小型車のグローバルスタンダードを構築
1974年5月、パサート、シロッコに続く新世代フォルクスワーゲン(以下VW)第三弾として誕生したゴルフは、リアにハッチゲートを持つ革新的なパッケージング、あるいはクラスの常識を超越した性能によって、後世の小型車に多大な影響を与えた傑作。また、長らくVWの屋台骨を背負ってきたビートルの後継車ともなった。
スクエアなボディは、イタリアのイタルデザイン、ジョルジェット・ジウジアーロのデザインによるもので、コンパクトなボディサイズにもかかわらず、小型車の標準からすればルーミーなキャビンスペースとラゲッジスペースを実現していた。
シャシーの大部分はすでに前年にデビューしていたシロッコと共通で、フロントが独立式のマクファーソンストラット、リアがトレーリングアームを基本とした半独立のトーションビームサスペンション。また、エンジンはパサートの縦置きに対して、横置きに搭載された。エンジンは直列4気筒SOHCで、デビュー当初のゴルフでは1.1Lの50psおよび1.5Lの70psを用意。また1977年にはディーゼル版も設定された。
加えて、1975年に追加設定された高性能版「GTI」は、1.6Lの燃料噴射ユニットを搭載。110psのパワーがもたらす高性能とスポーツカーに匹敵するハンドリングから「ホットハッチ」という新カテゴリーを構築し、40年後の現在に至るまで、世界中のライバルに影響を及ぼすことになった。
現在では「ゴルフI」と呼ぶ初代は1982年までで、翌年には基本をキープコンセプトとしながら各部をブラッシュアップした二代目「ゴルフⅡ」へとフルチェンジを果たし、1991年には若干大型化した三代目へと進化。
このゴルフIIIないしは、1997年登場のゴルフIVあたりから上級志向が高まり、さらに2003年デビューのゴルフⅤでは、長らく半独立式だったリアサスペンションを4リンク式独立懸架に変更(一部モデルを除く)。DSGと呼ばれるデュアルクラッチトランスミッションも初搭載され、走行フィールも格段に上質なものとなった。
さらに2008年登場のゴルフVI以降は、1.2〜1.4Lターボへとエンジンのダウンサイジング化を図るなどの環境対策も前面に押し出された。かくして「Cセグメント」を構築したゴルフは、現在に至るまでVWの屋台骨を支えるベストセラー、そして世界のスタンダードであり続けているのだ。