ドイツブランドのなかでは実直なイメージが強いフォルクスワーゲンが、昨年から今年にかけて相次いで市場投入してきたTクロスとTロック。ともに都会派のクロスオーバーSUVといった仕立てだが、ポジションとしてゴルフとポロのような上下関係にあるかといえば、そうでもなさそうだ。では、その真実とは!?
TクロスはBセグ、TロックはCセグ!?
日本におけるフォルクスワーゲン(VW)のSUVは、ステーションワゴン派生のゴルフ&パサートのオールトラックシリーズを除けばティグアンのみと、世の情勢に対しては心許ないものになっていた。が、この半年余の間に、その隙間を埋めるかのごとくニューモデルを次々と投入、それがこのTクロスとTロックになる。
TクロスとTロックは共にMQBモジュールをベースとしており、Tクロスはポロ譲りのディメンジョンを持つ正統な派生型BセグメントSUVだ。ライバルはプジョー2008やルノー・キャプチャー、直近のモデルではトヨタのヤリスクロスなどが挙げられる。
それではTロックはゴルフとの共通項を多く持つSUVかといえばそうではない。数字に目をやると、4240mmの全長はゴルフより25mm短く、Tクロスよりは125mm長い。そして2590mmのホイールベースはゴルフよりは45mm短く、Tクロスよりは40mm長い。全幅は1825mmとTクロスはもとよりゴルフよりも広いが、それを利として最小回転半径は5mとゴルフやポロをも下回る小回り性能を確保している。
わざわざゴルフとは異なる寸法構成を取りつつも、結果的に車格がTクロスに近づいている。その理由は、TロックがクーペライクなSUVというコンセプトを掲げているからだ。その意が強く現れているのはエクステリアデザインで、傾斜したリアガラスに沿って象られたCピラーと、それを強調するように前方から連続するルーフトリムラインが、Tロックのイメージを都会寄りのモダンなものにみせている。
Tロックは装備を充実させることでもスペシャリティ性を高めているようだ。メーターは全グレードでデジタルクラスターを採用、そこに表示する情報源としても機能する、ナビ付きのフルスペックインフォテインメント「ディスカバープロ」も標準装備される。運転支援もACCやレーンキープアシスト、ブラインドスポットディティンクションなどは標準装備と、ベースグレードでも吊るしで十分戦える内容になっているところがポイントだ。ただし、内装の演出はグレードに応じてオーナメントがボディ同色となるなどの施しがあるも、全体的に質感に乏しくTクロスとの差異はわずかしか感じられない。
TクロスとTロックの大きな違いはパワートレインにある。Tクロスはポロの標準的なモデルと同じ116ps/200Nmを発揮する1L 3気筒TSIなのに対して、Tロックはゴルフと同じ150ps/340Nmを発揮する2L 4気筒TDIを搭載。つまりメカニズム側から推するに、TロックはVWにおいてCセグメント級の車格想定ということだろう。