国内試乗

【比較試乗】新型「ランドクルーザーFJ」を70・250・300と同一オフロードコースで徹底検証! 単なる小型版ではない「第4のランクル」の実力と存在意義《LE VOLANT LAB》

トヨタ・ランドクルーザーFJ
トヨタ・ランドクルーザーFJ
トヨタ・ランドクルーザー70(海外仕様)
トヨタ・ランドクルーザー250
トヨタ・ランドクルーザー300
2026年9月の商品改良で登場した、3.3Lディーゼル仕様のランドクルーザー300 GX
トヨタ・ランドクルーザーFJ
トヨタ・ランドクルーザー70
トヨタ・ランドクルーザー250
トヨタ・ランドクルーザー300
右から順にトヨタ・ランドクルーザー70(海外仕様)、ランドクルーザー250、ランドクルーザーFJ、ランドクルーザー300

30数年ぶりに加わった新しい柱「FJ」。一般道から過酷なオフロードまで、現行ランクル全4車種の比較で迫る

トヨタが2026年5月、より気軽に「移動の自由」を提供するランドクルーザー第4の柱として発売した新型「ランドクルーザー“FJ”」。扱いやすいサイズゆえに単なる小型版と見る向きもあるが、その認識は早計だ。今回、一般道での試乗に加え、兄貴分の70・250・300と同一オフロードコースで直接乗り比べる機会を得た。過酷な悪路で4台を走らせて浮き彫りになった、末っ子ならではの驚くべき走破性と独自の存在意義に迫る。

【画像56枚】兄貴分たちと何が違う? 新型「ランドクルーザーFJ」と70・250・300が過酷な悪路に挑む迫力の走行シーンを見る

「行って帰ってこられる」信頼はそのままに。Freedom & Joyを掲げた新時代のランクル

2026年、ランドクルーザーは誕生75周年を迎えた。その始まりは1951年のトヨタ・ジープBJ。当初から求められたのは、快適なレジャービークルではなく、道なき道でも人や荷物を運び、目的地までたどり着き、そして帰ってこられることだった。

以来、世界中の過酷な環境で使われながら進化してきたランドクルーザーだが、現在は300、250、70、そして新たに加わったFJという4車種を揃える。75年間守り続けてきたのは特定のメカニズムやスタイルではなく、「このクルマなら行って帰ってこられる」という信頼。そのために時代や用途に応じて姿を変えてきた、とトヨタは説明する。

右から順にトヨタ・ランドクルーザー70(海外仕様)、ランドクルーザー250、ランドクルーザーFJ、ランドクルーザー300

右から順にトヨタ・ランドクルーザー70(海外仕様)、ランドクルーザー250、ランドクルーザーFJ、ランドクルーザー300

300は最新技術を取り入れるフラッグシップ、70は耐久性と整備性を重視するワークホース、250は本格的な悪路走破性と日常での扱いやすさを両立する中核モデル。そしてFJには、ランドクルーザーの能力をもっと身近に、自由に楽しむという役割が与えられた。車名のFJにも「Freedom & Joy」という意味が込められている。

じつはランドクルーザーに新しい柱が加わるのは、プラド以来30数年ぶりだという。それだけに開発陣は「このクルマがランクルにふさわしいか」を慎重に検討した。コンパクトでカジュアルになっても、ランドクルーザーとしてのブランド価値や性能は守る。それがFJ開発の大前提だった。

単なる小型版ではない。オンロードの取り回しと悪路の機動力を高めた骨格とメカニズム

FJの成り立ちも興味深い。ベースとなったのは、ハイラックスなどで実績を積んできたIMVシリーズのプラットフォームだ。ランクル伝統のラダーフレーム構造で、FJではそのまま流用するのではなく、コンパクトなボディに合わせて刷新。ホイールベースを短縮するとともにブレースを追加してフレームの横剛性を高めた。さらに高張力鋼板をボディ骨格に用い、床下のスポット溶接も増し打ちして、操縦安定性と振動収束性、乗り心地を高めている。

ボディサイズは全長4575mm×全幅1855mm×全高1960mm、ホイールベース2580mm。250よりホイールベースは270mmも短く、最小回転半径は5.5mに収まる。それでいて地上高やアプローチアングルは250同等、ディパーチャーアングルは250を15度上回り、ホイールアーティキュレーションは70同等を確保したという。単純な「小型版ランクル」ではなく、コンパクト化そのものをオンロードでの取り回しとオフロードでの機動力に利用しているのだ。

