユーロ(約1200万円)から設定されている。今後はより小容量のバッテリーを搭載したエントリーモデルも追加される予定で、価格は約6万ユーロ(約1070万円)からとなる見込みだ。5月から受注を開始し、デリバリーが始まっている。
日本での発売は未定だが、あくまで想像ではあるが、日本の速度域でこのクルマを走らせた場合、WLTPモード燃費である最大762kmにかなり近い航続距離を実現できるのではないかと期待してしまう。
今回は最新の電動モデルの試乗をリポートしたが、ドイツでは近々、コンベンショナルな「Cクラス」のフェイスリフトが予定されている。1886年に内燃機関を積んだ車両を生み出し、今年で140周年を迎える老舗自動車メーカーが、従来のエンジン車と最新の電気じかけのモデルとの乗り味やキャラクターの違いをどう演出してくるのか、その比較についてもご期待いただきたい。
【Specification】Mercedes-Benz C 400 4MATIC Electric
メルセデス・ベンツ C 400 4MATIC エレクトリック
※欧州仕様
■全長×全幅×全高=4883×1892×1503mm
■ホイールベース=3100mm
■車両重量=2460kg
■駆動方式=AWD
■モーター型式=前後:永久磁石同期モーター
■システム最高出力=360kW(489ps)
■システム最大トルク=800Nm(81.6kg-m)
■バッテリー容量=94.5kWh
■一充電走行距離(WLTPモード)=592-762km








































