











名車6 1/2リッター誕生から100周年を祝う
ベントレー・モーターズは2026年11月5日、同社のビスポーク(特注)部門であるマリナーが手掛けた限定コレクション「オリンピア・コレクション」を発表した。コンチネンタルGTをベースとした世界限定12台のこのコレクションは、創業者W.O.ベントレーの妥協なき精神と、ちょうど1世紀前の1926年オリンピア・モーターショーで発表された名車「6 1/2リッター」を称える特別仕様車である。
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伝説誕生のきっかけとなった公道レース
この特別仕様車にインスピレーションをもたらしたのは、1924年にW.O.ベントレーらがフランスで経験したエピソードである。少し長くなるが、これについて述べておこう。
ベントレーの初代モデルである「3リッター」は1921年に発売され、目の肥えたオーナーや愛好家から熱狂的に受け入れられた。しかし、大型高級サルーンの重い車体に適した、より大きなシャシーと強力なエンジンを求める声があることは明白だった。新しいシャシーとエンジンが先行公開されてから12ヶ月後の1926年、オリンピア・モーターショーで市販車が発表され、これが新型「ベントレー6 1/2リッター」として知られるようになる。
この発表に先立つ1924年、フランスにおいてリヨンからディエップへと6気筒プロトタイプのテスト走行を行っていた一行は、道中のY字路でライバル社のテストチームと偶然遭遇した。両者は並木道の直線コースを時速80マイル(約128km/h)以上で並走し、最終的にベントレーが勝利を収めた。
しかしW.O.はこの僅差の勝利に満足せず、後に「常に二歩先を行くためです」と書き残したように、エンジンの排気量を4.5Lから6.5Lへと拡大させた。これが、1926年に市販化された6 1/2リッター開発の契機になったとされる逸話である。
56時間を要する独自のグラデーション塗装
今回のオリンピア・コレクションのエクステリアにおける最大の技術的トピックは、マリナーのペイント職人が56時間をかけて仕上げる「オンブレ(グラデーション)」塗装だ。ヴァーダントからミッドナイト・エメラルドへと滑らかに変化するこのダークグリーンは、紫外線による退色などで色合わせが困難な1920年代の「ブリティッシュ・レーシング・グリーン」のあらゆる色合いを網羅的に表現しようとする試みだという。
加えて、初期モデルのパーツに使われていた洋白(ニッケルシルバー)のかすかに黄金味を帯びた色を彷彿とさせる、シャンパンゴールドのバッジやピンストライプが採用されている。22インチのブラックホイールにも同色のアクセントが施され、当時のスポークホイールの雰囲気を演出している。
また、ドアを開けると、前述の「リヨンからディエップへのドライブ」を描いたプロジェクションが地面を照らし出すギミックも搭載された。
当時の面影と現代のクラフツマンシップが融合した内装
インテリアは独自のカラースプリットで構成。メインハイドにはパティーナ(経年変化)仕上げを施した特注のコーチグリーン、セカンダリーハイドにはカンブリアン・グリーンが用いられている。ステアリングホイールには1920年代のロープ巻きステアリングを模したシャンパンゴールドのボックスステッチが施されているほか、ローテーティング・ディスプレイのメーター類も1926年当時のデザインから着想を得ている。
リアシートのスキーハッチには、6 1/2リッター誕生のきっかけとなったリヨンからディエップへのルートが、シャンパンゴールドの糸で刺繍されている。こうした物語性を強調するデザインも興味深いところだ。
特別なコレクターズアイテムが付属
このコレクションを構成する12台の車両にはそれぞれ特別な付属品が用意されている。専用のカーカバーやメモリアル・ブック、プレゼンテーション・ボックスに加え、ブルックランズ・ウォッチ・カンパニー製の特注クロノグラフがそれだ。
このクロノグラフには対応する車両と同じシリアルナンバーが刻印されており、ストラップには車内と同じコーチグリーンのレザーが使用されている。また、タキメーターベゼルはブルックランズのサーキットにちなんだ2種類が用意され、交換可能となっている。
1926年に登場した6 1/2リッターは、ベントレーのスポーティな性格とラグジュアリー性を両立させ、その後のル・マン優勝など輝かしいモータースポーツ史の礎となった。1世紀の時を経てその精神は、現代のクラフツマンシップと結びつきつつ、蘇ったと言える。
【ル・ボラン編集部より】
最新のコンチネンタルGTは、V8ハイブリッドの採用による前後重量配分の改善と精緻なシャシー制御が相まって、巨体を忘れさせるほど俊敏でFRライクなハンドリングを手に入れた。その最先端のグランドツアラーに、100年前の公道勝負の記憶を宿すのがマリナーの粋だ。56時間を要する塗装や経年変化を表現した革は単なる懐古ではない。W.O.ベントレーが抱いた「常に二歩先を行く」という反骨心と、現代の圧倒的な動的質感が見事に溶け合い、工芸品でありながら生粋のドライバーズカーという独自の境地を体現している。
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