トヨタ・ランドクルーザーFJ

サスペンションはフロントがハイマウント・ダブルウィッシュボーン、リアがラテラルロッド付き4リンク・リジッド。パワートレインは2TR-FE型2.7L直列4気筒自然吸気ガソリンで、最高出力163ps、最大トルク246Nm。これに6 Super ECTとパートタイム4WDを組み合わせる。華やかな最新メカニズムというより、実績や信頼性を重視した構成といっていい。

ちなみに2TR-FE+6 Super ECTという組み合わせ自体は250のガソリン車にも使われている。ただしFJでは、発進から低速域でのスムーズさや下り坂での車速コントロールなどを改善しているという。

デザインでも目指したのは「これなら自分でも運転できそう」と思わせることだった。スクエアなキャビンを基本に、フロントフェンダーとキャビンを視覚的に分けた構成には40系にも通じるランクルらしさがある。250や300は大きすぎると感じるユーザーにも届くランドクルーザーにしたかったという。

一般道で光る圧倒的な扱いやすさ。70との比較でわかったステアリング形式の違いと快適性

実際に一般道へ連れ出してみると、まず印象に残るのは扱いやすさだ。全幅1855mmだから絶対的に小さなクルマではないが、スクエアなボディは車両感覚をつかみやすい。ホイールベースの短さと最小回転半径5.5mも効いていて、大柄なランクルを動かしているという緊張感がない。

乗り心地もラダーフレーム構造のSUVとしては悪くないレベルだ。大きな凹凸ではそれなりの突き上げがあるものの、入力の角は丸められていて、不快なほどの鋭さはない。また、ラダーフレーム車にありがちな、フレームとボディが別々に動いているような感覚もかなり抑えられている。フレームやボディの剛性を高めた効果も表れているのだろう。

トヨタ・ランドクルーザーFJ

70と乗り比べると、日常での扱いやすさを重視したことはステアリングにも表れている。ともに油圧式パワーステアリングだが、70は昔ながらのリサーキュレーティングボール式なのに対し、FJはラック&ピニオン式。70が前者を採用し続けるのは、信頼性と整備性を重視しているためだ。一方、ラック&ピニオン式は一般に機構上のフリクションが少なく、滑らかで自然な操舵感を得やすいため、とくにオンロードでの快適性に適している。FJはステアリングの切れ角も大きく、取り回しは明らかに優れている。

視界は意外にも70に軍配? 2.7L自然吸気ガソリンエンジンの吹け上がりと今後の課題

ただし、70からFJへ乗り換えると、意外にも70のほうが車両直前の路面がよく見える。着座位置とボンネットの関係や低いベルトライン、大きなガラスエリアなど、カメラに頼らず物理的な視界を確保していた時代のオフローダーならではの美点だ。FJはそれに比べれば包まれ感があるものの、現代のSUVとしては視界にもかなり配慮されている。

パワートレインについては、本来なら低回転から豊かなトルクを発生するディーゼルエンジンのほうが、この種のクルマにはマッチしているだろう。ただし、搭載される2.7L自然吸気ガソリンも決して悪くない。低・中回転域で必要十分なトルクを確保しながら、回転を上げれば意外なほど元気がよく、気持ちよく吹け上がる。実用域での扱いやすさに加え、積極的に回して走る楽しさも備えているのだ。

トヨタ・ランドクルーザーFJ

一方で、少し気になったのはアクセルオフ時の挙動だ。アクセルを戻してもスーッと前へ進み、エンジンブレーキがあまり効かない。かなりコースティング感が強いのだ。

開発陣に聞くと、本来はもう少しダイレクトに減速させたい部分もあるものの、燃費などとの兼ね合いで現在の制御になっており、今後改善していきたい項目のひとつだという。日常で扱いやすいランクルというFJの性格を考えれば、このあたりがさらにドライバーの感覚と合ってくると完成度は上がりそうだ。

オフロードコースで本領発揮! 70との対比で見えたFJならではの「操る楽しさ」と侮れない走破力

そしてFJの本質が見えてきたのがオフロードコースだった。今回は同じコースで70、250、300にも乗ることができたが、面白いほど性格が違う。

まず70。ステアリングを通して路面からの反応がダイレクトに伝わり、タイヤが石を踏んだ瞬間のキックバックも遅れなく手元に届く。決して楽ではないが、路面状況を把握しやすく、クルマと対話しながら走っている実感が強い。個人的には林間コースでは70がもっとも路面状況をつかみやすかった。

トヨタ・ランドクルーザー70

FJは対照的だ。70と続けて乗ると、路面からの反応がわずかに遅れて伝わるように感じられ、情報のダイレクトさでは70に一歩譲る。ただし、その分ステアリングを取られる感覚は穏やかで、気軽に悪路へ入っていける。

またショートホイールベースなので、大きな起伏では意外なほどタイヤが浮く。だが、それがむしろ面白い。車体の姿勢変化を感じながら自分でラインを選び、クルマを進ませているという「やってる感」が強いのだ。

しかも走破力は侮れない。何台も走ったことでかなり滑りやすくなった登りに、あえて相当に速度を落として進入してみた。途中では同乗していたスタッフも「この速度だと厳しいかも」と思ったそうだが、それでもFJは登り切った。

トヨタ・ランドクルーザーFJ

直前に走った300よりトラクションが掛かっているようにも感じられたほどで、これは絶対的な走破性能の優劣というより、軽さによって前へ進んでいる感覚がつかみやすいことも大きいだろう。

低速ではトルクコンバーターのクリープも使いやすい。難所でもアクセルをむやみに踏まず、ブレーキで速度を調整しながらジワジワ進んでいける。電子制御を駆使して難所を消してしまうというより、悪路を悪路として感じながら攻略していく。それがFJの楽しさなのだ。

緻密な制御で操る250、悪路を余裕でいなす300。ハイブリッド化は走破性能を高める新たな武器に

250に乗り換えると世界が変わる。FJよりサスペンションストロークに余裕があり、電子制御も緻密。滑りやすい場所でも駆動力とブレーキを巧みに使い、ドライバーの操作に応えながら着実に前へ進んでいく。「操る」という言葉がしっくりくるランクルだ。パワーステアリングには電動式のEPSを採用。悪路でのキックバックを抑えるとともに、車両安定性制御との協調によって方向安定性の向上にも寄与している。

トヨタ・ランドクルーザー250

そして300はさらに別格だった。サスペンションが大きくストロークするためタイヤが路面から離れにくく、かなり荒れた場所でも乗り心地は驚くほど穏やか。悪路の厳しさを乗員にあまり感じさせないまま、何事もなかったように進んでしまう。「余裕でいなす」という表現がよく似合う。

ステアリングも興味深い。300のエンジン車は油圧式パワーステアリングに電動式の操舵アクチュエーターを組み合わせていたが、今回のハイブリッドではEPSへと変更された。操舵アシストの制御自由度が高まり、悪路でもステアリング操作は軽く、キックバックも抑えられている。

トヨタ・ランドクルーザー300

今回の300ハイブリッドでは、モーター駆動も興味深かった。ROCKモードなどではエンジンを止め、モーターだけで岩場を進むことができる。アクセル操作に対して駆動力をジワジワと正確に立ち上げられるので、大柄な300を驚くほど繊細に動かせるのだ。

これまで一部の1モーターハイブリッドではL4でモーター走行を使わない設定としていたが、300では逆にモーターの精密なトルク制御をオフロード性能に積極的に利用する方向へ踏み込んだという。電動化は燃費対策だけではなく、ランクルの本質である走破性能を高める武器にもなる。

能力を削るのではなく、守備範囲を日常と遊びへ広げる。それこそがFJが担う存在意義だ

こうして4台を同じ場所で乗ると、FJを追加した意味がよくわかる。70には、道具としての信頼性と路面との濃密な対話がある。250はドライバーが操ることと電子制御による走破性を高いレベルで両立する。そして300は圧倒的な能力によって、厳しい悪路さえ快適にいなしてしまう。

トヨタ・ランドクルーザーFJ

FJはそのどれとも違う。最新技術を満載したわけでも、70のようにストイックな道具に徹したわけでもない。実績あるIMV系のラダーフレームや2.7L自然吸気エンジン、6速ATといった堅実な素材を使いながら、ホイールベースを短くし、ボディをコンパクトにして機動力を高める。その結果として、一般道ではもっとも気軽に付き合え、悪路へ行けば軽い車体を自分で動かす楽しさがある。

つまりFJが目指したのは、ランドクルーザーの能力を削って安く小さくすることではない。ランクルが75年間守ってきた「行って、帰ってこられる」という信頼を残したまま、デイリーユースと遊びの側へ守備範囲を広げることだったのだろう。

見た目は歴代でもっともカジュアルなランドクルーザーかもしれない。だが一般道を走り、そして70、250、300と同じ悪路へ連れ出してみれば、FJもまた紛れもなくランドクルーザーであることがよくわかるのだった。

トヨタ・ランドクルーザーFJ

【画像56枚】兄貴分たちと何が違う? 新型「ランドクルーザーFJ」と70・250・300が過酷な悪路に挑む迫力の走行シーンを見る

【SPECIFICATION】TOYOTA LANDCRUISER“FJ”VX(ガソリン)
 トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(ガソリン)

■車両本体価格(税込)=4,500,100円
■全長×全幅×全高=4575×1855×1960mm
■ホイールベース=2580mm
■車両重量=1960kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒/2693cc
■エンジン最高出力=163ps(120kW)/5200rpm
■エンジン最大トルク=246Nm(25.1kg-m)/3900rpm
■燃料消費率(WLTCモード)=8.7km/L
■燃料タンク=63L(レギュラー)
■トランスミッション形式=6速AT
■サスペンション形式=前:ダブルウィッシュボーン、後:ラテラルロッド付き4リンクリジッド
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ=前後:265/60R18

【SPECIFICATION】TOYOTA LANDCRUISER“70”AX(ディーゼル)
 トヨタ・ランドクルーザー“70”AX(ディーゼル)

■車両本体価格(税込)=4,800,000円
■全長×全幅×全高=4890×1870×1920mm
■ホイールベース=2730mm
■車両重量=2300kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒ディーゼルICターボ/2754cc
■エンジン最高出力=204ps(150kW)/3000-3400rpm
■エンジン最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/1600-2800rpm
■燃料消費率(WLTCモード)=10.1km/L
■燃料タンク=130L(軽油)
■トランスミッション形式=6速AT
■サスペンション形式=前:車軸式コイルスプリング、後:車軸式半楕円リーフスプリング
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ=前後:265/70R16

【SPECIFICATION】TOYOTA LANDCRUISER“250”ZX(ディーゼル)
 トヨタ・ランドクルーザー“250”ZX(ディーゼル)

■車両本体価格(税込)=7,350,000円
■全長×全幅×全高=4925×1980×1935mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=2410kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒ディーゼルICターボ/2754cc
■エンジン最高出力=204ps(150kW)/3000-3400rpm
■エンジン最大トルク=500Nm(51kg-m)/1600-2800rpm
■燃料消費率(WLTCモード)=11.0km/L
■燃料タンク=80L(軽油)
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ダブルウィッシュボーン、後:トレーリングリンク車軸式
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ=前後:265/60R20

【SPECIFICATION】TOYOTA LANDCRUISER“300”GR SPORT(HEV)
 トヨタ・ランドクルーザー“300”GRスポーツ(HEV)

■車両本体価格(税込)=10,200,300円
■全長×全幅×全高=4965×1990×1935mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=2690kg
■エンジン種類/排気量=V型6気筒ICツインターボ/3345cc
■エンジン最高出力=307ps(226kW)/4000rpm
■エンジン最大トルク=700Nm(71.4kg-m)/1600-2600rpm
■モーター最高出力=54ps(40kW)
■モーター最大トルク=290Nm(29.5kg-m)
■燃料消費率(WLTCモード)=9.4km/L
■燃料タンク=68L(プレミアム)
■トランスミッション形式=10速AT
■サスペンション形式=前:ダブルウィッシュボーン、後:トレーリングリンク車軸式
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ=前後:265/65R18

【画像56枚】兄貴分たちと何が違う? 新型「ランドクルーザーFJ」と70・250・300が過酷な悪路に挑む迫力の走行シーンを見る

Photo: 芝 修/Osamu Shiba
石井 昌道

AUTHOR

自動車専門誌の編集部員を経てモータージャーナリストへ。国産車、輸入車、それぞれをメインとする雑誌の編集に携わってきたため知識は幅広く、現在もジャンルを問わない執筆活動を展開。また、レース等への参戦も豊富。ドライビング・テクニックとともに、クルマの楽しさを学んできた。自動運転や電動化への造詣も深い。

注目の記事
注目の記事

RANKING